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第11話:王女様は安らぎ、少年錬金術師に感謝する(三人称視点)

 晴天鳥のサンアップルソース付けを食べた日の夜。

 ジゼルは〘試作型:ツバサのお家〙に備え付けられた、お風呂に入っていた。

 浴槽は小さくも手足を伸ばせるほど広く、むしろ手狭な広さがちょうど良い。

 湯船にゆったりと浸かり、大峡谷の滑らかなお湯を堪能しながら思う。


(なんだか……ずいぶんと久しぶりに入浴できた気がします……)


 宮殿にもお風呂はあったが、多忙な毎日ではのんびりと浸かることなどあまりできなかった。

 入浴中でさえ〘魔波プレート〙を手放すことは許されず、常に姉であるロザリーからの仕事が舞い込むほどだったから……。

 お湯の手触りを楽しんでいると、ふと浴室の外からツバサとランドの笑い声が聞こえた。

 先に風呂を済ませた彼らは、何やら遊んでいるらしい。

 二人はとても仲が良く、彼らを見ているだけでジゼルは心が安らいだ。

 ”スターフォール・キャニオン”で過ごす日々は穏やかで、何よりも……。


(忘れてしまった大事なことを思い出せている……)


 空の青さ、浮かぶ雲の長閑さ、吹き抜ける風の爽やかさ、太陽の眩しさ、そして食べ物や生命への感謝の気持ち……。

 ツバサと出会ってから、ジゼルは擦り切れた心が回復するのを強く感じている。

 宮殿での多忙な生活はやりがいがあったものの、忙しない毎日は自分の心を激しく消耗させた。

 常に何かに追われているような感覚……。

 やればやるほど新たな仕事が生まれ落ち、自分の持てるリソースを全て割いても足りないほどであった。


 この家やツバサの持つ銃などの〘蒸気魔導具〙。

 くすんだ真鍮の色合いや散りばめられた歯車に、もくもくと漂う蒸気。

 初めて見たデザイン様式なのに、不思議と心が惹かれるのはなぜだろうか。

 たしかに、宮殿での自動ゴーレムや魔導具に比べると手間暇がかかるかもしれない。

 充電用の魔導具に"置いておくだけ"といった使い方はできず、ここに雑務を肩代わりしてくれる自動ゴーレムもいない。

 管理の手間もそれなりにかかるようで、ツバサが諸々の手入れをしている光景もよく見た。 手間暇も時間もかかる生活。


(……だけど、それがいい……)


 宮殿では考えられないような時間の使い方が、むしろ楽しかった。


(これも全部……ツバサさんに会えたからですね……)


 まだ出会って数日なのに、すでにジゼルの中ではツバサの存在が大きなものになっていた。 彼に会わなければ、自分はここでどんな人生を送っていたかわからない。

 いくら"スターフォール・キャニオン"が素晴らしい大自然でも、きっと自分は何をしても"時間を無駄にした!"と叫んでいただろう。

 宮殿で一日中抱いていた焦燥感や時間を無駄にするんじゃないかという不安感はもうない。 恩人であるツバサのことを考えるとジゼルは心が躍り、自然と頬が緩む。

 尊敬を含めた恋慕に近い感情……。

 そんな想いを抱いた彼女が思うことは一つ。


(ツバサさん、私を受け入れてくれて本当にありがとうございます。この先もあなたとずっと一緒にいたい。もちろん、ランドさんとも……)


 そして……。


「……アナログスローライフ、最高!」


 白い湯気がのんびり漂う浴室に、ジゼルの明るい声が響いた。 

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