第29話 準備期間
(ダメに決まってるだろ)
(ええぇっ、どうしてですかぁぁ!?)
(お前たちに見せた地図は初期の物だが、今俺が持っているのは完全版だから見せられない内容が載ってるわけだ。だから自分たちで作成しろ。良いな!!)
(・・・畏まりました)
聖魔王の安易な思い付きが否定されて、自分たちで地図を作成しろと命令が下った。
勿論、本当に自分たちで作る訳ではなく配下の者達に作らせるのだ。
その旨を三人に説明した。
「では、それぞれの管轄に分けて地図を作ろうではないか」
「そうですね、闘技場は種族に分かれた管轄で管理する予定ですから」
「そうだな。作成は専任の者を連れて来るしかないだろう」
「お二人さん、忘れてませんか? 種族で分ける予定だけど、どちらの作りも同じだって聞いてたでしょ?だから半分だけ調べれば良いのよ」
「あっ・・・」
「む・・・」
失念していた聖魔王と魔人王に聖魔女が助言した所に魔天女が質問する。
「ねぇ、ギルドは何処に作るのかしら? それに街にも秘密の会議室が必要じゃない?」
現場確認すると次々と意見が出て来た。
「ではギルドからも専任を寄こしてもらうか?」
「そうしましょう」
その旨をステラジアンに説明すると、至急自国に戻り専任の人材を送るそうだ。
全ての具体的な寸法を計測するだけで、かなりの日数を必要とされるが作るよりは早いので文句は言わない国王たちだ。
結局闘技場も街も、魔物と人が管理する管轄は左右対称の同じ作りなので、共同で現場採寸する事となる。
唯一違うのは闘技場の最上階だろう。
フォルティス帝国とケレプスクルム魔王国にグラディオ国から大勢の者達が訪れる事となった。
フォルティス帝国とケレプスクルム魔王国は先発部隊として宿泊施設や食堂を設置して準備に取り掛かり、グラディオ国からはギルド職員たちが訪れて、ギルドの支店を作る準備に取り掛かっていた。
まずは、壁門兵と仕事の斡旋をする為にギルドの場所と食事に寝床が第一である。
出来立てホヤホヤのギルドからの依頼は一般的な討伐は無く住居家具製作関係ばかりだ。
三か国のギルドも要請を受けて依頼が出回っている。
建物は既に有るので家具や内装や不法侵入を防ぐ為に出入口を封鎖したり、出店や引越しを手伝う者達だ。
聖魔王と魔人王が共同で不動産屋的な店も出し、全ての街の住人を管理する為に用意して準備は万端に整えていった。
三十日ほどで四割りの寸法を把握し、街づくりの会議が始まるが、既に壁門の外には小さな集落が出来ていた。
誰が、どこから嗅ぎつけたのか、料理人や雑貨屋に商人風や冒険者らしき者達が集まっていたのだ。
その壁門の中に何が有るのかは分からないが、誰も知らない”存在”に”商人達の感”が冴えわたっているのだろう。
(((塀の向こうから金の匂いがプンプンしてくるぜぇ)))
(((あの中には絶対何かが有るに違いない)))
(((ギルドの職員が出入りしている所を見た奴がいるから新しい街だろう)))
そんな噂が噂を呼び少しずつ人が集まっていった。
「大分塀の外が騒がしくなってきたようだな」
「どこから聞きつけたのか分からんがな」
「それより受け入れ準備は進んでいるのか?」
「予定通り第一段階の準備は進んでいる」
三カ国の王たちは準備に余念は無かった。
予定は四段階あり、第一段階は人族で商業の従事者と家族の受け入れだ。
第二段階は魔物で商業の従事者と家族の受け入れだ。
第三段階は魔物の一般人と冒険者で移住する者だ。
第四段階は人族の一般人と冒険者で移住する者だ。
優先するのはフォルティス帝国とケレプスクルム魔王国にグラディオ国の者たちで、四回に分けての移住だが街の住居は四割を満たせば良いほうだろうと全員が考えていた。
第四段階が終われば他国からの希望者を受け入れる予定だ。
地域も区別してある。
闘技場を中心として魔物と人族が管轄を分けるのだが往来は可能だ。
闘技場に併設されたギルドも魔物側と人族側に二箇所あり、飲食地区、商業地区、生活住居地区、立入禁止地区と外側に円環で広がっている。
例外は貴族地区と立入禁止地区だ。
貴族地区は十傑用で、立入禁止地区は人口が増えた段階で開放する予定の地区だが、しばらくは犯罪者を拘留する場所として使う予定だ。
人材は沢山必要で特に警備兵だ。
これには当初から問題視されていたが三カ国から集められた者たちで構成された組織が作られる事となった。
更に三カ国の人材を一人ずつ起用して三人で一組となり巡回警備させることとなる。
忠誠心の強い者たちで構成された組織の名はプライジーディオという。
ある者は自国に。
ある者は組織に。
またある者は新たな街で貢献したい自らの自尊心に対して強い意思で忠誠を持っていた。
同じ制服を着用し、同じ理念と理想の元に和を持って種族の問題に取り組む組織である。
組織の基準は、物事の善悪ではない。
この街、クルシブルに必要か不必要かである。
もっとも理性ある生物としての尊厳を遵守した上での考えだ。
また、手強そうな者に対して力の無い隊員でも力を行使できる魔導具が支給される。
両手足が麻痺して動かなくなる魔法を付与された魔導具だ。
個体から小規模範囲まで対象の魔法は【パララ】と言い、短時間の効果だが鎮圧拘束するには十分で、悪用されない為に血液認証が必要となっていて、魔導具を持っていればパララの効果を無効化する機能も付与されている。
この魔導具は聖魔王と魔人王からの供給だったがステラジアンは驚愕する事となる。
「凄い、この魔導具があればいままで手こずっていた糞野郎共を簡単に捕まえることができるぜ。是非我が国にも導入したいのだが良いか?」
「それは構わんが金は払ってもらうぞ」
「勿論だとも。それで、一体いくらだ?」
「まだ決めてないから後日でよいか?」
「ふむ、この魔導具は大量購入になるはずだ。今後の信頼関係もあるので出来る限りの値引きを要望する」
「良かろう。善処しよう」
(まぁアルジ様に頂いた物だからなぁ。確認取らなきゃ。ショウゴさんもそのつもりだろうし)
ステラジアンと魔人王のやり取りを聞いてた聖魔王だった。
かくて三カ国の準備は進み、初めての会議から一年が過ぎていった。
プライジーディオ警備隊専用魔導具【パララ】
魔導具の名称と魔法名は同じで、両手足が麻痺して動かなくなる魔法だ。
対象範囲は個体から小規模範囲まで効果がある。




