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デスパラ=神として転生したオジサンは下界でパイ作り職人を目指す=  作者: 流転小石
第1章 異世界的紆余曲折
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第35話 表敬訪問2

謁見の間に入った印象は黒だった。

自城に他城の謁見の間も白を基調とした石を使った作りだが、魔王の城は黒い石を使った作りで装飾されていた。

外の光も遮蔽物を使い上手に調整されて、天井からの明かりも有るので薄暗いが良く見渡せる明るさを保ってある。

魔王の玉座の付近には重装備の兵士が数人立っており、入り口付近や窓周りには部屋で見た数倍の太さはある石柱が立っていて、その意味を知らない者からすれば兵士の少ない無防備な謁見の間だと勘違いするだろう。

だが、その意味を知るステラジアンは雰囲気だけで飲み込まれた。

玉座には魔を統べる者が座り傍らには数人の配下が立っている。


「魔王様、グラディオ国国王でありギルドの総帥、グラード・ステラジアン様でございます」

魔王の参謀の一人が紹介してくれた。

覚悟を決めたステラジアンは深呼吸して語り掛ける。

見知った国王同士は特に挨拶は無いし礼も取らない。

簡単な会釈程度だが興奮していたギルドの総帥は、それすら忘れていた。

「聖魔王殿、街や城を拝見したが実に素晴らしい!! 素晴らし過ぎて自国も真似をしたほどだ」

「ようこそステラジアン殿。我が国に興味を持たれたか?」

「持つも何も、以前とは全く違う国に成っているではないか」

「以前にも来られた事が有ったと?」

「あ、いや聞いた話だ。俺はそれを鵜呑みにしていたが実際は違ったと言う訳だ。本当に驚かされたぞ」

同席している魔物や、警備している魔物も微笑んでいる。


「それほど喜んでくれるとは、こちらとしても嬉しい限りだ」

「ところで聖魔王、以前聞いていた魔導具を使ってゴーレムを警備に使うと・・・」

「目ざといな。見たいのか?」

「是非見せて欲しい」

魔王は微笑んで参謀の一人に合図した。

すると別の魔物が"何か"すると、壁面に置かれていた一体の石柱が動き出した。

室内に配置してある石柱とは違い、大きく歪な"それ"は瞬時に形を変えて人型となった。


「おおおおっ。凄い、凄いぞこれは!!」

嬉しそうな魔物達だ。

「聖魔王殿、我が城も真似て良いか?」

「構わないが、やり方は教えんぞ」

「ああ、それは我らで考える。どうしても出来ない時は買い取る事は可能か?」

「まぁ、我らとギルドの仲だ。他国に使わない盟約であれば売っても良いぞ」

「おお、それはありがたい。自国に帰ったら早速検討させよう」

かなり興奮しているステラジアンだ。


「ゴーレムと言い、城と言い、街中もそうだが本当に凄いなこの国は。一体何が有ったのだ?」

「全て聖魔王様のおかげよ」

それまでは玉座の斜め後ろに控えていた聖魔女が嬉しそうに口を開いた。

「おおぉ、聖魔女殿」

