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それぞれの結末と、始まる物語3

(ゲームクリアの後はどういう感じになるかと思ったけど、何も変わらないのね)


 あれから私達は取りに行った素材を、倉庫に置きに戻っていた。

 箱の中に並ぶこれらの素材も、もうゲームの知識にはない新しいものだ。

 けれどその事実に恐れはなく、代わりに私の胸は世界の広がりを感じて弾んでいる。


(倉庫の様子も随分と変わったしね)


 竜に破壊された箇所をようやく復旧させ、ついでに模様替えと言うか足りなかったものを追加していく。

 その作業が一段落した倉庫は、最初に入った時とは随分様変わりしていた。


(けど、カーレクティオン様は自分のベッドを結局買わなかったのよね。使わないって言って)


 錬金術師なのに物を整理する概念がないカーレクティオン様は、物置化するのが目に見えてるからという理由で未だにソファで適当に寝ている。

 それでも作業が終わった瞬間、床に倒れて寝る事がなくなっただけ良心は少し痛まなくなった。

 本人は寝るならどこでも一緒だとは言うが、今までは自分のせいで床に寝かせている状態である事に代わりなかったから。


「あの、オルガネーゼさん。ちょっと今いいですか」


 そしてそんな事を考えていると、扉の外から声が聞こえた。


「はーい、大丈夫ですよ」


 礼儀正しく、招かれるまで扉を開けなかった青年を倉庫の中に入れる。

 他人にあまり慣れていない様子から、恐らく最近入ってきた新人の行儀見習い辺りだろう。

 そして彼の腕には、いくつかの見覚えのがない素材が抱えられていた。


「あの、この素材の事を聞きたいんです。オルガネーゼさんなら分かると聞いたので」

「あぁ、それであれば」


 机の上にそれらを置いて、特徴を紙に書いていく。

 彼が持ってきていた物もゲームの中には出てこなかったが、今までの経験からどのようなものかは察しがついていた。


「これでいいですか? とりあえず危険なものはありませんよ」

「ありがとうございます! 助かりました!」

「何かあったらまた来てくださいね」


 渡した紙を確認した少年は満足がいったのだろう、にこりと笑って倉庫から退出する。

 するとその一連の流れを見ていたカーレクティオン様が、今度は私に視線を移した。


「お前も変わったな」

「え、どこがですか」


 カーレクティオン様の突然の言葉に、驚いて聞き返してしまう。

 だって私はいつもどおり素材を見分けていただけだ、何も変わった事はしていない。

 だがカーレクティオン様は首を横に振って、否定する。


「他人に頼られるようになった、自信を持って一人で捌けるようになった。随分な進歩だろ」

「たし、かに」


 指摘されて、初めて気づく。

 確かに私は婚約者候補の時に、人から頼られるなんて事はなかった。

 王城の倉庫の時にも、行くか行かないか自体を他人任せにしようとしていたくらいだ。

 だってあの時は何もできなかったし、何もできないと思っていたから。


(でも、今は違う)


 聖女の様に世界を変えてしまうような力は、私にはない。

 けれど私も、少しづつ色々な事を変えていけている。

 ごく僅かな、世界にとってはさざめきにすらならないものだとしても。


 しかしそんな感慨も、カーレクティオン様の次の言葉で吹き飛んでしまった。


「俺の後ろ盾はもういらないか?」

「まさか!」


 想定外の言葉に、私は慌てて否定する。

 ちょっと自信を持てただけで、そういう話ではない。

 もちろん彼も本気ではなく、「いなくなられたら困るのは俺の方だ」と笑っている。


「ずっとここにいてくれよ、オルガネーゼ」

「はい、もちろんです。カーレクティオン様」


 初めて契約した時とは違う、願うような声に頷く。

 そして私が頷いた理由も、前とは違う。


(彼の言葉に頷くのは、生きていく為に必要だというのも確かにある)


 それは初めて契約した時と変わらない。

 隠すつもりもない。


(けれど違うのは、他の場所ではもうダメだから)


 彼がいる、この場所がいいから。


「私はずっとこの世界で、あなたがいるこの場所で生きていきます」


 もう誰も知らない新しい物語を、ここから始めていく。

あとがき:

