表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/40

第18話:少年錬金術師、悲鳴を聞く

「……ツバサさん、ペグをお願いします」

『ボクも一本取ったレム』

「は~い」


 ジゼルさんとランドから、ペグを受け取る。

 雄大な星空を堪能した翌朝。

 朝ご飯を食べ終わった僕たちは、テントの撤収を進めていた。

【蒸気な本】に浮き出た説明書きを参考に、ロープを緩めペグを外し……、大きなテントでもみんなで協力すれば簡単に回収できるね。

 火種にはしっかり水をかけて(ジゼルさんの水魔法)、焚き火もきちんと片付けた。

 大峡谷の自然を守るためにも後始末は重要だ。

 テントのシートをくるくると丸めていると、ジゼルさんが僕に言った。


「重そうですから私が運びましょうか?」

「いえ、大丈夫です。僕が持って行きます」


 よいしょっと背負う。

 自分で錬成したアイテムだから自分で運びたい、と思っていたのだけど、ずしっ……と身体に負荷がかかるのを感じた。

 ……結構重いね。

 見た目以上に布は重く、ペグやロープも重さを手助けする。

〘蒸気の銃〙も担いでいるから、このまま自転車を走らすのはちょっと大変かも……。

 などと考えていたら、ジゼルさんが優しく言ってくれた。


「やっぱり、私が運びましょう。収納魔法を使えば簡単に運べますから」

「すみません、ありがとうございます」

「いえいえ、気にしないでください。……《収納保管》」


 ジゼルさんが杖を振ると空中に黒っぽい穴が出現し、〘蒸気のキャンプセット〙はすいすいとしまわれた。

 まさしく、ファンタジーど真ん中な光景。

 いやはや、魔法って便利だなぁ。

 準備は完了したので、後は帰宅するだけだね。

 吹き抜ける青い空を見ていると、拳を突き上げたくなった。


「それでは……お家に帰りましょー!」

「『おおおー!』」


 ランドを頭に乗せ、ジゼルさんと一緒に自転車を漕ぎ出す。

 せっかく遠くまで来たので、元来た道を真っ直ぐ進むのではなく、少し遠回りしてみることになっていた。

 東側には深い森が広がっており、そのすぐ傍をサイクリングする。

 この辺りの木々はどれも30mくらいの高さがあって、覗き見える鬱蒼とした森の中は薄暗い。

 何かにジッと見られているような視線を感じ、ちょっと怖くなってしまったのでジゼルさんの近くに移動する。


「"スターフォール・キャニオン"にはこんなところもあるんですね。なんだか怖いです」

「人の手が入っていないためか、際限なく成長した森なんでしょうね。もう戻りましょうか」


 そう二人で話して、森から離れようとしたときだった。 


『……ツバサ、ジゼル。ちょっと止まってほしいレム』

「ん? 了解」

「どうしましたか、ランドさん」


 走っていると、頭の上からランドの硬い声が聞こえて自転車を止めた。

 ランドは耳をピクピクと動かし、真剣な表情で森を数秒見ると、僕の頭を叩いて叫ぶ。

 

『森の中から何か甲高い声が……いや、悲鳴が聞こえるレムッ』

「「悲鳴!?」」


 急いで耳を澄ますけど何も聞こえず、ジゼルさんもまた首を横に振っていた。


『魔物の咆哮も聞こえるから、襲われているかもしれないレムッ』

「それは大変だ! ランド、案内してくれる!?」

「私たちには聞こえないのです!」

『こっちレム!』


 僕たちは自転車の向きを変え、大急ぎで森に入る。

 上空は無数の葉に覆われ日が差し込まないためか、ずいぶんとひんやりとしていた。

 地面もぬかるんでおり、おそらく数日前に降った雨の影響がまだ残っているんだろう。

 最初は問題なく進めたものの、20mも走ると徐々にタイヤがとられてきた。

 ドロドロの地面は沼みたいになっている。

 このままじゃ進みが悪すぎる。

 今こそ、〘蒸気の自転車〙の本領を発揮するときだ!


「ジエルさん、ハンドルの根元にある歯車を右に回してください! 蒸気の力がサポートしてくれるはずです!」

「! わかりました!」


 歯車をカチリと回すと、トップチューブ下にあるタンクが稼働し、もくもくと白い蒸気があふれる。

 一気に車輪が軽くなって、泥のぬかるみでも簡単に突破できた。

 小高い丘を駆け下りているときと、同じくらいのスピードで走る。

 木々からは鋭い枝葉が伸びているけど、先導するジゼルさんが斬撃魔法で道を切り開いてくれた。

 森の中を走ると数分も経たぬうちに、風に乗って何かが薄らと聞こえてきた。

 微かな甲高い悲鳴……たぶん、女性の悲鳴だ。

 さらには、それをかき消すような太く重い雄叫びも。


「ジゼルさん、悲鳴です!」

「ええ、私にも聞こえました!」

『このすぐ先だレム!』


 自転車を一段と加速させると、不意に木々が途切れた。

 そこだけぽっかりと開いた、小さな広場みたいな空間が現れる。

 そして、その中央では……。


『グオオオオオッ!』

『『……姫様、退避を!』』


 黒い鱗を持った龍型の魔物に、何人もの兎人間が襲われていた。

お忙しい中読んでいただきありがとうございます


少しでも

・面白い!

・楽しい!

・早く続きが読みたい!

と思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!


評価は広告下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にタップしていただけると本当に嬉しいです!

ブックマークもポチッと押すだけで超簡単にできます。


何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