表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/203

71話:寒いです

 私は教会パーティと地底湖エリアへ向かった。

 そこはまた岩に囲まれた地下空間。


 けど明らかに違う世界が広がっていた。


「すごい、綺麗。この光ってるのは何?」


 日の光も入らない地下なのに、辺りは薄青く発光してる。

 炎熱地帯と違って熱くはない、というより光ってる割に熱源がなくて寒いくらいだ。

 そんな日が入ってくるようなこともない地下は、物の影こそ深いけど灯りを掲げて歩く必要はないくらいに明るい。


 寒さのせいか設置されてる灯りも弱く感じる。

 それを岩についた青い発光物が補ってるようだ。


「それは地底湖周辺の岩の特性だ。元からこの周辺には光る岩があるんだ」

「震動に反応して光る、ほら、見てろ」


 トビアスが答え、その後にダニエルが壁を叩く。

 すると淡く光っていた岩壁が強く発光した。


 ただすぐ光は弱くなって元の淡い光へと戻る。


「常に発光してるのは。ここではない何処かからの震動だそうですよ」

「ダンジョンだもんね。他の魔物の動きかな?」


 ワンダに答えつつ、私は岩だらけの足元に注意して進んだ。


 喋りながら進めるのはありがたい。

 鍾乳石が上下に連なる地下世界は、すでに冬並みに寒いし息が白くて、気を逸らさないと寒さに耐えられそうになかったから。


「景色は綺麗だけど、色んな所から水がしみ出してるね」


 だから寒いし他の冒険者は見えない。

 あまり長居する場所ではないだろう。


「ここってスライム以外に何が出るの?」

「基本は虫系、水棲系で、その中にアクアスライムがいるな」

「聞いたことないスライムだ。どんな特徴がある?」


 私の質問に、ダニエルは困ってトビアスを見る。


「水辺にいるスライムの基本だから特徴と言われても困るな。近くの水を吸って噴出する攻撃をするくらいか?」

「ここは水自体が冷たいので冷水を放ってきますからご注意を。教会にもここのアクアスライムの冷水を受けて、発熱して運び込まれる方はいらっしゃいますから」


 ワンダの忠告に、ここで水濡れした経験のあるダニエルが大きく頷いてた。


「あれは当たると本当に凍える。だから金属は身に着けないほうがいいというのがこの地底湖の基本だな」


 そう言えば今日はダニエル鎧じゃない。

 私たちと同じように衣服で防寒していた。


「アクアスライムの冷水も厄介ですが、さらに蝙蝠が風の魔法を起こすのも問題なのですよね」

「あれでさらに凍えるからな。その上で大抵、どちらかと戦ってるともう一方も現れる」


 ワンダとトビアスも困ったように溜め息を吐き合う。

 つまりその最悪のコンビプレーを受けたことあるんだ。


「その攻撃された時、どうやって逃げたの?」

「別の冒険者が近くにいて退治してくれました」


 ワンダが笑顔で答える横で、トビアスは納得いかない顔をして続ける。


「その後すぐに教会に追い返された。対処がないなら教会で回復に専念しろと言われて」


 うん、悔しそう。

 けど助けた冒険者は良心的だと思う。


 三人は悪い人じゃないんだけど実力が伴わない部分あるんだよね。


「ちなみに今回は対処、何かあるの?」

「前より剣を早く振れるようになった」

「光で蝙蝠を追い散らせるようになった」

「凍傷回復は上手くなりました」


 しょ、消極的だぁ。

 それ対処って言っていいのかな?


「ダニエル、剣が届かない蝙蝠はどうするの?」

「そこら辺の石投げて落ちればいいな」

「トビアス、光で他の魔物寄ってきたりはしない?」

「虫系が来るし、その虫を狙ってまた蝙蝠も来るな」

「ワンダ、攻撃手段って何かないの?」

「杖で殴る程度ならできますよ」


 …………駄目だぁ。

 これは戦っちゃ駄目って私でもわかる。


 そして私はクライスと違って攻撃魔法に詳しくない、

 火力不足のこのパーティでは私も戦力不足の感が否めない。


「み、見つからないように気をつけよう。見つからないために必要な行動ってある?」


 私初心者だし、できればアドバイス欲しいんだけど不安だなぁ。

 もっと攻撃できる手段考えてくれば良かった。


「音を立てない、でしょうか?」

「光も駄目だね」


 ワンダとトビアスの答えに、私は根本的な思い違いを悟る。


 これ、攻撃手段とかじゃなくて敵に見つからない方法考えて来るべきだったのか。

 それとも、見つかっても確実に逃げられる方法?

 いっそ、餌でも設置して安全圏から調査できるように罠でも考えて来るべきだったかも。


「二人とも、それだと生息調査の対象も見つからないぞ?」


 ダニエルが基本的な指摘をする。

 やっぱり罠のほうが有用だったようだ。


「えっと、アクアスライムがいるかどうか、そしてどの辺りにいるか、どれくらいの数がいるかを調べるんだよね?」


 本当なら探査能力を持つ者が必要なんだろうけど、ここにはいない。

 私は呼び寄せるか遠ざける魔法なら使えるけど、それだと調査としてちょっと問題がある。


「調査依頼って思ったよりも難しいんだね」


 司祭さんの依頼が同行であって、依頼達成の手伝いじゃなかったのは根本的に能力が足りてないことをわかっていたからだろうか。


 倒していい分楽だと思うべきかな?

 そんな考えごとで隙ができた。


「うん? 今何か音がしなかった?」


 私より先にダニエルが剣を抜き、トビアスが杖を構える。


「最悪の組み合わせだ」

「蝙蝠とアクアスライムがいる!」


 言われて見れば青い光を横切って飛ぶ黒い影がある。

 そして青い光に照らされた球状生物が岩の影に移動するのが見えた。


「うわ、思ったより見にくい」

「蝙蝠は暗い天井から来るんです。しかも岩に触れないのでほぼ光に当たりません。そしてアクアスライムはこの場の光に溶け込んでしまって見つけにくいんです」


 ワンダが今になって重大な説明をしてくれた。

 そして私に答えながら杖を構えるけど、ワンダには攻撃能力はない。


「あ、水の矢を放つ呪文籠めた触媒あるから必要なら使って!」

「まぁ、ありがとうございます」


 そんな話をしてる間にダニエルは蝙蝠に向かって剣を振る。

 けど飛んでるから刃は届かない。


「僕に任せろ! そら! 目よ眩め!」


 トビアスは光を放とうとすると、ワンダは怪我に備えて待機し、ダニエルは蝙蝠から目を離さない。


 その隙にアクアスライムは私のほうへと距離を詰めていた。

 岩陰を上手く使って気づかれないように接近していたんだ。


「う、わぁ! なんか頭良くない!?」


 ただ最終的に飛びつくようにして攻撃するのは他のスライムと同じ。


 だからつい癖で、私は蹴りを入れる。

 アクアスライムもアイシクルスライムに比べて柔く、慌てたわりに一撃で踏みつぶしてしまったのだった。


隔日更新

次回:調査続行です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