第32話 準備段階4
鉄、銅、銀、金、白金の五段階がこの大陸におけるギルドの階級だ。
ギルドに登録すれば最低三年は鉄の認識票を持ち経験を積むのが冒険者だ。
所がギルドの認識票作成魔導具で初心者登録したにも関わらず、魔導具で登録確認すると更新指示が出ていた。
疑問に思いながらも魔導具の指示に従うギルド職員は驚愕する事となった。
何故、今登録作成したばかりの認識票が昇級したのかと、疑問よりも自分が誤作動させてしまったのではないかと不安がよぎる職員だ。
更に、預かった三枚の認識票に口座登録すると三枚とも更新表示があり、進めると又しても白金の認識票に変わっていたのだ。
それも三枚共である。
職員は怖くなり全てをギルドマスターの総帥でありグラディオ国、ステラジアン王に報告したのだった。
驚きの連続で、既にステラジアンの思考は麻痺状態だったが、再び魔人王から驚愕の提案が有った。
「まぁ、報酬の件はこれで大丈夫だな。金額の確認は定例会議で行えば良かろう。次に大会の内容だが今後は聖魔王からの説明になる」
「なっ!?」
驚くステラジアンを全員が睨むと委縮するギルドの総帥だ。
もう何度も会っている魔王の認識は有るが見た目も若い魔王の口は重く、同族であり人の王である魔人王こと帝国の帝王の方が安心して会話が出来ていたステラジアンだった。
これが"今後"魔王から説明すると言われ焦るギルドの総帥だ。
「それでは大会の基本的な試合方法を説明する」
アスラが説明したのはディバルから聞いた内容通りに話したが、途中でステラジアンから質問があった。
「待ってくれ、そのゴーレムはギルド職員が召喚するのか?」
「その為の魔導具であり、信頼できるギルドに売るのだ」
「・・・職員の練習が必要だ。それに予選となると何カ所の場所で行うのだ?」
「とりあえずは十カ所を予定しているから予備を含めて魔導具は二十本で良いだろう?」
「であれば二十人の確保と召喚の練習をさせねばならん。記念すべき開催日まではもう半年も無いのだからな」
街の体制作りの準備に奔走していた三か国の成果は、ほぼ完成していた。
既に街としての機能を果たしており、人口も予定通りに増えて人、物、金が回っていたのだ。
街の外壁には四つの門があり、人族専用と魔物専用に冒険者専用と種族を問わず通れる門が有る。
クルシブルで組織されたプライジーディオ警備隊が門兵として検問し、また街中では他国よりも多く目にする警備隊が巡回している。
街には人や魔物の出入りも多く、物見雄山的な人族も多い。
メインの道は門から入る大通りから繋がる闘技場の周りだ。
円形の道なので、知らないうちにグルグルと周回して出店に金を落とす仕組みになっている。
闘技場の外壁は沢山の小さなアーチ状になっており、どこからでも入る事が出来る。
アーチの支柱には番号が割り振られてあり、事前に座席を入手する事が出来る。
この大陸における闘技場は、二階の上位階級席以外の一般席は早い者順で誰でも好きな場所を確保できるがクルシブルの場合は違う。
ほぼ全ての席が事前に決められた座席券で決まっており、所定の座席売場で購入する仕組みだ。
八カ所に座席売場が設けられ、解りやすい城内地図と共に売り場も他種族対応できる仕組みになっている。
これは聖魔王達の提案だ。
闘技場は四段階になっており、近くで見られる場所ほど身分の高い者の階層で高額席だ。
テラスと区分される一番手前の席は国賓や貴族に司祭と行政官職の者しか購入する事が出来ない。
テラス席は背もたれ付きの座布団に肘置きと飲食用の小さな机も有り食事もセットになっている。
大理石で区切られた階段席は上級冒険者に騎士と一般役人や招待客に使われる席だ。
こちらの席も背もたれ付きの座布団に肘置きが付いている。
最上段は一番安く手に入る木製で区切られた場所は闘技場との距離は有るが臨場感を体感できるので一般席に観光客や一般人用の席だ。
また、最上階の西日の当たる一角は無料で計画している。
一般客の席に食べ物は何も付かないので、持参するか入り口で買うしかない。
そして最上段の上には十傑専用の施設が張り出していて、日除けの役割も果てしている。
場内には魔法陣から湧き出る水飲み場が多く設置され、同様に便所も支柱の数ほど多く設置されている。
だが小腹が空いた時の食べ物はそうはいかないので、商人と契約して専任の売り子や売り場で販売を許可する予定だ。
一階にはクッションの販売を予定しており尻に敷くものだ。
そして王族の観覧席は周囲と隔離して作ってある。
横並びの席からも壁で遮られており、防犯兼用で屋根も付いている。
三か国の密談は終了し、解散となったがステラジアンはギルドで二人のギルマスを呼び出していた。
