マヨネーズ女
「たつきクンのおうち、フランス料理屋さんなんだよね?」
「ああ、それがどうかしたか?」
「じゃあフランス語分かるよね」
「は?」
「ソロ、コンビ、トリオときたら四人組はなんていうんだったっけ??」
そう訊くと、たつきクンだけじゃなくメイちゃんとマキちゃんも目を点にしてわたしを見る。
だって仕方ないじゃない。
気になってたことだから知りたいんだもん。
「カルテットだ」
ため息混じりにたつきクンは教えてくれた。
「あー、カルテット!!
聞いたことある!
カルテじゃなかったんだあ」
「それからフランス語で二人組みはコンビじゃなくてデュオだ、バカ」
「そっかあ。
二人組みはデュオなんだね。
確かにそっちの方が可愛いかも」
「もうリカちゃん、ホンマになに言うてんの?」
「意味分からないって」
マキちゃんもメイちゃんも呆れてる。けど笑ってる。
たつきクンはぷいと背中をむけようとした。
わたしは慌ててお礼を言う。
「ありがとう。
おかげでスッキリしたよ。
デュオまで教えてくれて、たつきクンって親切だね」
だけど、たつきクンはよりいっそう不機嫌そうな顔になった。
眉間にシワまでできてる。
「知らねえって。
オレがマヨネーズ女なんかに親切にするわけないだろ。
ばーか」
そしてまた自分のとても綺麗な色彩のお弁当を食べ始めた。
マヨネーズ女……。
言われた時はべつに気にならなかったんだけど、なぜだかわたしはお弁当の続きを食べる気がなくなっていた。
わたしが食べないのを見て、メイちゃんがミートボールだけを貰ってくれた。
マキちゃんはなにも言わなかったけど、少し心配そうな様子だった。
お家に帰ると、着替えもしないままにベッドに仰向けに倒れ込んだ。
「マヨネーズ女……」
たつきクンが言ったひとことを、もう一度口に出して言ってみた。
なんだかものすごくカッコ悪い。
わたしはみんなからそういう風に見られていたのかな。
ううん、
それよりもわたし、マヨネーズを持ち歩いていることをメイちゃんとマキちゃんの二人以外に知られているなんて思いもよらなかった。
わたしの頭の中では学校の制服を着たメタボな体型のキューピーちゃんが、先生に当てられて方程式を解いていた。
きっとみんなからはわたしがこういう風に見えているんだろう。
はあ……
溜め息がもれていた。
気付かないうちに部屋は薄暗くなっていた。
そうだ、本当にわたしのマヨネーズ好きがクラスのみんなにバレているのか、メイちゃんとマキちゃんにLINEで訊いてみよう。
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