第33話 準備段階5
ゴーレムの検証を職員に丸投げしたステラジアンが向かったのは本国ではなくフォルティス帝国だった。
ステラジアンは帝国のギルド中央支店から王宮に打診して帝王との面会の申請を行った。
文官が帝王の執務室に報告を持ってきた。
「陛下、お戻りのところ恐縮ですがギルドから緊急案件の書状が届いております」
「見せてみろ」
"先ほどの件で確認したい事が有り早急にお会いしたい。ステラジアン"
時は夕刻に迫っており、バーネッティはお腹が空いていた。
「良いだろう。許可を出して夕食会の準備をしろ、グラディオ国の王が来る。それと大臣のロドコッカスも同席する様に伝えろ」
暫くした後、王宮ではステラジアンを交えて食事を楽しんでいた。
「それで、確認したいのは何の話しだ?」
「ふむ、その件だが、どうして急に魔王が説明する事になったのだ? それも今後も続くとはどういう事だ?」
「何か問題でも有るのか?」
「なっ、相手は魔王だぞ!」
「だから? 怖いのか?」
「馬鹿なっ・・・別に怖くは無い・・・しかしだな」
クスクスクスッ
「ステラジアンよ。ギルドの総帥が魔王との話し合いが怖いと女性が笑っておるぞ」
「なっ、ロドコッカス殿、違うんだ。相手は魔王だ。大人しくしていても内面はどんな卑劣な事を考えているかも知れないんだぞ。魅了や精神汚染の魔法を使われたら手も足も出ん」
クスクスクスッ
笑いをこらえるロドコッカスに、呆れてため息の出るバーネッティだ。
「貴様はワシが魅了されているとでも言いたいのか?」
「いや、そうじゃないんだ。魔王だぞ。解っているのか!」
「アーハハハハハハッ、ヒィィ! 可笑しいぃぃぃぃ!」
我慢していた笑いが爆発したロドコッカスだった。
それを見たステラジアンは呆けていると同時に臆病者だと笑われているのだと思った。
元魔王に向かって詰め寄る真剣なステラジアンが可笑しくてしょうがなかったロドコッカスだ。
その事を理解するバーネッティは哀れむ眼差しを向けていた。
「ステラジアンよ、何故魔王を避ける。相手は共同作業に同意しているのだぞ。我が国はまだ早いがお前の国ならば同盟も可能だと思うぞ」
「馬鹿な、魔王が同盟など結ぶ訳がない。それに何故帝国は出来ないのだ?」
「出来ないのではない。まだ早いと言っている」
「どうしてだ?」
「先の人魔戦争は帝国の仕掛けたものだが、死者は両国に大勢いるのでな。直ぐの同盟は両国に軋轢を生むからな」
「では質問を変えよう。以前から気になっていたが、何故お前たちは魔王と仲良くしているのだ」
「まず第一に帝国も、魔王国も戦争をしていたのはどちらも先代だ」
「やはり噂は本当だったのか。帝国は知っていたが魔王もとはな」
「そしてワシら二人と魔王に側近のリオは同じ師に学んだのだ」
「なんだとおぉぉぉぉぉ!!」
ディバルの考えた設定を予定通り説明するバーネッティ。
「だからアヤツの事は理解しておるし、ワシ等の事も信用してもらっとる」
「・・・」
腕組みして熟考するステラジアンだ。
「だからお前が懸念するような事はしないと思うぞ」
そこにゾフィが助言する。
「いつもこちらの城に来られるので、たまには魔王城に行かれたら宜しいのではないでしょうか?」
「何ぃぃぃぃっ!! 冗談はやめて欲しいぞロドコッカス殿」
「いや冗談ではなくワシもその方が魔王の信用を得られると思うぞ」
「・・・しかしだなぁ」
駄々を捏ねる子供に見えたバーネッティは立ち上がりステラジアンに詰め寄った。
「まぁ飲めステラジアンよ」
そう言って酒を注ぐ元魔王だ。
酒を酌み交わす相手が元魔王だとは露知らず、現魔王を内心恐れているステラジアンが可愛く見えていたゾフィだった。
次第に酒量も多くなり、食膳は下げられて酒の肴が多くなってステラジアンの前には帝王と大臣が交互に酌をしてくれていた。
ステラジアンも来た甲斐が有り、帝王と魔王のつながりを確認でき意図的に融和を求めているのではないかと錯覚し始めていた。
「ところでステラジアンよ、魔王城へ行くならば注意する事が有る」
今までの気持ちよかった酒精が吹き飛んだ。
「ど、どういうことだ?」
「リオには細心の配慮をして対話せよ」
「そ、それは一体・・・」
「言葉のままだ。あとは考えろ」
「そこまで言って何故教えてくれん、頼む教えてくれ」
帝王は口を噤んだ。
「ロドコッカス殿ぉ、お願いだぁ」
酔った勢いか情けないステラジアンだったので、ため息をついて答える大臣だ。
「リオはキレやすいのよ」
「なにっ・・・」
「だから言葉使いには細心の注意を払ってね」
「いや、そんな風には見えなかったぞ」
「それはワシ等もいるし、魔王の存在が大きい」
