Alius fabula Pars33 モナスカの異変2
モナスカの城下町ルバーは大騒ぎだった。
昨日まで、そこには古い建物しか無かったのに、今朝は巨大な壁と塔が聳え立っているのだから。
壁の様な塀には城門の様な立派な出入口が有り、街の住人は門の前で色んな噂をしていた。
「ねぇ聞いた?東門の奥にあった場所に大きな塔が出来たんだって」
「聞いたよぉ〜、私も朝見てきたから」
「どうだったの?」
「すっごい大きかったよ、どうやって作ったのかホント不思議ぃ」
朝から受付の女性達は噂の塔で持ちきりだった。
「お喋りしてないで冒険者の対応しろ!」
「「ハーイ」」
若手を注意するのもドーズの仕事だ。
「ドーズさんは聞きましたか?」
「何の話だ?」
「今、街中で噂になってる塔の事ですよぉ。あの場所ってこの前ドーズさんが販売の仲介した物件ですよねー?」
騒がしいのは知っていたが、気にも止めていないドーズは若手の問いかけで初めて知る事になる。
「あの場所がどうしたんだ?」
「もう、一晩で大きな塔が出来て街中騒いでるの知らないのぉ?」
「そうなのか?ちょっと見てくるか」
旅のエルフが大金をポンと出して土地と税金を払った事に驚いていたドーズは、エルフ独特の魔法を使ったのであろうと勝手に結論付けていた。
そもそも塔は街中にも有り、せいぜい五階建ての物だ。
テクテクと歩き大通りを曲がると視界に入るモノが有った。
(ん?何だありゃ)
目的地の方角に見慣れない異様な形の大きな塔らしき建物が視界に入った。
歩いている途中、街の住民が小走りで追い越していくのが気になりドーズも歩く速度を早めた。
「でけぇ・・・」
それは想像以上に巨大な塔で、離れた場所からでもその高さが分かるほどだ。
そして塀と言うよりも巨大な壁に、これまた巨大な門がある。
門の前では役人や住民が大挙して押し寄せていた。
「ちょっと良いか、通してくれ」
住民を掻き分けて門の近くに辿り着き役人から事情を聞くドーズ。
「俺はギルド職員のドーズだ。これは一体何の騒ぎだ?」
「騒ぎも何も見ての通りだ。我々は中に入りたいのだが門が開かなくて困っているだけだ」
「呼び出しはしたのか?」
「門を叩こうか声を出そうが一切反応が無いからお手上げ状態なのさ。むしろギルドでどうにかならないか?」
「無茶言うなよ。アンタらが出来ないのに俺らが何出来るってんだ」
結局門は開かないままで、警備の兵士が門に立つ事となった。
ギルドに戻ったドーズはギルマスから呼び出された。
「何でしょう、ギルマス」
「塔は見たか?」
「はい、見てきました」
「昨日売ったよなぁ」
「えぇ」
「やはりエルフ独特の魔法としか考えられんな」
「俺も同じ意見です」
「あのエルフと連絡は取れるのか?」
「連絡を取る手段はありませんが、いずれギルドにも来るでしょうから待てば良くないですか?」
「それがなぁ、王宮からも問い合わせが来てるんだ」
「あー、それはギルドがあの土地の仲介した事は調べれば分かりますからねぇ」
「どうするべきか・・・」
「そのまま言えば良いと思いますよ。異国のエルフに売ったって」
「確かに事実だからな」
「問題は昨日の今日であの塔でしょう」
「それだ」
「我らは何も知らないで押し通せば良くないですか?事実知らない訳ですから」
「だよなぁ、はぁ面倒くせぇ」
ギルマスのトッシュは王宮の堅苦し礼儀作法や言い回しが大嫌いなのだ。
「これもギルマスの仕事ですよ、頑張って行ってきて下さい」
「ドーズ、変わってくれぇ」
「給料三倍で手を打ちますけど」
「チッ足元見やがって、仕方ない溜まってる仕事を終わらせて行ってくるか」
王宮に向かうのが嫌でダラダラと仕事をして、トッシュがギルドを出たのは夕方だった。
文官から大臣に伝わり王族へと説明が行われた。
「何いぃぃ!エルフだとぉ〜‼︎」
王族は宮廷に滞在している二人を連想した。
「まさかあの二人か?」
