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第10話:少年錬金術師、料理を作る

 捕まえた晴天鳥は見えないところで、ジゼルさんが解体魔法を使ってお肉の状態にしてくれた(やっぱり、魔法は便利)。

 僕の目の前にあるのは、もうスーパーで売られているような形だ。

 実際のところ、どうやって捌こうか心配だったのでありがたかった。

 皮や羽根、爪なんかは蒸気錬成の素材としてスケッチしたところ、<晴天鳥の羽根>、<晴天鳥の皮>、<晴天鳥の爪>となって【蒸気な本】に吸収された。

 ジゼルさんのお話の通り、羽根や皮は衣服に使われ、爪は武器にもなるらしい。

 もしかしたら、〘蒸気な銃〙の練習用の弾にだって使えるかもしれないね。


「それでは、さっそく料理を始めましょうー!」

「『おおおー!』」


 僕が言うと、ランドとジゼルさんも元気な声を上げてくれた。

 気合いが入るよ~。

 まずは火種コンロを着火。

 先ほど〈鉄〉から錬成したナイフで晴天鳥のお肉を一口サイズに切り、これまた鉄製のフライパンで焼き始める。

 お肉の油が爆ぜる音と、香ばしい香りが食欲をそそる~。

 焦げ付かないようにシャッシャッと木ベラを動かしていると、傍らのジゼルさんが感心した様子で話した。


「ツバサさんはお料理もできるなんてすごいですね。私はまったく料理ができないので尊敬します」

「いえいえ、ただ焼いているだけですから」

『ツバサが焼くと、それだけでおいしくなるんだレム』


 ランドも褒めてくれて嬉しいことこの上なし。

 ふっふっふっ~、前世は節約のため自炊することが多かったからね。

 僕は案外、料理ができるのだ。

 まさか、ブラック労働の日々がこんなところで役に立つとは。

 人生は不思議なり。

 ふと思い立って、サンアップルを細かく刻んでフライパンに入れてみた。

 果汁がお肉に馴染み始め、林檎の芳醇な香りが湧き立ち、僕たちの鼻をくすぐる。

 先ほどから、ジゼルさんもランドも手で扇いで香りを楽しんでいる。

 

「はぁぁ……爽やかな香りですね。ずっと嗅いでいたいくらいです」

『ボクはもう早く食べたくてしょうがないレム』

 

 焼くにつれ果汁があふれだし、お肉を包み込む。

 あと三分もすれば食べ頃だろう。

 パチパチと焼いていたら、突然ジゼルさんが爆弾発言を投下した。


「料理中に私が触ると、なぜかスライムみたいに食材が溶けてしまうんですよね。子どもの頃姉にクッキーを焼いたのですが、ドロドロになって姉を泣かしてしまったほどです。それ以来、自分で料理するのはやめました」

『「へ、へぇ~」』


 ジゼルさんの言葉に、僕もランドもたどたどしく答える。

 しょ、食材が溶ける、ってどういう状況なんだろうね。

 想像しただけで恐ろしい。

 しばらく、ここでの調理担当は僕になりそうだ。

 そのうちお肉もこんがり焼けて、真鍮から錬成したお皿に乗せる。

 もちろん、ナイフやフォークも真鍮製。


『「それでは、いただきま~す……美味絢爛!」』


 お家野中に、僕たち三人の喜びの声が響く。

 林檎の甘みでコーディングされたお肉は格別においしい。

 サンアップルの味わいも酸味が落ち着いて、より深い甘みとなっていた。

 火を通したから、味わいにも変化が生まれたのだ。

 ランドも気に入ったらしく、何枚もおかわりしていた。


『ボク、このお料理毎日でも食べたいレム』

「気に入ってくれてよかった。晴天鳥が手には入ったら、」

 

 ジゼルさんもまた、TVリポーター顔負けの勢いで感想を述べる。


「晴天鳥のお肉は脂肪が少なく淡泊な味で知られていますが、林檎と合わさることでフルーティな薫り高い印象的な味になっています。まるで、サンアップルと晴天鳥が手を取り合ってダンスを踊っているような感覚です」


 非常に語彙力豊富で、詩でも聞いているかのような感覚だ。

 これが王族食リポ……。


「そんなに喜んでいただけて僕も嬉しいです。もっとおいしくできるよう頑張ります」

「……はっ! 申し訳ありません、はしたなくてっ。忙しい宮殿では、食事の時間が数少ない楽しみだったもので」


 ジゼルさんは頬を赤らめて話した。

 たぶん……グルメな方なんだと思う。

 食に関する知識も深いし、本人が話すように忙しい生活の中では、食事は数少ない楽しみだったのだろう。

 いずれは調味料も手に入れたいな。

 お肉そのものもおいしいけど、やっぱり塩や砂糖などの味付けもしたい。

 素焼きや林檎味の二択では、さすがに飽きてしまう。

 海があれば海水から塩を作ることもできそうだけど、ジゼルさん曰く"スターフォール・キャニオン"と海はだいぶ遠いそうだ。

 となると、岩塩が現実的かな。

 大峡谷でのスローライフを充実させるためにも、錬成の素材とは別に探していきたいね。

 そんなことを考えていたら、ツンツンと何かが僕の腕を押しているのに気がついた。

 ランドだ。

 

『……ツバサ、もう少し取ってほしいレム』

「は~い、あまり食べ過ぎないようにね」

『おいしくものはいくら食べてもいいんだレムよ』

「ランドさんの食べる光景はとてもおいしそうです」


 ご飯を食べてお喋りしているうちに、あっという間に夜を迎え、僕たちは穏やかな眠りについた。

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