第23話 説明
バレンティアと別れた後、ディバルはテトラの持つ屋敷の自室に直接転移して戻って来た。
ディバルの部屋はスクリーバとウルサが選んでくれた、この大陸で作られた高級家具でそろえてある。
重厚感のある机と椅子の背には、風景が映っている額が掛かっていた。
また部屋の壁には”いくつもの額”が掛けられており、任意の座標や特定の人物を映し出す事が出来る物だ。
普段は四人の眷属を見ながら面白い企てを妄想して楽しんでいるのだ。
「ふぅ・・・」
どっしりと三人掛けのソファに座り、先程までの事を考えていた。
(新しい街。いや都市かぁ・・・。俺の適当な思い付きで進めたけどなぁ・・・。この世界に来て一年ほど経つが、良いのかなぁこのままで・・・)
自分の行動が世界にどのような影響をもたらすか、一抹の不安も有るがスプレムスの一言で払拭した経緯がある。
「バレンティアの管理する大陸はいずれ八割が生まれ変わるはずよ」
「それはお前に与えた未来予知の力か?」
「ええ、地殻変動で大地が隆起して地下にのみ込まれたり、大津波が来て海中になるはずなの」
「バレンティアは知っているのか?」
「勿論よ」
「その事を知って何かしないのか?」
「しないわ。人族なんて直ぐに沸いて出て来るもの」
(沸いて出るってボウフラかよ)
「私たちは貴方様が考えられた星を守る存在で人族の優先順位は随分下よ。例えば一本の木を守る為に人の国を滅ぼしても問題無いわ」
「そうだったな・・・」
「だからあの大陸では何をしても大丈夫よ」
(・・・とは聞いていたが、大地の動きは俺にも解らないからなぁ)
前世の自分を思い出し、神となって行動している事に不安を抱いていた。
(そもそも神様って何してんだろ? やっぱ下界には興味ないのか? だいたい本当に居るのか?って俺の事かぁ・・・)
眼をつむり考え込むディバル。
(俺の目的は”その時”までこの世界を楽しむ事・・・結構長いよなぁ。まぁ気楽にいくかぁ)
“コンコンッ”
ディバルが物思いに耽っていると扉を叩く音がした。
「ん? 入れ」
「失礼いたします。アルジ様の気配がしましたので、お戻りになられたのですね。お飲み物をお持ちしました」
メイドの一人が気を効かせたようだ。
本来飲食は必要としないが、眷属との食事会を見ている為か定期的に飲み物を持って来るメイド達だ。
「あー、スクリーバとウルサを呼んでくれ」
「畏まりました」
暫くすると二人が現れた。
「お呼びでしょうか? 我がアルジよ」
「あぁ、面白い事を考えたから聞いてくれ」
「それは楽しみですなぁ」
「一体どのような計画でしょうか?」
「事前にバレンティアと話は詰めてあるのだが・・・」
ディバルは構想を説明した。
「それはまた楽しそうな計画ですな」
「今までに無い環境や取り組みによって魔物に人族も良い刺激があると良いのですが・・・」
「まさにそれを期待してるのさ」
「「おおっ!!」」
「進化の切掛けが起これば可能性が膨らむよな」
「全くで御座います」
「では、あの四人を呼んで説明いたしましょうか?」
「ああ、まずはお前たちに聞いてからと思ったのさ」
「我らが反対などする訳がございません」
「何か意見でも無いか?」
「完璧な計画でございます」
「・・・そうか。まぁ問題が起こればその都度対処すれば良いしな」
「おっしゃる通りでございます」
「なにぶん、過去に無い事ゆえどのような事が起こるか考えも及びません」
「そうか。じゃ四人を呼んでくれ」
フォルティス帝国から魔人王ティマイオス・コクシエラ・バーネッティことオスコと、魔天女ゾフィ・ロドコッカスが現れた。
ケレプスクルム魔王国から聖魔王クリティアス・ラネウス・オドリバクターことアスラと、聖魔女バリオラ・オルソポックスことリオが現れた。
「「「招集により参上致しました」」」
「ふむ。お前たちに新たな計画を説明する」
スクリーバとウルサ同様に説明した。
「まずお前たちには二国間で協定を結び、新設する闘技場を新たな街と定め、定期的に闘技大会を催す事を公表し、更には他国にも告知して参戦の要請を行う事とギルドに運営の協力要請や、自国内で選手の選別をして参戦させる事だが、当面の間は闘技場も二国間で管理してもらいたい」
「「「・・・」」」
「基本的に初年度は警備や収益は半々とし、”互いの責任者の顔に泥を塗らない事”とする」
「「「・・・」」」
神妙に聞いていた四人だ。
「どうだ? 出来そうか?」
「・・・しばし我らで打ち合わせが必要かと存じます」
「ふむ、任せる」
「大会はいつ頃を予定されてますか?」
「早いに越した事は無いが、お前たちの準備も有るだろうから予定が確定したら教えてくれ」
「「御意」」
「アルジ様、新たな闘技場は何処に作られる予定でしょうか? また、街とするならば街の名前は如何致しましょうか?」
アスラの問いかけに応えるディバル。
「場所は二国間から南東の山脈方面に広大な草原がある。境界となる森の近くに作る予定だ。そして闘技場と街の名前だが・・・”クルシブル”とする。いずれ小国家になれば面白いがな」
「「承知いたしました」」
オスコとアスラが説明を聞いている間、ゾフィとリオは念話で会話していた。
(ねぇ、”互いの責任者の顔に泥を塗らない事”ってどういう事?)