「陛下、それは御座いません。お二人は皇太子達が次々と相手をされて城からは外に出ておりません」
「では他にもエルフが居ると言うのか?」
「陛下、あの二人は何かの任務中と申しておりましたので、関係があるかも知れません」
「ふむ・・・聞いた方が早いな。食事の席で聞くか」
シニストラとデクストラは一日中四人の王族がまとわりつき、嫌気がさしていた。
シニストラには皇太子のエルステッドと第二王子のオットーがはべり、告白まがいな言動も見てとれた。
デクストラには第一王女のライラと第二王女のミルカがはべり、あからさまな色仕掛けで攻めるライラと口論になるミルカだった。
そんなシニストラとデクストラは過去に無い疲労感に襲われうんざりしていた所だった。
陰で兄弟達が言い争っている。
「だからぁ兄様には婚約者がいるでしょう、なのにシニストラさんを誘惑するのは止めて下さい!」
「子供は余計な事を言うな。それともお前、シニストラが好きなのか?」
言い当てられて恥ずかしくなるオットー。
「俺は別に・・・」
赤面して言葉に詰まるオットー。
そんな弟を微笑ましく思う兄も、自身の子供の頃に年上に憧れて恋心を抱いていた事を思い出す。
(やはり俺たちは兄弟だなぁ・・・こいつもいずれ失恋の経験をするのかぁ・・・)
一方の姉妹。
「姉様は婚約者が居るのにどうしてデクストラ様に色仕掛けみたいな事をするの?止めて!」
「あらあらミルカもそんな年頃になったのねぇ。でもこれは大人の問題よ。貴女の出る話じゃ無いの」
身体的にも精神的にも姉とは比べ物にならない程の子供だとは自覚しているが、好きな人に色気を出して誘惑されると腹立たしい少女だ。
「駄目なものは駄目なのぉぉ!!」
「あらぁ・・・さてはミルカぁ、デクストラ様に恋しちゃったのかしらぁ?」
「そ、そんなんじゃ無いから!」
赤面して否定するが姉には全て見透かされていた。
(まだまだ子供だと思ってたけど・・・私もこのくらいの歳だったかなぁ・・・)
自らも同じく幼少の頃に護衛の騎士に思いを寄せていた切ない恋心を思い出した。
幼馴染である公爵家の跡取りに嫁入りが決まっているライラは、一時でもトキメク恋がしたかったのだ。
四人の兄弟の気持ちなど一切関知しないシニストラとデクストラは文官からの知らせで今日も王族達と夕食を共にする事を知る。
「実はお二人に尋ねたい事が有ってな。其方たち以外にもエルフの者がこの街に来ているのかね?」
「何故そのような事を聞く?」
「実はな・・・」
国王自ら街に現れた塔の場所を昨日エルフに売った事を告げて、街中大騒ぎになっている事を教えた。
「「・・・」」
「それで貴殿らの知り合いなのか聞いたわけだ」
「知っている」
「「「おおおおっ!!」」」
「やはり、そうであったか!」
「明日の朝、我らは塔に向かう予定だ」
「なんと、そうであったか」
「デクストラ殿、あの塔は一体どのようにして作られたのでしょうか?宜しければご教授賜りたいのですが・・・」
大臣の一人が質問した。
「我らが知る特別な方法を使い魔法で作られた物だ。人族に真似は出来ん」
「「「おおおおっ!!」」」
ザワザワ
「やはり特殊魔法か・・・」
皇太子たちはこの時点で塔の事を知ったのだった。
「時にデクストラ殿、塔を見学する事は可能ですかな?」
又しても大臣の一人だ。
「残念ですが我が種族以外は立ち入る事は出来ない仕組みになっています」
今度はシニストラが答えた。
「シニストラ殿、あの巨大な門はどの様にして開くのでしょうか?我が国の城門の仕組みとは全く違ってまして非常に興味が有り、ご教授願えますでしょうか?」
今度も違う大臣だ。
「あれは魔素を含む我ら独特の呪文で開く扉で、人族では発音出来ないから知っても無駄でしょう」
「「「おおおおっ!!」」」
ザワザワ
シニストラとデクストラは、日中にディバルからの念話で塔の事を知っていた。
魔法の呪文?




