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デスパラ=神として転生したオジサンは下界でパイ作り職人を目指す=  作者: 流転小石
第1章 異世界的紆余曲折
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第24話 仕込み

「じゃショーゴさんは”グラディオ”の国王に会ったことあるの?」

「いや、無い。報告書で知っただけだ」

「「「・・・」」」

三人は落胆した表情だった。


「そんな顔をするな。国王とはいえギルマスだ。正式な依頼で、何より大きな金が動くだろうし、”クルシブル”に支店を出せば永続的な利益に繋がるから必ず乗ってくるはずだ」

「そうよね、利害関係が有るもの・・・」

「いや・・・奴らだけで無く、参戦してくる国の者は密命を帯びているだろうな」

「それって・・・」

「何としても自治王に成れとな」

「やっぱり・・・」

四人の表情に戦慄が走る。


「でもさっき、あやめちゃんと話してたけど、お互いの国から要職者は出しちゃ駄目でしょ?」

「もっともだ。国防の要が居なくなると戦力低下が著しくなるからな。それは禁止にした方がよさそうだ」

「要職者以外で強い・・・冒険者?」

「軍の兵士とか?」

「「「・・・」」」

四人の脳裏にはそれぞれ思い描く者が浮かんでいたが、帝王と宮廷魔法大臣の脳裏には秘策があった。


「とにかく、一度国に戻って緊急会議を開こう」

「はい、”グラディオ”への依頼と両国に対する規約作りですね」

「うむ。そこから始めないと、話が大きすぎるからな」

「ねぇ、こんな感じで、どこかで顔合わせが必要じゃ無いかしら?」

「確かに僕たちの話だけより相手国側の要職者が居た方が納得するし説得力も有るね」

「では帝国からは枢密院の者を数名連れてこよう」

「じゃ王国からは元老院の者を数名連れてきます」

「場所はどうする?」

「あっ、どうしよう。ここじゃダメだしぃ・・・」

四人が困っているとディバルが現れた。


「そんなに悩む事も無いだろう」

「「「アルジ様」」」

「簡単な会議室をクルシブルの近くに作ってやるから、そこに集まればいいだろう」

「ご配慮感謝致します」

「場所はあとで連絡するからお前たちのやる事を進めてくれ。それとオスコ、元老院と会えばお前たちの事はバレるぞ。覚悟を決めるか別の方法を考えろ。じゃな」

そう言って食堂を出て行ったディバル。


「なっ・・・」

「陛下・・・」

完全に失念していた元魔王と側近の魔女だった。

自分たちの容姿は角が無くなり髪の色が変わっただけで、名前はそのままで生活していたからだ。

「どうするショーゴさん」

「・・・元老院の参加者は指名しても良いか?」

「それは良いけど・・・ねぇハルちゃん」

「どなたを指名されますの?」

「ふむ、まさかこのような展開になるとは夢にも思わんだからなぁ。メガモナスとパルビルブラを連れて来てほしい。あの二人であれば元同族と王国の重鎮だから口は堅い」

「僕らの事も話すのですか?」

「いや、勇者と聖女は伏せよう。ワシが認めた者達で良いだろう」

「それでお願いします」

元魔王と側近が現状を打ち明ける相手を指名した所で元聖女が要望を提案した。


「私達からもお願いがあるの」

「指名か?」

「いいえ、特定の人物と会いたくないの」

即座に理解した帝王だ。

「解った。教皇は連れてこない」

「ありがとうございます。いくら名前が違っても容姿はそのままなので・・・」

「でもいずれバレるわよ」

「もぅバレるとか言わないでアヤメちゃん」

「ねぇ、私たちも仮面しない?」

「「「仮面!?」」」

「ええ。アルジ様の様に」

「それよぉ!! アヤメちゃん。二人とも良いわね!?」

強引な元聖女の勢いに誰も反対しなかった。


「じゃあさ、全面にする? それともアルジ様の様に口元が見えるタイプ?」

「そりゃ飲み食いできるから口が見えた方が良いさ」

「じゃ決まりね」

「ねぇ、仮面の色はどうするの? 全員バラバラにするわけ?」

「そうよねぇ・・・こっちは黒仮面で、そっちは白仮面はどう?」

「ねぇ模様を入れちゃ駄目?」

「余り派手にならない様にな」

基本的に女性主導で話は進んでいった。


「しかし・・・全てあの方の手の平か・・・」

「えっ何ですか?」

「いや、なんでもない」

魔人王のつぶやきを即座に理解した魔天女だ。

(あの方の手の平でも、この方と結ばれる運命なら・・・)






