モンキーバナナ
はあ……
学校に行くのが憂鬱だ。
メイちゃんもマキちゃんも、わたしのマヨネーズ好きは自分たちしか気付いてないハズって言ってくれたけど。
でもやっぱりどうしてもたつきクンのあの一言が頭から離れない。
それでも学校に着いて、ともだちたちの顔を見たら少しは気が晴れるに違いない。
「おはよー」
声をかけながら教室に入る。
するとそこはすでに、思ってもみなかったことになっていた。
「だからリカに謝れつってんだよ!」
大きな声を出していたのはメイちゃんだった。
マキちゃんも珍しくきびしい顔をしてるし。
二人が向き合ってるのは、たつきクン……。
え、一体どうしたの!?
「なにがだよ。
オレは別に謝るようなことはしてないぞ」
とってもケンアクな雰囲気。
他のクラスメートも遠巻きにして見てるし。
「たつきはんがヒドいことゆうから、リカちゃんが気にして傷ついてるんやで」
二人ともわたしのために……。
だけど違うの。
たつきクンはなんにも悪くなんかない。
「だからオレがなにを言ったっていうんだよ?」
「これだからデリカシーのない男は……。
たつきテメェ、ちょっとイケメンだからってチョーシ乗ってるんじゃねえぞ。
リカはお前が言ったマヨネーズ女って言葉で傷ついてるんだよっ!!」
メイちゃん、なにもそんな大声で叫ばなくても……。
「ま……」
たつきクンはなにか言い掛けてそのまま黙っちゃった。
「やめて、もういいのよ。
たつきクンはなにも悪くないよ。
わたしが勝手に気にしてるだけなの。
それからメイちゃん、あんまり大声でマヨネーズなんて言わないで」
なんだかすごくいたたまれなくなって、わたしはメイちゃんたちの間に割って入った。
「あ、リカ……おはよう」
決まり悪げにメイちゃんが挨拶した。
「なんだってんだ、一体。
マヨネーズばっか食ってる女をマヨネーズ女って呼んでも間違いじゃないだろ」
メイちゃんはたつきクンの方に顔を向けたとたん、またすごく怒った顔になる。
「じゃあなんだ、バナナばっかり食べてるサルをお前はバナナモンキーって呼ぶのかよ。
そんなのモンキーバナナと紛らわしくってしょうがないだろ」
メイちゃん、わたしのために怒ってくれてるんだね……。
でもその例えはものすごく意味が分からないよ?
ちょうどその時先生が教室に入って来た。
メイちゃんはまだなにか言いたそうだったけど、渋々自分の席に戻っていった。
たつきクンもまだまだおさまらなさそうな感じだった。
それで席に行く時、わたしとのすれ違い様に
「マヨネーズばっか食ってるヤツなんて味覚が死んでんだよ」
とボソリと言った。
「え」
わたしは振り返った。
だけどもうたつきクンは、席に着いてしまってて、頬杖を突いて窓の外を見てるだけだった。
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