クルシブルにはギルドが二箇所あり、人族用のギルドと魔物用のギルドだ。
区別するために西ギルドと東ギルドと呼称している。
種族に分けてはいるが職員が多いだけで他の種族にも対応できる。
西ギルドは人族の言語が多く、やり取りできる職員が多く出身地も他国からだ。
東ギルドは魔物の言語が多く、やり取りできる魔物の職員が多いのだ。
だが西ギルドでも共通魔物言語で対応できるクエルノ族や獣人の職員が数人いる。
東ギルドも大陸共通語では無いがフォルテス国、エジェスタス国、グラディオ国の職員が従事している。
ステラジアンは東西のギルマスに説明し魔導具を手渡した。
「・・・であるからして、この魔導具が如何に危険な物か認識出来ると思うが人選は二人に任せる。血液認証を登録させ厳重に保管する様に」
「「承知しました」」
「まずは練習してくれ。何もかもが初めての試みだ。俺も一旦国に戻りゴーレムを実際見てみる事にする」
翌日からギルド職員が予選会場となる場所でゴーレムの精査を行った。
魔導具で召喚できるゴーレムは三種類で強さは三段階だ。
まずは一体づつ召喚して戦う事にした。
東西のギルマスと職員が十人で検証が行われる。
問題なのは召喚ではなく強さだ。
三種類の強さと、三段階の強さを審査員として知らなければならないからだ。
事前に人は殺さないと知ってはいても一抹の不安は有り緊張の瞬間だ。
指名された二人が準備すると合図があった。
「では始めろ」
「ゴーレム召喚!!」
すると一体の木製のゴーレムが現れた。
「「「おおおおっ!!」」」
緊張の対戦者は金色の認識票を持つ元冒険者の職員だ。
職員には剣だけで倒せと条件が出ていた。
何故ならば第一回目の大会が剣技大会だからだ。
ほどなくして、ゴーレムが横たわっていた。
事前に半壊以上と知っていたので、両手両脚を切断して動かなくさせたのだ。
「良し、次の強さのゴーレムを召喚しろ」
間隔を開けずに二戦目だ。
一戦目のゴーレムと見た目はほとんど同じだが、頭部に線が二つあった。
戦いは一戦目よりも時間を掛けて勝利した。
「では最強の木製ゴーレムを召喚しろ」
そして三戦目だ。
頭部には三つの線が入っていた。
対戦者は一太刀入れただけで理解した。
(こいつ・・・強いぞ)
暫くすると対戦者が叫んだ。
「身体強化使うぞ!!」
今までの二体は自力で倒したが三体目は魔法で強化しなければ倒せないと判断したためだ。
対戦者の強さは職員が知っており、自ずとゴーレムの強さを理解する事となった。
木片が散らばる戦いの後に意見交換がされた。
「どうだったか?」
「思っていたほど対したことは無かったな。掴まれなければ比較的簡単に倒せるだろうが三体目は魔法無しではキツイな」
「良し、交替して次のゴーレムだ」
ギルドでは事前に対策してあった。
召喚できるゴーレムは三種類で、木、砂、石だ。
打撃系の武器は砂のゴーレムには効果が低い。
何かしらの魔法を絡めて倒す方法が良しとされるが、初めての大会で魔法を使えない者を考慮するならば剣のみで対処する者も居るだろと想定しての対戦だ。
予定では剣のみと、魔法を使っての対戦実権を行う。
「では始めろ!」
流石に剣は砂に効果がほとんど無く、対戦者は苦戦している。
重要なのは制限時間内に倒す場合、対戦時間を決める事だ。
ステラジアンからは予選がなるべく早く進むように短時間で決めてくれと指示が有ったのだが、目の前では砂のゴーレムに悪戦苦闘している職員が居た。
いくら切りつけても剣が素通りし剣戟が無意味になるからだ。
「魔法を使え!」
ギルマスの指示が有り、水の魔法を使う職員。
砂の体が固まり、ボロボロと崩れて行く姿を見て切りかかると呆気なく崩壊した。
「やはり魔法が使えないと厳しいか」
予定では様々な魔法を使って検証するはずだったが、石のゴーレムの召喚を行った。
対戦者は最初に戦った職員だ。
「では始めろ!」
召喚された石のゴーレムは、形は木のゴーレムと同じだが石で出来ている。
砂のゴーレムも同様だったが、崩れても元に戻る厄介な性能を持っていたのだ。
当然だがギルトでは想定済みの事だ。
そして石のゴーレムは防御力が高い。
こちらも通常の剣戟は通じないと判断しているが、冒険者の為にあらゆる攻撃を試してみる職員だ。
「魔法を使うぞ!」
今回も同様に身体強化をする職員。
すると簡単に倒された石のゴーレムだ。
ギルドの見解では石のゴーレムを使うのであれば、魔法を使える者でなければ決勝に進む事は困難だと判断した。
その後、砂と石のゴーレムに対して効果的な魔法攻撃を検証し、木のゴーレムを複数召喚して対戦した場合を想定した対戦を行う事となった。
職員に丸投げだ。