ケレプスクルム魔王国では元老院の五大老が集められ、聖魔王と聖魔女から説明を受けていた。

クエルノ族代表ファニ・メガモナス、獣人族代表で人狼族代表のアルゴス・エルギ・ノーザ、龍族代表カルラ・サテレラ・パルビルブラ、ドワーフ族代表アレクシス・シュード、魚人族の代表でココディリロ族代表のデルブリッキィ・ラクト・バチルスは、腰を抜かすほど驚いて猛反対したが、二人の説明を聞き説得されて思考が反転した様だった。


「ククククッ、ワァハッハッハッハッ」

「何がそんなに可笑しいのだメガモナス」

「要するに我らがその十の職種で頂点を極めれば良いのだろう」

「確かにその通りだが・・・」

「ノーザよ。これは我らと人族の代理戦争では無いか!!」

「おおっ、そう言われると、そうか自治王とはその国を配下にする占領戦だな!!」

鼻息が荒くなるメガモナスとノーザだ。


「ノーザの言う通り、これは取り決めた規則が有る殺しの無い占領戦だ。最初に説明したが自治王になると四年で交替となるが、勝てばそのままだ。解るな?」

「我らが聖魔王様は勝ち続けろとおっしゃっておられておる」

パルビルブラが丁寧に激を飛ばす。

「「勿論だ」」

「「我らにお任せあれ」」

「ありがとう、そう言ってくれると思ったよ。そこで当初は俺達と帝国で合同警備となる訳だが、様々な規則を作らなければならない。俺達がやってはいけない事と人族にさせない事を規則にする訳だ。何度か協議する必要があるからパルビルブラに任せても良いか?」

「拝命いたしました」

「あと、ギルド・・・グラディオ国に正式な依頼をする事となる」

「それは有事の仲裁も兼ねる訳ですな」

パルビルブラが真意を読み取った。

「まぁ”それ”も有る」

しかし周りの五大老は既に出場者の選定と自治王になった場合を想定して妄想に花が咲いている様だった。


「最後に帝国の者達と対面での打ち合わせがあるから、パルビルブラとメガモナスは準備してくれ」

「「御意」」






フォルティス帝国では五人の枢密院が呼び出されて帝王と宮廷魔法大臣から説明を受けていた。

教皇ツラレンシス・フランシセラ・レオニダス、ギュスターヴ・バン・クーバー将軍、冒険者代表でギルマスのガナリト・アレナ・ヴォルフガング、貴族代表のゼクシス・エルシニア・ペスティス、商人代表のセラフィマ・アントラシス・バシラスの五人は全容を聞いて驚愕していた。


「陛下、いつの間に帝国とそのような計画を作られたのでしょうか?」

「猊下。この計画をいつ誰と作ったかは問題ではない。重要なのはこの計画で帝国の者がどれだけ勝ち残れるかが重要なのだ。そして勝ち抜いて自治王になってこそ我らの勝利である」

「「「おおおっ!!」」」

クーバー将軍と貴族のペスティス卿に商人代表であるバシラスだ。

三人は共に帝国の威信と利権で思考が偏っていた。

教皇レオニダスも反対では無かった。

何しろ殺害の無い規約を作っての戦いであれば、現在の帝国における戦力を消費せずに威信と名誉の戦いが行えると理解していた。


「諸君、猊下も良く聞いて欲しい。職種別の戦闘とは言え、その職種によっては戦い方、もしくは勝利の判断基準が違うはずだ。そして回復魔法は王国よりも勝ってはいるが・・・この戦いは他の国にも参戦を呼びかける予定だ」

