Alius fabula Pars39 モナスカのエルフ3
ドーズは忙しかった。
手には採寸した資料を基に街中の店を飛び回っていた。
前日、塔を出てきたドーズに城の文官から、登城し国王に塔の内容を説明しろと命令されたが、無視して買い物をしているドーズだ。
無論文官から登城してこない苦情が入るが、居合わせたギルマスが言い放った。
「そんなに知りたいなら、知りたい奴がここまで来やがれ!」
ドーズはギルマスのトッシュに今回の件を説明していた。
「ギルマス、俺はエルフの二人からギルドとして依頼を受けたんだ。その依頼を放り出して城の奴らに先に説明しろなんて筋が通らないだろう」
「・・・それで依頼とは何だ?」
「二十人分の生活家財道具一式を見繕って届ける事だが、この街で手に入る最高級の物をお望みだ」
「何いい!!」
「更に支払いはギルドの認識票を通すから手数料が入る」
「ドーズ、認識票は確認したのか?」
「バッチリだギルマス。俺とアンタが一生働いても手にできない金額が入ってたぜ」
「おおおっ!!」
「それもなギルマス。二人共だ」
「おおおおおおっ!!ドーズ、王宮なんてどうでも良い。依頼が最優先だ!!最高の物を用意してやれ!!」
かくしてドーズはギルド公認の元、王宮を無視して買い物に飛び回っていた。
一方王宮では、噂が噂を呼びオットーとミルカの耳に、街の者が"エルフの門"を通った事を知る。
王族の日中は政務が有るし、オットーとミルカも学園に行くので唯一家族が会えるのは朝食の時だけだ。
「陛下、街の者がエルフの門を通っていると聞きましたが本当ですか?」
「私も聞きましたお父様」
「ふむ。お前たちの耳にも入ったか・・・」
「本当なのですね?」
「らしいな。その者を呼んでいるのだが、なかなか登城しないのだ」
「何故ですか?取り押さえて連れてこれば良いのに!」
「オットー。王族が乱暴な事をすると市井から見放されるぞ」
「しかし陛下・・・」
「それにだ。どうやらエルフの二人はその者に依頼を出したようでな、それが終われば来るだろう」
「・・・」
納得のいかないのはオットーだけではなくミルカも同じだった。
数日後、王宮の思惑とは別に動いた者達がいた。
安息日の朝、王城の門の前に立つエルフが二人居たのだ。
「王族のオットーとミルカに合いたいので取り次いでほしい」
城内は休みの者が多かったので少ない文官や兵士に従事者たちが上や下へと大騒ぎしていた。
「へ、陛下。大変で御座います!」
「なんだ朝から騒々しい」
「そ、それがエルフの兄弟が第二王子様と第二王女様に面会に来られております」
「何いいっ、あの二人がか!!」
「は、はい。どうしましょうか?」
「直ぐに通せ! 来客用の部屋に通すのだ!! 子供たちを用意させよ。大至急だ!!」
休日の朝はゆっくり惰眠を貪れる唯一の朝だったが、専属の世話係に起こされてご機嫌斜めなのはオットーとミルカだ。
「せっかくの休みなのにヨォ・・・」
「殿下にお客様がお見えになられてますが宜しいのですか?」
「もう、まだ眠いのに・・・」
「殿下、あの方が殿下に面会を求められてますが宜しいですか?」
「「えええええっ‼︎」」
「直ぐに用意するから待ってくれ」
「急いで用意しなきゃ。手伝って頂戴」
二度目の登城ではシニストラとデクストラの見方が違っていた。
城内の備品に目を配り、時折止まって観察していた。
待機室に入っても部屋の隅々まで見渡してカーテンや絵画など調度品に至るまで念入りに見ていた。
「ふむ。ここまでは想定通りだな」
「ええ、やはり謁見の間を見ないとダメね」
二人の目的は謁見の間にどの様な調度品や備品が置いてあるのか見学に来たのだ。
最初の謁見の際にはこのような事になるとは思っていなかったので、全く記憶に無かった二人なのだ。
そこに慌てて部屋に入ってくる二人の少年少女だ。
「シニストラ様ぁ!」
「デクストラ様ぁ!」
「「ようこそ、いらっしゃいました!!」」
「今日はどうされたのですか?」
「もしかして私達に会いに来ていらっしゃったとか・・・」