べた褒めされると照れくさいし全てでは無いので口を挟む聖魔王だ。

「俺だけでは無いぞ。彼女の力も大きい」

「やはりそうですか!」

「ほんの少しね」

「やはりお二人は凄い!」


ステラジアンの”凄い”が連発するので全ての魔物が良い気分になっていた。


「まぁ堅苦しい挨拶はこれまでだ。場所を移そう」

他国の国王との対話は謁見の間など使わない。

しかし新たに生まれ変わった魔王城を見せびらかしたいのは魔王だけではなく、城勤めの魔物全てが他国の王の反応を知りたかったのだ。


本来ステラジアンはお世辞など口にしない男だが、恐れていた報告書とは全く違う内容なので本音の言葉が口から出ていたのだった。

その表情と言葉に同行する職員の表情も"作り物"ではなく、本心から出ているもの読み取った魔物達だ。


新設した来賓用の応接室に場所を移した魔王達だ。

「ところで聖魔王殿、こんな事は聞いて答えてくれなくても良いのだが、あのゴーレムはどの位強いのだ?」

「そうだなぁ、人族の戦士が百や二百いても大丈夫だろうな」

「それ程の強さか!? ・・・ふぅぅむ・・・」

ゴーレムの強さをどの程度にするか? もしくは同じ強さが可能なのか考えるステラジアンだ。

当の聖魔王も割高の性能で大見えを切ったようだ。

「どうしたステラジアン殿、この城に攻め入る事を考えていたのか?」

「はははっ、それは無いな。我が城に配置した場合の想定だ。一体いくら節約できるのか考えていたのだ」

「確かに国防を強化出来て歳費を削減出来るからな。ゴーレムは最高の兵士と言えよう」

「全くだ。ざっくりとウチの警備が半分になったとしても・・・大いに助かるからな」

「だが"アレ"を買うとなると高くなるぞ?」

「そんなものは初期投資だ。長い目で見れば安いものよ」

「流石はステラジアン様ね。統治者としても素晴らしい考えだわ」


聖魔女リオから誉め言葉を貰ったステラジアンだ。

「いやいやお二人に比べれば俺などギルドを纏めている”だけの者”よ」

「貴男がギルドの総帥で本当に良かったわ」

リオがべた褒めするのでギルド職員も内心は嬉しい。



終始警備のゴーレムの話しで盛り上がるが、ギルド職員から大会で召喚するゴーレムの資料を魔王側に渡した。

「一応帝国にも同じ資料を渡してある」

魔王達は予選で召喚するゴーレムの難易度を見た。

「「・・・」」

何か言いたそうな二人だった。

「どうだろうか?」

「・・・難易度、低くないか?」

「ああ、やっぱりか。実は魔人王殿にも同じ事を言われたのだが、一般的な人族の冒険者を基準として考えてあるからだ」

「これでは、そこそこの魔物は全て通過するぞ」

「本当か!? 参ったなぁ」

「聖魔王様、こちらで魔物達を厳選しては如何でしょうか?」

「それも有りか・・・」

「ステラジアン様、人族で強そうな者はどの程度居るのですか?」

「ギルドで登録している者であれば大体分かるが全て参加するとは限らないし、多国の者でギルドに登録してない者は把握して無いのが現状だ。なので本音を言えば解らないとしか言えん」