「それは一体どうしてでしょうか?」

「以前、猊下が言ったでは無いか。戦力不足は他国からの協力が有ればとな」

「確かに・・・」

「しかし、あくまでも勝ち進んだ先に自治王がある。これを例え人族だとしても他国にやる訳にはいかんのだ」

「陛下のおっしゃる通りだ!!」

クーバー将軍の話す気が荒くなる。


「そして国の要職者は参戦させん。出場禁止である」

「馬鹿なっ、魔法大臣が出場すれば必ず勝てるのに何故ですか!?」

「国防である」

「!!・・・」

「ロドコッカス宮廷魔法大臣は防衛の要であり、他国には秘密にしておきたいのも理由だ」

それが本音だろうと全員が納得したのだ。


「そんな訳で、対魔物の規約と出場者の選定を早急に進めて欲しい」

性急する帝王に諫言する教皇だ。

「陛下、お急ぎの所申し訳ありませんが、そのような大規模な闘技場や街となれば莫大な費用と時間が必要でございます」

「案ずるな猊下。全て予定通りなのだ」

「はぁ・・・」

「心配はいらん。闘技場が完成したら最初に案内しよう」

「陛下、是非わたくしも同行させてください」

「陛下、我も同行いたしますぞ」

当たり前だが、帝王の言葉を鵜呑みにはしていない教皇で、急ぐ理由も解らず話による闘技場の場所も教えない帝王に疑問を持っていた。

(いくら陛下が神の申し子でもポンと闘技場が出来るはずが無い・・・)


「最後にヴォルフガング、一つ仕事を頼みたい」

一応、枢密院の一員としてその場に同席しているが、自分にはあまり関係無い内容だと思っていたが急に声を掛けられたギルマスだ。


「実はこれを”グラディオのギルマス”に届けて欲しい」

「!!、陛下。あの国のギルマスでしょうか?」

「そうだ。あの国の”国王”にだ」

「・・・宜しければ内容をお聞きしても伺ってもよいでしょうか?」

「今回の闘技大会は初回だが、今後は定期的に毎月行われる。そして一つの職種の大会に一つの賭博を予定している」

「なっ、賭博とは!!」

「全体で考えれば莫大な金が動くだろうな」

「「「・・・」」」

「ギルドの協力の元、他国にも出場者の募集を行ってもらい、街にはギルドの支店も作ってもらう。更に自治王から警備の依頼をする予定だ」

驚きの表情を隠せない枢密院の五人だ。


「陛下、賭博など誰が管理するのですか!?」

「勿論十傑とギルドだ」

「「「十傑とは・・・」」」

「十の職業の頂点が十人。十人の英傑だ」

「「「おおおおっ!!」」」

「まぁ配分は三等分だな。頂点を極めた者と、その者の国とギルドで三等分だ。したがって自国の者が多いほど国に入る利益は大きい。ギルドは全てから配分が有る。全て均等だから文句は無いだろう」

「流石は陛下。そこまでお考えとは恐れ入りました」

「ただし、これは王国と帝国とギルドとの三ヵ国による盟約にするつもりだ」

帝王がヴォルフガングに睨みを利かす。

「承知いたしました」

「我らは仕組みを作り、ギルドが管理する。我らもギルドも王座を巡り参戦する。どうだ、面白いだろうヴォルフガングよ」

「陛下のお考えと行動力には感服致します。私からの質問ですが、冒険者の参戦は可能なのでしょうか?」

「勿論だ、と言いたいが、出生を基準とするならこの国で生まれた者を出すか、登録ギルドを基準とするか、あの国のギルマスと相談しなければならんな。後者であればあの国に有利だろうし、自国出身の冒険者で勝てる者は居るのか?」

「・・・なんとも断言はできかねます・・・」

「そうか・・・」

ヴォルフガングの口調で冒険者はあてに出来ないと判断した帝王だ。

「であれば、冒険者の引き抜きが各国で起こるだろうな。それはそれで面白くないのぉ」

「よけいな出費は押さえたい所ですな」

商人代表であるバシラスは即座に理解した。


「おおっ、バシラスよ。一応エジェスタス王国にも通知は行くはずだが、冒険者や旅人に定住者も増えると予測しておるからな。街での商売は場所が重要だ。皆の協力が帝国に勝利を導いてくれるだろう」

最後は帝王の鼻息も荒かった。

「クーバー将軍に皆の情報から出場者の選定を急いでくれ」

「「「畏まりました」」」


まだ闘技場も出来てないのに・・・

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