「ふむ、謁見の間を見学したくてな。二人に頼みたかったのだ」
「「謁見の間ぁ?」」
流石に王族と言えども謁見の間を案内する事は出来ず、父であり国王に確認する二人だ。
「お父様、デクストラ様が改めて城内を見学されたいそうです」
「父上、シニストラさんはどうして謁見の間を見学したいのでしょうか?」
子供達からの質問には、本人に確認すると言って突き返されるが、確認する場所は謁見の間なのだ。
オットーとミルカに案内されてやって来た謁見の間だ。
簡単な挨拶を交わすが、前回と同様に臣下の礼は取らずに接していたが国王から問いかけて来た。
「二人に聞きたい事が有る。あの塔は二人が作ったのか?」
「我らが作ったものでは無い」
「ではお前たち以外のエルフが居るのか?」
「居る」
「一体どの様にして作ったのだ?」
「秘密だ。例え知った所で人族には無意味だ」
「そうか・・・のぉ、あの塔に入る者が居ると聞いたが二人の許可が必要らしいな」
「当然だ。我らが信頼出来る者と判断した者を許可している」
「・・・余も入ってみたいのだが・・・いや、余でなくとも城勤めの者でも良いし、オットーにミルカならばどうだろう?」
「「・・・」」
しばし沈黙で考える二人は念話していたが、不安そうに見ていたオットーとミルカだ。
「良いだろう。その代わり、この謁見の間を良く見させて欲しい」
「「やったぁぁ!!」」
「おおっ、そうか。好きに見てくれ。この椅子に座っても構わんぞ」
「言っとくが、オットーとミルカの二人だけだ。他の者は入れんからな」
「解っておる。それから二人に確認したい事があるのだが、アルジと申す者とは会う事は可能かの?」
その瞬間、謁見の間に殺意に満たされた。
「その名をどこで知った?」
「い、いやギルドで調べさせたのだ。あの塔の所有者をな」
「それで?」
「二人と関係が有るのなら一度会ってみたいと思っただけだ」
「そうか・・・」
二人は殺意を消すと、オットーとミルカが震えていた。
「大丈夫よ二人共。もう大丈夫だから」
優しく二人の頭を撫でるシニストラだ。
「あの塔はギルドを介して正式に購入しており、税も五十年分先払いしてある。例え王族でも不振な行いをするのなら、ここが不毛の地になるまで我らが対処すると覚えて欲しい」
「余はお前たちと敵対する気は無いぞ。それだけは覚えてくれ」
「そうか。解った」
「じゃ、見学させていただくわ。二人はいつ来る?」
「今日行きます!!」
「おとう、陛下。暫く塔に滞在してきても宜しいでしょうか?」
「好きにしろお前たち」
「それは駄目だぞミルカ」
「ええっデクストラ様ぁ何故ですかぁ!?」
「二人共学園に通っているのであればどうするつもりだ?」
「それはぁ・・・」
「俺は塔から通う」
「駄目よオットー。御両親の許可が無いと」
通う気満々のオットーとミルカを宥めるシニストラ。
そのやりとりをずっと見ていた国王だ。
「陛・・・」
「許す」
「へっ?」
「二人共塔から学園に通う事を許可する」
「「やったぁぁぁぁぁっ!!」」
「但し、自分の事は全て自分で行い、お二人に迷惑を掛けない事と、三日に一度は顔を出す事。これを守れなかった場合は塔への出入りを禁じる事とする。お前たちがしっかりと出来ているかは二人に聞くからな」
「「はい!!」」
返事だけは一人前の二人だ。
「そんな訳で二人を宜しく頼む」
「解った。だがこちらの体制がまだ不十分なので、しばらく待って欲しい」
「ええっ、今日は行けないの?」
「そうだな。準備がでは次第迎えに来よう」
不満も有ったが、その日は我慢したオットーとミルカだ。
シニストラとデクストラは謁見の間を隅々まで見て回り王宮を後にした。
次に立ち寄ったのはギルドだ。
受付で問い合わせた二人だ。
「ドーズは居るか?」
「ドーズは只今外出しております」
「そうか。では戻ったら塔に来るように伝えてくれ」
「畏まりました」
二人が居たのはほんの束の間だったが、その間にギルド職員や冒険者は息を殺して二人を見ていたのだった。
(((素敵ィ)))
(((美人だぁ)))
周囲の注目を集める二人は意に反さない。




