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デスパラ=神として転生したオジサンは下界でパイ作り職人を目指す=  作者: 流転小石
第1章 異世界的紆余曲折
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Alius fabula Pars26 帰路

ようやく念願の一人旅が出来るようになったディバルだが安易に喜んではいなかった。

自身の行動を監視している者が少なくとも二人は存在しているのだから。

一人は眷属だから問題無いが、もうひとりが厄介だ。

熟考した結果、対外的に”特定の”倫理的な事には間違いなくクレームが入る事を想定し、自らの心底と反する行動を百の嘘、もしくは千の嘘とし、千載一隅をモノにすべく行動する事にしたのだ。


(全ての欲を封印して善なる行動で信を得て、完璧な断絶空間を作り出せれば・・・やりたい放題だぜ・・・そうなると俺の直属の魔法開発者が必要だな。既存の研究者は誰かの息がかかっているし。向こうで数人ホムンクルスを作るか。知識は全て積み込ませて・・・研究場所はどうしよう。モナスカで作るかなぁ。よし一旦戻って準備するか・・・)

ディバルの欲望は深い闇の底に封印し、極秘の行動に出るのだった。


龍国に戻ったディバルのやるべき事は、自分専用の魔法開発者のホムンクルスを作る事。

そのホムンクルスに現在の龍国における魔導知識を詰め込んで下界で研究させる事を公表し疑われないようにする事。

そして表向きの研究と、本来の目的とする研究だ。


表向きの研究は、固定空間魔法”クウ”の多重発動が研究途中だがその研究を引き継ぐ事で、実際は断然空間魔法”ダンクウ”と”クウ”の同時発動、もしくは二つを一つにした新たな魔法の開発で、他所から訪れる事が出来ず、見る事も攻撃する事も不可能な場所を作り出す事が目的であった。


更には、怪しまれないようにスプレムスの相手をして会話をする事だ。

基本的に女性の精神はおしゃべりが好きらしいので、相槌相手だけだが”するとしない”では後の態度が大いに違うのだ。



ホムンクルスの手配を終わらせてスプレムスの居住空間へと転移して来たディバルだ。

扉を開けるとスプレムスが待ち構えていた。

「おかえりなさいませ」

「ただいま」

「ところで何がしたいのかしら?」

「ホムンクルスの事か?」

「ええ」

「俺が依頼した魔法が有るだろう、本来なら俺の管轄で研究するのが筋だからさ」

「でも下界に研究室を作るつもりなの?」

「新たに進化させるためには時として変わった行動に効果が生まれる事も有るだろう?」

「でもぉ・・・」

「俺が隠れて何かするとでも?」

スプレムスの瞳には疑いの疑念が有った。


「仮にお前にも秘密だとして・・・お前も俺に秘密にしている事が幾つも有るだろう?」

「それは・・・」

「大した問題じゃない・・・そう思うならば俺のやる事も同様だよ」

(大問題だわ・・・)