(お互いの”メンツ”を保てって事でしょ)
(人と魔物が互いにぃ?)
(共同運営だからでしょ。マニュアルが必要ね)
(魔物側は対人間に対しての禁止事項ね)
(逆もよ)
(罰則も必要よね)
(でも闘技大会かぁ、久しぶりだわ)
(こっちは頻繁にやってるけどね)
(毎月でしょ)
(今回の大会も毎月よね・・・)
(あぁぁ、面倒な仕事が増えそうだわぁぁ)
(それよりさぁ、この大会って・・・国の威信がかかりそうね)
(一応、交代制の自治王らしいけど管理者が何処の国の出身かで勢力が変動しそうね)
(あ、他の国からも参戦してくるのかぁ)
(そうよ。私たちは不利かもしれない)
(大丈夫よ、所詮は人間でしょ、魔物と”サシ”で勝負となれば大体負けるでしょ)
(でも流石に強い者も居るでしょ、将軍や団長レベルとか)
(国の要職者も出させるの? 私は反対だけど)
(そうね、私たちの国からは出場禁止にしましょう)
(それよりも職種別よ)
(その発想は初めてよねぇ)
(剣術と拳技に、槍術、斧術、弓術、召喚術、攻撃魔法と回復魔法に補助魔法と何だっけ?)
(精霊魔法よ)
(精霊魔法なんて本当に使える人居るのぉ?)
(もしかしてスクリーバ様とウルサ様の配下かしら?)
(解らないけどさぁ、私たちは出ないわよねぇ)
(えぇぇ、ハルコちゃん出ないのぉ?)
(出る訳が無いわよ!!)
(私は出てみたいなぁ)
(あやめちゃんって、意外と戦闘民族なのね)
(だってクエルノ族だもん)
(元でしょ)
(あれ、そうだった・・・)
(ねぇ聞いたぁ闘技場の名前が”クルシブル”だってぇ)
(なんだろぉクルシブルって)
(たしか・・・坩堝ぉ?だったかしら)
(良く知ってるわねぇ)
(アルジ様のお考えでしょ。何か深い意味が有ると思うわ)
(そうね。私たちが考えてもしょうがないしね)
(そうそう、それよりも二国間の協定作らなきゃ)
(あぁ、仕事が増えそぉ)
新たな指令を受けた四人は、食堂で遅い朝食を取りながら対話していた。
「だけど二国間協定って同盟を結べって事?」
「そうはおっしゃられては居ないだろう。あくまでも協定だ」
「だよねぇ。流石に大戦が終わってまだ数年しか経ってないし、みんな反対すると思うよ」
「ふむ。だからこその協定であろう。そして自治王こそが代理戦争の勝者と見たが、皆はどの様に感じたか」
「確かにそう感じたわ」
「でも他国からの参入も有りなんでしょ」
「それにギルドを介してとなると・・・」
「”グラディオ”だな」
全員がうなづいた。
「確かに、それぞれの国の支店に任せるよりも”グラディオ”に依頼した方が早いし、”クルシブル”にもギルドの支店が必要だろうしな」
「僕らの名で双方から”グラディオ”に依頼を出すのはどうかな?」
「ふん、奴らの驚く顔が目に浮かぶわ!」
「ショーゴさんは”グラディオ”のギルマス知ってるの?」
「知ってるも何も、あそこは国王がギルマスだからな」
「「「ええええぇぇぇぇっ!!」」」
「知らなかったのか?」
知っていたのは元魔王だけだった。
グラディオとは一体・・・




