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鬼人伝2222

作者: はんはん

 西暦2222年。

 昼夜を問わず輝く明かりに照らされ、闇は居場所を無くし薄れていった。

 闇に潜む者達は、居場所を奪われ、散り、消えゆく。

 いつの間にか妖は見えなくなり、怪は減っていった。

 だが、それは消えたのではなく、居を移しただけ。

 新たな住処は、人の心に、内なる闇に。


 心に鬼を住まわす者を、鬼人という。

 そして鬼人を討つものを、鬼切りと呼んだ。




 俺の名はカズナ。

 鬼切りの一人だ。

 鬼人達を束ねる役小角という者を、屠りに来た。

 だが、恐ろしい罠にかかってしまったのだ。


「なんで、手のひらサイズの食虫植物に捕まるかなこいつ」

  

 女の声で俺は目覚めた。

 赤いジャージの、まだ子供にしか見えない女がひとり。

 その後ろに、ガタイのデカい女。

 そいつは青いジャージだ。


「あたしは赤鬼の都晶(みやこあきら)小角(おづぬ)さんのアシスタント兼秘書や」


 甲高い声で赤鬼が言う。


「あっちは青鬼のミケランジェロ万蔵、小角さんのボディーガード。めっちゃ強いで」


「悪いが情報量が多すぎて、後半、頭に入ってこなかった」


 主にミケランジェロのせいで頭の回路がショートしたらしい。


「まあええわ。あたしはミヤ、あっちはミケって呼んでくれたらいいから」


 思ったより呼び名はフレンドリーなんだな。


「言っとくけど、あたしのこと子供や思ったら後悔するで」


「中学生のガキにしか見えないが」


 俺がそう言うと、ミヤは顎を突き出して答える。


「人間年齢やと十三歳やけど、鬼年齢では十三才二ヵ月や!」


「誤差だろ」


 そこに一人の女が入ってきた。

 パンツスタイルのスーツを着こなし、フレームレスの眼鏡をかけた姿は、それなりに仕事のできる女に見えた。

 実際、良く見れば、今自分のいる部屋は手狭なオフィスのようにも見える。


「あら? お友達?」


「うん」


「おじゃましてます」


 ハキハキとした口調の女に、ミヤが答える。

 思わず俺まで、つられて答えてしまった。

 恐ろしい話術だ。


「小角先生は、もう上がりですか?」


「二日、家空けちゃったから。マロニーちゃんの餌かえなくちゃいけないし」


 あの子、さみしいとそこら中にウンチするし……。

 独り言のように小角先生と呼ばれた女がつぶやく。


「あとお願いねー」


「わっかりましたー」


 ミヤが女を見送るように手を振ると、思わず俺まで「お疲れ様でしたー」と声をかけてしまった。

 恐ろしい話術がまだ俺を蝕んでいる。

 ドアがバタンと締まると、ミヤがこちらに目を向けた。


「で? あんたは何の用があってここに来たん?」


「俺は鬼切りだ。やることは一つしかない」


 法治国家の日本では、銃や刀などの所持は固く禁じられている。

 なので、己の身体を鍛えつくし武器と成す。

 それができなければ鬼切りなど勤まらない。


「なーんや、マリオカートでもしに来たんかと思ったわ」


「……あるのか?」


「は?」


「マリオカートがあるのかあ!」


 俺の叫びが空気を振動させる。

 おずおずとミヤが指さした先に、プレステ壱拾参があった。




 二時間ほどマリオカートとバルーンファイトで遊んだあと、帰ることにした。

 交通費が出ない職場なので、終電を逃すわけにはいかない。


「あ、待って。小角さんからメッセージが……」


 俺はそっと身構えた。

 もしや、俺を生きて返すなという指示なのかもしれない。

 

「うわぁ。これはヤバいことになった」


 そう言いながらミヤが俺にメッセージを見せた。

 そこには、そこら中に散らばる糞と、半笑いのチワワの顔が写っていた。

 三人で爆笑した。

 



 人の心に闇が凝り、鬼が住む。

 それを鬼人という。

 鬼切りは人のまま、鬼を殺し、屠る。

 これは彼らの物語。

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