これにて「異世界転生させられたあげく婚約破棄されたので、倉庫で生きていきます!~雇い主はクズ錬金術王子~」本編完結となります。

ここまでお付き合いくださいました皆様に、心より御礼申し上げます。


個人的には初の十万字突破作品になりますので、無事に書き上がってほっとしているのが正直な所です。

次の作品はいくつか手をつけているので、完成次第投稿していきます。

もし見かけた際には、また読んでいただけると励みになります。


最後にこの作品を気に入って頂けたら、評価などをして頂けるとありがたいです。


2022/5/18

新作公開しました。

題名は「召喚令嬢インフェリカは、理想の騎士を召喚したかった」です。

重めの異世界恋愛もの(相変わらず微甘)ですが、

ご興味を持っていただけましたら、是非ともお読みいただけますと幸いです。

(たぶん作者名クリックで飛ぶのが、一番簡単です)


---

以下、登場人物紹介という名のおまけ


・オルガネーゼ

語源は整理する等の意味を持つ「organize」を崩したものから。

異世界転生したと思ったら親のコネで王子の婚約者になり、

聖女に嵌められて倉庫番になった人。

前世のゲーム知識があるのでそれを使い

倉庫番として楽に生きようとしたら、

倉庫で寝てた元王子カーレクティオンに捕まって雇われた。

外見は地味で、性格はあまり感情が表に出ない。

言動も硬いが、信じられる人間に対しては尽くすタイプ。

外見詳細:

黒髪を束ねて後頭部で丸めている

スレンダーで女性にしては背が高い

メイド服を着てめがねを掛けている



・カーレクティオン

語源は「収集」の意味を持つ「collection」を崩したものから。

第一王子だったが役割を放棄して気ままに錬金術をしながら

その日暮らしで生きているオルガネーゼの雇い主。

外見は非常に丹精だが、それを利用して

女性を誑かしたりしている。

この世界の錬金術が実は未発達なこともあって

錬金術の腕はうまいとかいう前に非常に雑。

だが経験はそれなりにあるので

条件をクリアするという点においてはそれなりに強い。

外見詳細:

赤髪を一つに縛っている、背は高く自分で動くので割と筋肉質、

貴族服だが分厚い編み上げブーツを履いていたり

腕を捲くったりと着崩している。



・フィーカ

語源は「偽物」の意味を持つ「fake」を崩したものから。

神託を受け取り、災厄を回避させる予言の聖女。

性格は高慢であるが、顔と体が魅力的。

権力的には王家に並ぶ。

外見詳細:

茶髪の髪を腰あたりで揺らしている。

コケティッシュで背が低い。

聖女らしい白い法衣を着ている。

↓↓↓

主人公と同じ、異世界転生した少女。

ゲームはクリアしているため、その記憶を用いて

予言の聖女として成り上がった。

自己顕示欲が強く、ゲームの主人公であるオリディが

活躍しないように攻略対象を潰していた。

そして最後にフルフェルトに竜を退治させることで

「名声のある男の婚約者」として幸せに生きようとしていたが、

肝心の王子は土壇場で連れ去られてしまい

見せ場もオルガネーゼやカーレクティオンに取られてしまう。

最終的に聖女としての名声も剥奪された。


・フルフェルト

語源は「操り人形」の意味を持つ「puppet」を崩したものから。

カーレクティオンのような野性味はなく、柔和な容貌と性格を持つ。

序盤はフィーカの言いなりだったため、

彼女の言葉に従い、オルガネーゼを追放した。

外見詳細:

金色のふんわりとした髪を持っている

背は低く華奢で女性らしい、貴族服はきちんと着込んでいる

↓↓↓

実はオルガネーゼもフィーカも愛してはいない。

彼が執着するのは劣等感を抱く原因の兄であり、

フィーカを婚約者にしたのも、オルガネーゼを追放したのも

自分の地位を上げて兄に勝てるようにするためだった。

だがそれは叶わず、カーレクティオンは竜殺しを行って

「絶対に勝てない」という傷を負わされた。

最終的にはカーレクティオンと和解した。


・オリディ

語源は「本来」の意味を持つ「original」を崩したものから。

まともにゲームが始まっていれば、主人公だった少女。

各所からアイテムを調達して攻略対象に渡し、

最終的に攻略対象に竜を殺させる役目を持っていた。

外見詳細:

黒髪を肩あたりで真っ直ぐに切っている。

背は小さいが力仕事で引き締まってる。

エプロンと町娘の服を着用している。

↓↓↓

作中最も可哀想な人物。

運命の相手である攻略対象は全員聖女に殺され、

それを知らないので抗う事も出来なかった。

ちなみに彼女が攻略対象を動かし竜を殺した場合、

攻略対象のみの力で戦う事になるので街の被害が大きくなる。

(ただしこれが本来の正規ルート)

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