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15話:叔父さんに会いました

 翌日、エリーとシドが昼前に店に来た。


「わ、エリーどうしたのその服?」


 エリーは栗色の髪をポニーテールにしてるのは変わらない。

 けど服装が冒険者風だった。


 太ももまであるロングブーツに合わせてとても短いスカート。

 胴体はコルセットで固定していて、左腕にも革の防具を肩から巻いている。


「なんかその反応新鮮。冒険者だとこれくらい普通だから。エイダも着る? 防御力は保証するよ」

「私は、その、サイズが合わないんじゃないかな?」


 主に胸の…………うん、この話はさっさと流そう。


「シドも革鎧ってことは自作?」

「あぁ、胸当てと関節覆うだけの簡易だけどな」


 シドは普段着の上から言うとおりの物を身に着けてる。


 どちらも武器は背負った状態。

 街の中では騎士なんかの特別な身分がない限り、武器を即座に使えるように携帯するのは駄目なんだそうだ。


「じゃあ、紹介するわね。この人が私たちの叔父さん、ヴィクター」

「うぃーす」


 三、四十代くらいの男性が、寝起きみたいにくしゃくしゃの髪を適当に手櫛しながら入って来た。

 剣を吊るすための丈夫そうなベルトをしている以外普段着に見える。

 背中に片手剣と盾を背負ってなかったら普通に町人っぽい。


「初めまして、エイダです。よろしくお願いします、ヴィクターさん」

「おうおう、本当にそっくりなのにクライスに比べて礼儀正しいな」

「叔父貴も少しは見習ってくれ」


 シドの苦言を聞く気はないらしくヴィクターさんは笑うだけ。


「こんな酔っ払い必要以上によろしくする必要もないだろ」

「そんなことないでしょ。今あるクライスの呪文使いきった時にはエイダにお願いするんだから」


 エリーもヴィクターさんにしっかりするよう言う。


 どうやらこのヴィクターさんもお客さんらしい。

 本当に呪文作りって需要あるんだなぁ。


「じゃ、まずは装備の確認と戦闘方法の打ち合わせしようや」


 ヴィクターさんの指示で全員暖炉前のテーブルにつく。


「まず武器だな。俺は剣と盾の前衛。シドは今日は斧か?」

「山のほう行くからな。手斧と鉈で使いやすいほう切り変えながら使う」

「エリーは弓か。射線通る所選んで進んだほうがいいな」

「あ、叔父さん。スリング持ってきたから私中衛でもいいよ」


 慣れた様子で進む武器の確認と配置。

 そしてヴィクターさんは私を見た。


「得物はなんだ? それとも見学しとくか? 最低限自衛できるか逃走できる準備はいるが」

「えっと、この杖があります」


 私はアイシクルスライムの杖を机の上に出した。


「わ、何これ? 冷たい。氷でできてるの? あ、でも触っても溶けない」

「見るからに氷特化って感じだな。使えるのか?」


 エリーとシドの質問に、私は首を横に振る。


「室内でできることはしたけど、戦闘に使えるかは」

「そりゃそうか。じゃあ、採集と一緒にその杖の試運転もするか。…………となると、西側の草原近いほうがいいか?」

「山育ちってことだから、私は最初から山のほうに行ってもいいと思ったんだけど?」

「エイダは慰杯をまず再現するつもりらしいから、中腹の薬草取りに行ったほうがいいんじゃないか?」


 防具屋の三人が話し合ってくれる。

 私はわからないから黙ってるだけなのが、申し訳ない。


「エイダ」

「はい!」


 ヴィクターさんに呼ばれてつい勢い込む。

 笑われた…………。


「まず敵が来てもすぐに対応できる草原で試し打ちだ。その後、いいようなら山に入るぞ。いいか?」

「はい、大丈夫です。あ、この杖は炎系の魔法は全然なので」

「そこも試し打ちで見てみよう」


 シドが笑いながら言ってくれると、エリーが勢いよく立ち上がる。


「じゃ、次は防具ね。山のほうだからダンジョン内より全然レベル低いんだけど…………」


 エリーは言いながら私の恰好見る。

 今日は旅の服を着ていて丈夫さを重視してる。


 山歩きにも使ってた厚手のズボンとブーツに作業用の手袋と腕当て。

 しっかりした造りのお父さんから貰ったベストだ。


「山ならこれくらいでいいんじゃないか?」

「でも初心者は山でも怪我するでしょ」

「叔父貴、エリーは自分以外もこの邪魔そうなブーツ使わせて使用感確かめたいんだよ」


 耳打ちする割に普通の声量で言うシドにエリーの肘が入る。


「エイダ」

「は、はい。でもそのブーツ、長すぎて合わせる下ばき持ってないから」


 長いスカートとかだとブーツのせいで形がおかしくなるし、そんな短いスカート持ってないし履くのは恥ずかしいし…………。


 遠回しに遠慮しようとしたけどけどエリーが退かない。


「そのズボン、側面にボタンついてる。そして裏のほうに何かを縫い付けてるのが見えてるわよ」

「あ、ちょっと! ま、待って!?」


 エリーは容赦なくズボンのすそを捲り上げる。

 するとズボンをたくし上げるための細長い固定布が露わになった。


「うぅ、山歩きする時、あんまり裾が長いのも困るから…………」

「これたくし上げればブーツ行けるって! ちゃんと足に合わせられるよう中敷きとつま先の詰め物持ってきたから! 大丈夫! 私のほど長くないブーツで膝上だって!」


 抵抗虚しくズボンをたくし上げられブーツにされました、はい。


 あ、でも丈夫なだけの靴よりずっとデザインが可愛い。

 たくし上げる前提のズボンだから、裾が広い分長めのブーツでも邪魔にはならないや。


「悪いな、エイダ」


 シドは私の裾がまくり上げられた時点で背中を向けてくれていた。


「さーて、行くか」


 ヴィクターさんはマイペースにそう言うと、店を出て街の北を目指す。


「そっちは飲食店が集まってる繁華街よ。大きな道外れるといかがわしい店もあるから気をつけて」

「向こうの道は宿屋街だな。冒険者やダンジョン産品を扱う商人が主な利用者だ」


 エリーとシドが街を説明しながら歩いてくれる。


 そうして行く先に北門が見える大きな広場に行きつく。

 広場に面して目立つ五階建ての建物があった。


 さらに全ての窓からは十字に区割りして斜め同士が赤と白に色分けされた記章がかかっている。


「あれは?」

「ありゃ、冒険者ギルドだ。その隣は買取所。奥に行くと修練場なんかもある」


 ヴィクターさんは指差して教えてくれた。


「冒険者ギルドの記章は共通なんだが見たこともないか」


 どうやら記章を見ればそうだとわかるレベルのことだったようだ。

 ヴィクターさんはギルドを指していた手を正面に向けて改まったように言う。


「で、あの北門の先がダンジョンへの出入りを管理する砦ってわけだ」


 辺りにはもう、武装した冒険者たちの姿ばかりになっていた。

隔日更新

次回:ペンが元気です

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