第27話 タクティクス
既に会議室では三か国の顔合わせと挨拶が終わり、クルシブルの内容を理解した国王兼ギルマスであるグラード・ステラジアンがギルド側としての意見を説明していた。
「”クルシブルの種典”を読んだ限り、ギルドとしては申し分の無い内容だ。これだけの情報を集約されたことに感謝しかない」
魔物の生態が解れば、冒険者たちに注意喚起できるので死者を出す事も少なくなるからだ。
「我らギルドとしては是非参加したいが、要望の案件に対しての報酬が低いと判断している。三等分の利益は理解したが我らギルドの人員関与が多岐に渡っている。新たな人員導入が多いので最低でも四割を貰わんと運営できん」
ステラジアンの説明では、ギルドの支店、予選本戦における審査員の配置、賭博専用の人員、
闘技場内と隣接する街の警備と、依頼内容が多岐に渡るからだ。
また、賭博券は現段階で闘技場だけの販売を予定しているが、次年度からは各国のギルドでも本戦の賭博券を販売予定だ。
「ステラジアンの言わんとする事も解らんではない。しかし、我らも本当の意味で解ん事が有る」
「あくまでも、説明したこれらの数字は予測だからだ。実際に始まって結果が出ないと解らないだろ?」
「と言う事は、これらよりも低くなる可能性も有ると言う訳だな」
「否定はせん。お前が我らの試算をどのように評価するかで、ワシ等もお前を評価しよう」
「・・・」
「ギルドがどれかの項目を放棄するなら我らが取り仕切るが良いのだな?」
「今回の取り決めで決定すると後から変えれないぞ」
魔人王と聖魔王がステラジアンを追い立てる。
(クソッ、この時点で博打じゃねぇか!!)
「ま、待て。ギルドの支店は当然だが、予選本戦における審査員の配置はギルドの職員でなくとも良くないか?」
「俺たちはそうは考えていない。最初が肝心だが、慣れてくると必ず不正が出てくるものだ。それを取り締まる事も組織としてギルドが采配した方が監視もしやすいと考えている」
「まぁ、逆にワシらの審査員では偏った主観で見られがちだからな。ギルドの職員が一番不正と不満が出ないと判断した訳だ」
「・・・」
(クソッ、こいつらの言ってる事は正論だ・・・)
「しかし賭博専用の人員はどれだけ必要なのだ?」
「賭博券自体はギルドの支店で販売するが、その券もギルド内で作ってもらう」
「それでは更に人員が必要だ」
「決められた物を印刷して切るだけだから。後は魔法を付与してもらう」
「魔法を? 何故だ」
「偽装防止だ」
(なるほど・・・そこまで考えていたか)
「そして重要な倍率は、この三か国と十傑で決める予定だ」
「倍率か・・・」
「強くて勝ちそうな者は低い倍率で、勝てそうにない者には高い倍率を与える」
「まぁ予選を見ていれば、おおよその強さは解るだろう」
「予定している券で配当が高い順は、クルシブル十傑と五傑に三傑、自治王獲得者、職種別の英傑と次席に三席を足した三連券、それぞれを当てる券だが次年度からは予選の賭博券も準備する方向だ」
「いやいやいや、券を作るだけでも多すぎるぞ」
「ステラジアンよ、ワシ等の危惧する所はそこでは無い」
「と言うと?」
「それらを保管して管理できる場所にギルドが相応しいと思っている」
「・・・」
(確かに・・・不正や盗難に金の管理か・・・)
「まぁギルドが断るのならばワシらが二国間で利益を分けるだけだがな」
「・・・」
「どうした。顔色が悪いぞ」
「この件は少し待って欲しい」
「そうか。ではもう無いな」
「まだあるぞ。闘技場内と隣接する街の警備だがギルドでは出来ない。我らは冒険者たちを支援する組合だ。警備は専任の兵士や衛兵が妥当だろう」
これだけはギルドとして納得できるものではなかった。
「勿論だとも。だから依頼するのだ、グラディオ国王よ」
「何いっ」
「これはギルドに対する依頼では無く、傭兵の依頼だ。しかも初期は二国間での依頼だが、次年度からは十傑からの依頼を予定しておる」
(そうきたか・・・この帝王、相当頭が切れる奴だ。いや二国間で考えたのか)
「解った。だが、全ての魔物を把握している者は流石に居ないので、魔物の警備、もしくは衛兵を要請する」
「解ってるさ。入国に関しては人族用と魔物用の出入口を作って魔物が魔物を検査する予定だ。その箇所に関してはこちら側が管理する」
「ふむ。だがもしも魔物が暴れたらどうするのだ?」
「衛兵では無いが鎮圧隊を十班作り配置する予定だ」
「だったら警備は要らなくないか?」
「もしもの場合だ。出ない方が良いだろう」
「もっとも予定だから今後変わる可能性も有るぞ」
「・・・」
「因みに問題を起こした者には軽い刑罰として、対象者は魔法付与されてクルシブルには一年間の出入り禁止処分となる」
魔法付与だが、”出禁一年”と頭上に光体表示されるのだ。
(全て出し尽くしての依頼か・・・しかし納得がいかん。ならば)
「概ね理解した。だが最後に闘技場はいつ完成するのだ。実際の現場を見ない限り夢物語ではないか」
「心配するな。既に完成しておる」
「どうせなら驚きも共有しようと思って俺たちもまだ見てない訳だ」
(馬鹿な! どちらも世代交代して数年だぞ。我らの国の闘技場でさえ何十年の歳月をかけて作り上げたものだ。一体どういう事だ)
「では、いつ見れるのだ!?」
「これから皆で見学しに行くのはどうだ、聖魔王よ」
「そうだね、俺たちも我慢してたからな、魔人王」
善は急げと、全員で転移する事となった。
場所は変わり、見渡す限り草原と遠くに森が広がる場所だ。
「どこだ、ここは!? 何も無いではないか!!」
駆け引きの結果は予定通りなのか。