「それにアルブマたちだって下界で研究しているだろう」

「あれは、ちゃんと隔離してあるし・・・」

「大丈夫だ。それ以上言うならもう行くぞ」

「駄目よ」

そんな二人はやりとりを終えて奥の部屋に向かうのだった。

公言はしたし、後は”有耶無耶”にして逃げ切るつもりのディバルだった。






シニストラとデクストラたち一行は衛星都市アルカを出て十日余りで王都の管轄に辿り着いた。

途中の街や村での滞在時には、オットーとミルカにせがまれて剣と魔法の指導をする事となるが、引率者のジーメンスも参加して全員が指導を受ける事となった。

学生たちから余りにも要望が多かったのでオットーとミルカの意見を採用したジーメンスだ。

可能か不可能かは個人の努力次第だとし、シニストラとデクストラが手本を見せた。

ミルカを助けた時の魔法だが、この国では浮遊魔法、もしくは飛行魔法と認識されている魔法だった。

宙に浮き移動するデクストラを見て奇声を上げる生徒たち。


シニストラは剣に属性付与させる魔法だ。

オットーからは剣に火の属性を付与して灼熱の刃を要望されたのだが、熱に弱い魔物に対して有効な手段だ。

しかし、国内にはそのような魔物は極少数なので別の魔法付与を提案したシニストラだ。

「これは無属性だがそれなりに使える魔法だ」

そう言って、鞘に納めたままの剣に魔法を付与し、丸太に切りかかった。


「すっげぇぇぇ!! 丸太がスパッと切れたぁぁ!!」

「しかも鞘のままでですか!」

ジーメンスも驚きの結果だった。

「しかし・・・」

ジーメンスが否定する思考を即座に感じたシニストラだ。

「扱いには非常に危険だ。したがってこの魔法付与はジーメンス殿に伝授する事とし、学生たちにはジーメンス殿の判断で教えて欲しい」

「ええぇぇぇぇっ、私がですかぁ!?」


するとシニストラがジーメンスの両肩をがっしりと掴み顔を近づけてきた。

「ちょっ、ちょっと待ってください、子供たちの眼が・・・」

「何するんですかシニストラさんっ!! 俺にしてください!!」

嬉しそうなジーメンスをよそに猛烈な嫉妬で叫ぶオットー。


それは一瞬だった。

額と額を合わせると静電気が走り、ジーメンスの脳裏には”それ”があった。


「貴男はまだ駄目よ」

大人の内には入らなかったオットーだ。


一瞬、呆けてしまったジーメンスだが教え子の手前、慌てて平然を装うのだった。

「では早速、試してみます」

本来は剣技など無縁のジーメンスだが、生徒の剣を借り鞘のまま魔法を唱えて丸太に切りかかった。


「「「おおおっ!! すっげえぇぇぇぇっ!!」」」

先程と同様に綺麗に切れた丸太を見て騒ぐ生徒たち。

しかし、ジーメンスには一抹の不安が有った。

「あのぉシニストラさんのような魔法伝授は私には出来ないのですが・・・」

「大丈夫よ。脳裏に浮かぶ魔法陣や詠唱を普通に教えると使える様になるはずだから」

「本当ですか!? 良かったぁ」

「でも発動には魔素が必要だし、魔法を扱う要領が良くなきゃ駄目だからね」

「解りました。ただの剣士には出来ないと言う事か。少しでも魔法を使える者は練習在るのみですね」

ニッコリと微笑むシニストラに心を奪われた教員だった。



そんなやり取りをする中、一行は王都への道を戻りながら馬車の中では学生たちが真剣に浮遊魔法の練習をしていた。

ただ座っている時間も勿体ないとミルカが始めた事が切掛けで全員が魔法の練習を行うようになり、王都の城壁が見える頃には全員が座りながら宙に浮いていた。


デクストラによると浮く感覚に慣れる事が先決で、浮遊魔法の次に空中移動で次に速度や停止の魔法へ移り、最後に飛行魔法を覚えた方が良いとジーメンスに指導していた。


学生たちからは早く飛行魔法を覚えたいとせがまれ、空中移動に何の意味が有るのか分からないとデクストラに質問する生徒が居た。

「ならば実践してみようではないか」


一番上達の早いミルカが空中移動魔法を使い敵から逃げる事を想定して全ての生徒から逃げ切れば勝ち。

捕まると負けの簡単なものだった。


「では始め!!」

ジーメンスの号令で一斉にミルカを捕らえようとする生徒たち。

ミルカは先日のブバルスからの逃亡よりは楽だと安易に考えて空中移動で逃げ回った。

生徒たちが走る速度と同様だが振り切る事は出来ず、結局は魔素切れとなり包囲されてしまった。

「無理よ、こんなに大勢てるんだからぁぁ!!」

「しかし、短期間でここまでこなすとは大したものだ」

「本当ですかぁデクストラ様ぁ!?」

態度が豹変するミルカだった。


「次は我が逃げる役になろう。全員で捕まえてみるが良い」

「では皆さん準備は良いですかぁ。では始めてください!!」


一斉にデクストラに突進するが男子よりも女子の方が早かった。

「デクストラ様ぁ!!」

飛び掛かった女子があっけなく大地に落ちた。


離れていた場所から見ていたジーメンスには、平行移動するデクストラが見えていた。

「ええっ、あんなに素早い動きが出来るのですか!!」

それは後方の男子たちも目の当たりにした様だった。

それからは餓えた獣のように襲い掛かる女子たちを寄せ付けず、瞬時に移動するデクストラを観察して男子たちは真剣に移動魔法と速度強化に停止を覚えようと心に誓ったのだ。


(((デクストラさんの様に魔法を扱えればシニストラさんに抱きつけるぞぉぉ!!)))


行動の原動力は、若い男女共に微笑ましい欲望だった。


ようやく王都か。


クウ=固定空間。研究中。

空間魔法の一種で空間結界と同意の高度な魔法。

任意の空間を隔離する魔法で、その空間は目に見えない圧力で閉ざされて、生物は活動出来るが転移魔法でも外に出られなくなる。

外部からの接触も出来ない。

無機物や敵対する生命体を空間座標に固定できる。

複数固定させる事を可能にするため研究中である。


ダンクウ=断然空間。完成済。

空間魔法の一種で高度な魔法。

何も無い透明な幕だが、世界の(ことわり)(いっ)した防御力を持つ。

全ての攻撃は薄い幕に触れると亜空間へ飛ばされる。


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