第28話 異種族闘技場下街クルシブル
「どこだ、ここは!? 何も無いではないか!!」
三か国の要職者が転移して現れた場所は草原だった。
フォルティス帝国側から五人、ケレプスクルム魔王国からも五人、グラディオ国は国王兼ギルマスのグラード・ステラジアンと護衛の二人だ。
「全員こちらの方を見てくれ」
魔人王の指示で全員が一方向を見ていた。
(ウルサ様、お願いします)
(うむ)
聖魔王アスラが待機していたウルサに念話をした。
すると空間が歪むように見え、何も無い場所に忽然と城壁が現れた。
「な、何いぃぃぃ!!」
「ば、馬鹿な、有り得ん!!」
「信じられん!!」
「「「おおおおおっ!!」」」
それぞれが驚愕していたが、一部の四人は同じ驚き方をしていた。
「これは一体どういう事だ!!」
「説明しただろう、聞いてなかったのか? それともボケているのか?」
「違~う!! これほどの物をいつの間に、そしてどうやって隠していたのだ!!」
「あぁ、そこ。そんなの秘密に決まってるだろ」
「・・・」
ステラジアンはボケているわけではないが魔人王と聖魔王の掛け合いに対応出来ない真面目な男だ。
「ワシ等が何でも教えると思ったか? 甘いぞステラジアンよ」
「クッ、では入れるのだな」
「全員で行こうではないか」
(ウルサ様、ありがとうございます)
(うむ、また隠す時は念話しろ)
(はい)
一行は誰も居ない街の壁門に向かって行った。
近づくにつれ、その巨大さが体感できたのだ。
当初は闘技場の周りに街を作るだけだったが、ディバルの要望で街の周りに修練場兼、予選場所を十カ所作り、安易に見られない様に壁で囲んだのだ。
その結果、当初の予定よりも大きめの街となり、主要都市程度の規模になっていた。
一行は壁門をくぐると更に広がる光景に息を呑んだ。
左右には低いが厚みのある塀で囲われた修練場兼、予選場所が見え、前方には大通りの先に巨大な闘技場の一角が見えていた。
「「「まさか、これほどとは!!」」」
(((まったくだ!!・・・)))
予選場所を通り過ぎると街並みが何列も並んでいた。
武器に防具や、宿屋、様々な商売が可能な街だ。
勿論住居としても使え、公衆便所も多い。
(信じられん。この建物の新しさ・・・まるで出来たばかりのようだ)
(この規模の街をいつの間に作ったのだ・・・)
それぞれが思考しながら辿り着いたのは闘技場の入り口だ。
「では入ろうか。」
闘技場全体を見渡すならば、戦う者の目線か観客目線のどちらかだ。
「やはり全体の大きさを見るなら最上階から見たいよね」
聖魔女リオの提案だが否定する者も居た。
「我らは決戦場から見てみよう」
自らも剣闘士のステラジアン達だ。
二班に分かれたが、先に驚いたのはステラジアン達だった。
「こっ、これは・・・これほどとは・・・」
言葉が詰まるほどの圧巻だった。
観客席は自国の”ソレ”よりも高く席が聳え立ち、全てが綺麗で全てが大きかった。
「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」
剣闘士としての血が高ぶったのか感極まりステラジアンが雄叫びを上げると、護衛の二人も追随した。
同じ頃、長い階段を登っていた一団だ。
最上階は十傑専用階とし、一部を国賓の部屋として予定している。
賓客用の席は二階と三階に多数用意し、部屋で全ての生活が出来るほどの設備を整えてあった。
階段が疲れたのか途中で場内に向かったリオとロドコッカスに付いて行く男達。
適当な貴賓室に入り、柵越しに眺めた。
「凄い・・・」
「圧巻ね」
「これでどの国の王族が来ても楽しんでくれるだろう」
「見て、最上階が全て貴賓室かしら」
