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おバカな婚約破棄

わらしべ婚約破棄

作者: た〜

その村娘には婚約者がいた。二人は幼馴染であり、同年代は二人きりだったので自然の成り行きであった。

男は働き者であることが唯一の取り柄であり、他は欠点だらけであった。しかし付き合いが長いこともあり、百も承知であった。ブスは3日でなれるとか言うが、ブ男も3日で慣れるのだ。


ところがである。男の実家の借金が返しきれなくなりやむを得ず大きな街に奉公に上る事になった。勿論女連れなんて以ての外だ。

仕方なく男は婚約破棄を申し入れた。

この婚約破棄に際し男は予てから付き合いのあった商屋の男を紹介した。


商屋の男は妻に逃げられ、後添えを探していた。妻に逃げられたと言っても商屋の男に瑕疵があるわけではなく完全に妻の浮気である。

実際合ってみると人柄は良いし年齡はやや離れているが、その分頼りがいもあった。見た目も格段良いとは言わないまでも元の婚約者よりはマシである。そして何より商屋は経済的に豊かである。

トントン拍子に話がまとまり婚約が整った、と思ったのも束の間、商屋の男の元の妻が戻ってきた。曰く浮気相手が実はとんでもない男だった。反省しているよりを戻したいというのだ。

もともと惚れ合って結婚した二人だったので、商屋の男は元妻を選んだのだ。結局この婚約も破棄されることとなった。


勿論女に一切の瑕疵のない婚約破棄である。商屋の男は全力で女の新たな結婚相手を探す。そして、商売で付き合いのあったとある男爵家の長男を見出した。

男爵家はこの地方で良政を敷いており評判が良い。本人の人柄も良さそうだ。

長男は家を次ぐため周りから結婚を迫られていたのだった。そして目出度く婚約、だったのだが

「済まない。実は僕は男が好きなのだ。今のところ特定の相手がいるわけではないが女性と結婚はできない」

またしても、婚約は破棄された。

女には瑕疵のない(以下同文)


次に紹介されたのは子爵家の次男坊。

出会った途端に甘い言葉を囁いてきた。こんな言葉に免疫のない女はたちまちメロメロに。すっかり舞い上がって、婚約を交わすのであった。


ところがである。次男坊は実のところかなりの女好きであちこちの女に手を出しまくっていた。その中のひとりが嫉妬に狂い次男坊を襲ったのだ。命に別状はなかったものの、よほど手ひどくやられたのかすっかり女性に対し恐怖心を持ってしまった。

またしても婚約破棄であった。


子爵家が女のために見つけてきた結婚相手は寄り親である伯爵家の長男だ。流石に伯爵家ともなれば平民から嫁入りというわけにもいかないので、子爵家の養女として迎え入れられそこから嫁入りすることになった。

こうして子爵家令嬢の地位と新たな婚約者を手に入れたのである。


伯爵家くらいの結婚ともなると婚約が整ってから顔合わせ、下手すると結婚式当日に初対面なんと事もざらにある。今回はそこまで極端ではないにしろ、婚約が整い貴族としての礼儀作法を俄仕込みで勉強してからの対面だ。

その顔合わせの席で

「君との婚約は無しだ。僕は真実の愛に目覚めたのさ」

そういう長男の隣に一人の娘が寄り添っていた。

女を見た長男が傍らの娘と見比べ(あれ?はやまったかなー)と、一瞬頭をよぎったのは内緒の話である。後悔噬臍


どうせ次は侯爵様なんだろう。そう思ったそこの君。残念でした侯爵を飛び越えて公爵なのでした。別に婚約破棄のネタが尽きたわけじゃないよ。ホントだよ?


女と会った公爵閣下、たちまち一目惚れしました。

求婚された女は胡乱な目で受け入れました。「どうせまた婚約破棄されるんでしょう」

その通りでした。婚約がまとまった途端王室から横槍が入ります。曰く隣国の王女がお前を痛く気に入りぜひお前に嫁入りしたいとのことだ。済まないが国のため涙をのんでくれ。要するに政略結婚だ

隣国はこの国より軍事経済ともに規模が大きく逆らえない。公爵閣下も立場上お国のためと言われれば逆らうことはできない。泣く泣く婚約破棄を言い渡したのであった。


さて、公爵閣下との婚約破棄騒動の中で女は王太子と面会する機会が幾度かあった。まあ、公爵閣下との婚約破棄の謝罪である。


で、真面目な話ばかりしても退屈なので色々と雑談もあった。その中で王太子は愚痴をこぼした。

「私に言い寄ってくる女は欲にまみれてばかり。持ち込まれる縁談は輪をかけて・・・・一族やら関係者の権力欲まみれの連中が付属してくるし」

「あら、わたしだって欲はたくさんありますわ。あんなことやらこんなこと・・・・」

色々と欲しいものやらしたい贅沢を並べていきますが、それは庶民の出である女にとっての贅沢であって王侯貴族からすれば、贅沢のうちに配しません。むしろ必要最低限未満です。

そんな慎ましやかな女に王太子は惹かれました。

女の話の中で繰り返される婚約破棄の話を聞いていた王太子は、ならばと


「婚約なんて悠長なことをやっているから婚約破棄なんてことになるのだ。だったら今すぐ結婚しようではないか」

鶴の一声その日のうちに結婚式を執り行ってしまった。


女は慎ましくも(贅沢三昧で)幸せに暮らしましたとさ。


めでたしめでたし。


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― 新着の感想 ―
最後がハッピーエンドでよかったです。 楽しく読むことができました。
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