大きなてるてる坊主
雨が降り続いている。
じめじめとした嫌な雨。梅雨に入って断続的に降り続いている。私はふと隣の家を思い出してしまった。
……きっと汚いだろう。
一応断っておくが、別に隣の家を疎んじている訳ではない。隣の家の住人はしばらく家を空けているらしく、1週間ばかり前から玄関に新聞が溜まり始めた。その新聞が雨に濡れる光景を想像して、つい“汚いだろう”と思ってしまったのである。
勝手に掃除をする訳にもいかないし。
せめて雨が降り止んでくれればまだマシなのに。否、それがなくても雨には降り止んで欲しい。外に遊びに行けなくて、息子が不機嫌になってしまっているのだ。
「ねー、まだ雨やまない?」
今も不貞腐れて、おもちゃの車で遊んでいる。
「じゃ、てるてる坊主でも作ってみようか?」
気くらいは紛れるだろうと思って私はそう言ってみた。ところが息子はそれにこんな事を言う。
「でもー、てるてる坊主あまりきかないみたいだよ」
「どうして?」
「だって、お隣さん、あんなに大きなてるてる坊主をぶら下げているのに、雨やまないから」
「え?」
私はそれを聞いて驚いてしまう。
二階にある息子の部屋からは、お隣さんの窓が見える。だから息子は中の様子を知っているのだろう。
でも……
お隣さんに、てるてる坊主を下げるような小さな子供はいない。確か一人暮らしだったはずだ。
私は顔を青くした。
まさか、お隣さんは……