「では魔王よりもリオ殿の方が恐ろしいと?」
「・・・命の保証はせん」
「なっ、それほどまで短気なのか!?」
「短気と言うか言葉使いね。特に魔王様に対して」
「ありがとう。肝に銘じておく」
「まぁ魔王は寛大だがその分リオが厳しいな」
「そうか、魔王よりも側近の対応・・・いやあの二人に対しての言葉使いか・・・」
「では、いつ行くのだ?」
「早い方が良いわね」
「早急に決めよ。ワシ等からも連絡しておこう」
「待ってくれ、だれも行くとは言って無いぞ」
「こういうのは成せば成るのよ」
「ふむ、その通りだ」
「ちがぁう、心の準備をさせろぉぉ!」
まるで二人が一国の王をからかっている様だった。
「ステラジアンよ、飲めっ」
「そうよ、グッとやってください。魔王の事は明日考えましょうよ」
二人に責められて大酒を飲み、宮殿に泊まる事となったステラジアンだ。
翌朝。
頭を抱えながら青ざめた表情で朝食の席に現れたステラジアンだ。
深酒を呑み二日酔いなのは経験済みだが、記憶にある魔王達の情報と魔王城に行かなければならなくなった状況に青ざめていた。
何故なら魔王国にもギルドが有り、グラディオ国からも数人派遣しており、自国の人間が当時の魔王に謁見した時の報告書が極秘に本国へ送られていたからだ。
通常の報告書の何倍も多い紙の量に目を通すと、恐ろしい情景が思い浮かぶのだっだ。
当時の担当者も恐怖の余り引退し、現在は当時から職員だった魔物が出世してギルマスになっている。
ギルマスは何度もグラディオ国に向かいギルドの教育を受けているので業務やギルドに対しての職務には忠実だ。
魔王国の中でギルドの職員は、人族の国の執政官や官職に近い。
戦う事は基本的に無く、斡旋が主で回復薬や毒消しなどを調合したりする仕事が多かった。
正に国が変わってもギルド職員の仕事内容は同じだが、魔物としては軟弱な職種に分類される。
とは言え、職員が居なければ依頼が回らないので、魔物の冒険者とは仲良くやっている職員たちだ。
「おはよう。よく眠れたか」
「・・・おはよう」
「その様子では気分は良くない様ね」
「お前の為に特別に用意した朝食だ。食べたら湯あみでもして来い」
ステラジアンが座ると出された料理はスープの様だった。
いわゆるオジヤだ。
前世を思い出し帝王が二日酔いの時に作らせる料理だ。
帝国で収穫する穀物を多めの水で炊いたものに塩をパラリと振っただけの物だ。
食欲も無いがスープならばと匙に掬い口へと運んだ。
「・・・!!」
その優しい味を体が欲していたのだと理解すると一気に平らげたステラジアンだった。
「旨いっ、こんな旨い朝飯は久しぶりだ」
「まぁ昨日あれだけ飲めばねぇ」
「全くだ。おかげでワシの秘蔵の酒が全部なくなってしまったわ」
「そうか、すまん・・・」
「気にするなステラジアンよ、いつか大臣と二人でお前の酒を全部飲み干しに行くからな」
「おおっ、いつでも構わないぞ。大歓迎だ」
ステラジアンは帝国と親交を深め、朝風呂に入ってから本国へ戻って行った。
本国に戻ると半分持ってきた魔導具の説明をしてゴーレムの性能を検討した。
クルシブルのギルドからも報告が入っており、二箇所で大会に使用するゴーレムを使った攻撃設定に着手する。
その結果・・・
予選一は木のゴーレムが一体(一段階)
予選二は木のゴーレムが二体(一段階)
予選三は木のゴーレムが三体(一段階)
予選四は木のゴーレムが二体(二段階)
予選五は木のゴーレムが三体(二段階)
予選六は木のゴーレムが一体(三段階)
予選七は木のゴーレムが二体(三段階)
予選八は木のゴーレムが三体(三段階)
予選九は砂のゴーレムが一体(一段階)
予選十は砂のゴーレムが二体(二段階)
全て所定の時間内に半壊以上の破壊で通過の判定が出る。
予選は本線出場者人数が決まり次第終了とした。
魔法が使える剣士が少ない場合を考慮し、初回は石のゴーレムの出番を見送ったが、もしもの場合を想定して石のゴーレムを使った予選まで設定する。
予選十一は砂のゴーレムが一体(三段階)
予選十二は石のゴーレムが一体(一段階)
予選十三は石のゴーレムが一体(二段階)
予選十四は石のゴーレムが一体(三段階)
予選十五は石のゴーレムが三体(一、二、三の混成)
予選十六は混成ゴーレムが三体(木、砂、石の二段階)
予選十七は混成ゴーレムが六体(木、砂、石の二段階)
予選十八は混成ゴーレムが六体(木、砂、石の三段階)
予選十九は混成ゴーレムが九体(木、砂、石の三段階)
予選二十は混成ゴーレムが十二体(木、砂、石の三段階)
職員たちも設定だけで、そこまで予選が混戦となる事は無いと思っていた。
どれだけの剣士が勝ち進めるのか?