「でも一対一の勝負であれば我らの勝利は確実ですわ」

「それはどうだろう、以前の勇者の様に力を隠した者がまだ存在する可能性もあると思っているがな」

「「 !! 」」

驚く二人だ。


「・・・確かに勇者ほどの力を持つ者が居たら脅威だろうな」

「でも、そのような力を持つ者が早々いるかしら」

「まぁ、それこそ始まってみなければ解らん話だ」

「ではどうする?」

「どうするとは?」

「難易度を上げるのか、魔物を厳選して参加させるかだ」

「・・・うぅぅん。困ったなぁ」

「宜しいでしょうか?」

そこに割って入ったのがプリンだ。


「良いぞ、なんでも言ってみろ」

聖魔王の許可が下りた。

「今回の副なる目的は賭博で収益を上げる事です」

「「「ふむ」」」

「魔物も人族も大いに利用してもらう為には、同等の均衡した強さで対戦させた方が盛り上がります。決勝には人族が多い位が丁度良いのではないでしょうか?」

「プリンは魔物が勝つと思っているのか?」

「お言葉ながら、我が種族の猛者が出場すれば優勝は確実かと」

「・・・やはりかぁ」

「これが回復魔法や支援魔法であれば解りませんが、攻撃に特化するのであれば魔物の方は地力が違いますので・・・」

「だよなぁ、一対一だもんなぁ」

悲壮感を出すギルド職員たち。


「では魔物側としては確実に勝利するであろう四人に厳選して送り込もうではないか」

「良いのか?」

「問題無い。誰か!」

聖魔王はヒソヒソと参謀に告げた。

種族を問わず国の要職者以外に剣を使って勝利出来そうな者を"三人"集めよと指示を出した。


「ところでステラジアン殿は、かなり酒精を嗜むと聞いているが?」

「いやいや、一体どこからそのようなデマをお聞きなされたのか・・・」

「勿論、信頼できる筋からだよ。そこでだが、ギルドの皆さんにささやかな夕食を用意してあるので楽しんで欲しい」

「いや、そこまでしいて頂くと申し訳ない。我らはこれで戻るとしようか」

「待て、それは困るのだ。我らにも面子が有るからな。我らの盃を受け取って欲しいのだ。それにステラジアン殿を持て成す係も用意してある」

そこまで言われて帰ったとなれば後々わだかまりも残るし、持て成す係に邪な思いがよぎったステラジアンだ。



夕食までは城内を案内してもらい、聖魔王と聖魔女にステラジアンとプリンにギルド職員だけの食事会だ。

本来は出てくる料理を味わいながら楽しむ所だが、帝国での忠告が頭の隅にこびり付いていた。


"キレやすい聖魔女には言葉使いを気負付けろ"


細心の気配りをして食事も終盤となり終始和んで居た所に、厳つい魔物が現れた。

「聖魔王様、聖魔女様、遅くなり申し訳ありませんでした」

「大丈夫だ、メガモナス。俺たちはもう食べ終わったが何か作らせよう」

「は、ありがとうございます」


魔王国の中で真実を知る一人のメガモナスは、魔人王と酒を酌み交わしたと言うギルドの総帥と自分も同席したいと懇願していたのだ。

(ゲッ、この厳つい奴はたしか・・・)

ステラジアンは以前三ケ国会議で会った魔物の族長と再会した。

場所を隣の部屋に移し、ゆったりとしてソファに腰かける一同だ。

聖魔王は一人掛けのソファ。

ギルド職員は三人そろって腰かける。


「さぁステラジアン様はこちらへ」

魔王の対面の三人は座れるソファに腰かけた。

どうやら聖魔女は全員の飲み物を作っている。

すると職員が申し訳なさそうに手伝いだした。

「あら、良いのよ。貴方達は座って頂戴。ここは私が用意するから」

威圧気味に言われると抵抗出来ない職員だ。

全ての飲み物を用意して席に着くと扉を開けて入ってきたメガモナス。

「いやぁ旨い飯だったが掻っ込んできたぞ。さぁ飲もう!!」

そう言ってステラジアンの隣にどっしりと腰を下した。


(なんでコイツが隣に座るんだよ)

「さあさあ、皆さん。今日の日を祝して飲みましょう」

「「「おおおっ!!」」」

隣の男が理解できないが、反対に座った聖魔女にも驚いたステラジアンだ。

(ヤバイ、聖魔女が酌をするのかぁ・・・余計な事を言うなよ俺!!)


「まぁ良い飲みっぷりです事。もう一杯御作りしますね」

「貴様、魔人王と飲み明かしたそうだな」

メガモナスの質問に驚く。

「ああ、そうだが、貴男はたしか・・・


「メガモナスだ。我も魔人王とも飲み明かした間柄だ」

「おお!! そうでしたか」

「陛下、メガモナス様は我らの種族の族長です」

プリンが失礼の無い様に素性を教えた。

「魔人王殿とはどこかの宴席で?」

「魔王様と例の街に行ったときにな。このような席に同席した訳だ」

「それで意気投合したと?」

「その通りだ」

「あらあら、お二人だけで楽しそうですねぇ。私も混ぜてくださいな」

聖魔女は前世の仕事モードだ。

気の抜けないステラジアンは背筋を伸ばし細心の注意を払いながら二人の魔物と対峙するのだった。


ギルド職員は聖魔王が相手をして、ステラジアンは左右から波状攻撃を受けている。

酔いつぶれるのは時間の問題だった。


部屋には幾つもの空の酒樽が転がり、最後まで生き残っていたのは女性だったとか・・・定かでは無いが男たちは全滅した夜だった。

その日、威厳のある態度や言葉使いに疲れた聖魔王だった。

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