「最上階は十傑専用階で一般人や王族の眷属も立ち入り禁止区域の予定だそうだ」
「ええぇぇ、私たちも入れないのぉ」
「それだけ特別待遇な訳だが、招待されれば良いのではないか?」
「なるほどねぇ」
「ねぇ、次は下から見てみない?}
ロドコッカスの意見で全員が決戦場に向かったと同時にステラジアンが階段を登り始めていた。
擦れ違いざまに意見を交わす一行だ。
「どうだったかステラジアン」
「素晴らしい闘技場だ。まさに圧巻としか言いようが無いぞ」
「ワシもそう思う。貴賓室からの眺めも素晴らしいぞ」
「そうか、是非見てこよう」
決戦場に立つ両国の責任者達。
「ここで死闘を繰り広げるのか・・・」
「死にはしないが良い試合が見れると良いな」
聖魔王が感傷に浸るが、魔人王が殺しは無いと再確認させた。
「これほどの闘技場、わが国の物より作りが良いですな」
「我も出てみるか・・・」
パルビルブラがうらやむほどの闘技場に、自らも参戦したくなったクエルノ族の新族長だ。
「馬鹿な事を言うな、族長は出場禁止を忘れたのか」
パルビルブラに注意されガックリするメガモナスだ。
「ねえ、この闘技場の周りを街が囲んでるんでしょう? 結構な規模よねぇ」
「まぁ、予定通り街の半分は王国側の領地で、もう半分は帝国側の領地だからさぁ、どんな店が出来るか楽しみよねぇ」
「私は久しぶりに帝国の料理が食べたいなぁ」
「私もぉ、王国の料理なんて久しく食べてないから料理屋さんが沢山出来れば良いのにぃ」
女子たちは食べ物が中心のようだ。
「そうなると商業的な出店の計画も進めないとダメね」
「それはお互いの国で進めるべきだわ」
「いつから人を入れるのかしら」
「そうよねぇ、聞きましょう」
そして行動が早い。
それぞれが自国の王に問いただすと、”二人とも聞いてない”だった。
(ではアルジ様に確認しなければ)
(今聞いちゃう?)
(頼む)
(えぇぇ私がぁ!?)
(言い出しっぺよ、アヤメちゃん)
ジッと魔人王を見つめるロドコッカス宮廷魔法大臣。
(仕方がない)
(流石陛下、部下思いよねぇ)
溜息をついて念話する魔人王。
(アルジ様、宜しいでしょうか?)
(どうしたオスコ)
(は、実は只今闘技場に来ていまして、素晴らしい出来栄えに皆感激していた所でございます)
(そうか、喜んでいるなら何よりだ)
(つきましては、街への出入りはいつから始めれば良いでしょうか?)
(任せる。お前たちの準備ができ次第、順次人を入れれば良いだろう)
(はは、仰せのままに)
(それまでは、隠すようにウルサに連絡しろ)
(畏まりました)
貴賓室に感動したステラジアンが降りて来るのを待って説明する魔人王だ。
「現段階では再度この闘技場は隠す事になるが、街の設備を整える為の準備に時間が必要だろう。ギルドも人員や設備に我らの国も街の整備に時間が掛かりそうだからな。半年も有れば十分か?」
全員がうなづいた。
「では取り掛かる準備をする為の準備には十日程で良いか?」
「魔人王よ、我らは転移魔法陣で帝国のギルドに移動できるが、帝国からここまではどのくらい掛かるのだ?」
帝国の中央支部にグラディオ国との転移場が設置してあるが、使用には一日に一度の転移条件などが有り帝国の許可を得ている。
「歩けば二十日、馬車で三日と言う所か」
「なるほど。それなりに離れているのだな」
大体の位置を把握したステラジアンだ。
「時に街の地図は無いのでしょうか?」
パルビルブラからの質問だ。
「すっかり忘れてた。用意しとくよ」
事前に”テトラ”で大まかな地図を見ていた聖魔王達は、ディバルに聞けば出て来るものと思い込んでいた。
楽して地図を入手できるのか?




