ともだちと不機嫌男子
「げ、あのばばあ!
また弁当にインゲンなんて入れてやがる」
「こら、めーちゃん。
なんて口のきき方や。
おかあちゃんの作ってくれたもんはなんでも感謝して食べなあかんで」
いつものお昼休み。
口のきき方の悪い、編み込み髪の女の子はメイちゃん。
自称肉食系女子で、いつもの通りにお弁当にお野菜が入っていたことにモンクをつけてる。
それをたしなめる関西弁喋りはマキちゃん。
以前は関西弁ってなんだか怖いイメージがあった。
けど、一年の終わり頃に転校してきたマキちゃんはほんわかした美人さん。
彼女とともだちになってからはわたしの関西へのイメージはずいぶん変わったなあ。
「じゃあコレかけるといいよ」
わたしはカバンから伝家の宝刀を取り出して、メイちゃんのお弁当にかけてあげる。
むにゅうううううう
ちなみに内容量は450グラム入りの大サイズだからたっぷり使える。
インゲンも生姜焼きもハンバーグもごはんも、みんな白く染まって、とっても美味しそう。
「マヨネーズがあればお野菜もお肉も美味しく食べれるよね」
わたしがそう言うのと、メイちゃんが「ぎぃやああああ」と悲鳴を上げたのは同時だった。
「ちょ、リカ!
なにするんだよ」
「あはははは。
めーちゃん、今日もやられてもうたなあ」
怒るメイちゃんと笑うマキちゃん。
ほんと、良いコンビだと思う。
あ、わたしも入れてトリオか。
でもトリオって何だかコントグループみたいでカッコよくないなあ。
もし四人だったらなんていうんだろ。
たしかフランス語なのよね。
なんだっけ、カル……カルテ?
カルテじゃあなんだか病院みたいだから違うか。
「うるせーな。
メシぐらい黙って食えよ」
となりから不機嫌な声がかけられた。
声の主は清瀬 樹生クン。
背が高くてイケメンなのに、どこかとっつきにくい。
お弁当もいつも一人で食べてるし。
「なんだよ。
しゃべりながら楽しく食べるのが一番美味しい食べ方だろ」
あまり楽しそうでもなかったメイちゃんがそう反論する。
「バカか。
だまってじっくり味わって食うのが一番美味いに決まってるだろ」
たつきクンの声が一段と不機嫌になる。
不機嫌というよりもケンカ腰かしら。
それもそのはず。
たつきクンの家はレストランを経営してて、彼自身も小さい頃からシェフであるお父さんについて料理の修行をしているらしい。
そんな彼だから、料理はじっくりと味わって食べる物という思いがあるんだろうな。
「あ」
「なになに、どうした?」
思わず声をもらしたわたしにメイちゃんが訊く。
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