Alius fabula Pars23 急展開と次の国
自らの屋敷に戻って来たディバルは、スクリーバとウルサに次に訪れる国を伝えた。
「次はモナスカ王国に行ってみようと思う」
「「畏まりました」」
「二人は引き続き子供たちの訓練を頼む」
「はっ、ではシニストラとデクストラを連れていかれると」
「そうだ。お前たちに任せっきりだと、あいつ等も経験しないからな」
「我がアルジよ、例の時まで余り時間がありませんが・・・」
例の時とは、ディバルの眷属に加える予定の四人と邂逅する時の事だ。
「その事だが、その時は仮面を外そうと考えてるがどうだ?」
「「御心のままに・・・」」
普段は口元だけ見えて、目元も隠している仮面の事だ。
「まぁ一応眷属にする予定だし、仮面してたら警戒するだろうからな」
「「・・・」」
何か言いたそうだが沈黙の二人だ。
「まぁメイド達も見てるし、お前たちが後から説明するだろ?」
「「御心のままに」」
「まだ余裕が有ると思うけど、俺としては最高のタイミングで出て行きたいから様子を見てみるか」
ディバルの自室の壁面に飾られた額の幾つかが王国の状況を映し出した。
「あれっ、これ戦ってるよな。結構乱戦になってるぞぉ・・・」
ディバルの予測よりも早く戦争が起こっており、城の至る所で魔物と人が戦っていて、見る限り火災や死体が多く映し出されていたので全員が見入っていた。
「アルジ様、魔王を映してみましょう」
スクリーバの申し出で、一つの額を切り替えた。
「ええっ、もう戦ってるじゃん!! 散歩どころじゃねぇぞ」
そこには魔王と勇者が戦っている場面だった。
「ヤバイッ、行ってくる。テーブルと椅子は持ったな・・・良し、不可視化の魔法を使って転移するぞ。見ててくれ」
「「仰せのままに」」
散歩気分だったディバルは、うっかり予定の日時を失念していたのか、それとも予定よりも世界が早く進んでいたのかは、たいした問題では無かった。
自らの”演出の機会”に合わせる為に慌てて戦いの場に転移するのだった。
※第一話につづく※
時は進みモナスカ王国では。
それはほぼ大陸の中央に構えるフォルティス帝国の東南に位置し、海に面した大きな国土を持つ国だ。
帝国とは隣接しているが、高い標高の山脈が連なる連峰に遮られている。
帝国と同規模の文明大国であり、国交も各国と交わしている。
大陸の国々は他国に対して間諜を送り込んでいるがモナスカ王国も例外は無い。
フォルティス帝国が起こした人魔大戦で疲弊した国力の報告を受けて、対フォルティス帝国戦の準備を始めるが矢継ぎ早に”現帝”の報告が有り、将軍たちの賛否が割れて時間を浪費した結果、”魔人王と魔天女の戦記”が将軍たちの戦意を消失させた経緯がある。
一振りの大刀で千の敵を切り裂く力を持つ帝王。
一つの魔法で千の兵士を焼き殺す力を持つ魔法使い。
仮に万の兵力をもってしても、容易に勝つことは困難だと推測し、将軍たちが先鋒の譲り合いを始めたが国王が不戦の提言をして戦争には至らなかった。
強硬派の将軍たちは憤りを隠せないが、穏健派の言い分も理解出来たからだ。
自国に、一振りの大刀で千の敵を切り裂く力を持つ者は居ないし、一つの魔法で千の兵士を焼き殺す魔法使いも居ないからだ。
同等以下の力を持つ者も存在しないし、将軍たちの力も及ばない。
その情報源を信じたくは無いが、長年仕えている複数の間者が”直接見た情報”なので信じざるを得なかった。
戦争の準備は、”特別訓練”と称して兵士や国民の動向を調べる為と説明して国内の不安感を消し去る事となった。
事実、国内調査では様々な動きが有ったと報告を受けた国王配下の上層部だ。
「戦争を回避できたことは良かったが、国内にも不穏な動きをする者が結構要るのぉ」
「はい、今後調査を進めながら密偵を増やす事にします」
国王チャパレ・アレ・ナ・モナスカと、大臣も兼任する公爵のコリンセラ・アエロ・ファシエンスだ。
大人たちは自国の体制を再度見直すと共に、フォルティス帝国と友好を図るために使者を送る事を決めた。
だがそんな事は子供達には関係の無い事だ。
国王の第二王子と第二王女は、貴族たちの子供が通う施設に通っていた。
その施設とは王国の名門ロドトルマ学園だ。
ロドトルマ学園は貴族の子供たちだけではなく平民も多数在籍している。
入学の試験内容は一切知らされておらず、子供達個人の能力を見分ける魔法と性格判断出来る魔法が付与された魔導具で、思想や精神に悪意や欲の有無を判断できるおかげだ。
それぞれの項目に善良と悪意が七段階で判断し、偏っていたり一つの項目が悪意寄りであっても合格には至らない。
したがって、貴族でも入園出来ない者が存在する。
この国では王宮に勤める者や出入りする大人たちもこの魔導具で不穏分子や危険人物の判断を行っているおかげで、他国よりも比較的安全な暮らしの様だ。
勿論、悪意の偏った思想の持ち主は、要注意人物として観察対象となる。
これは老若男女、身分を問わず定められている。
学園の採点判断基準は心・学・技・体と四つの要素を如何に体現できるかを問われる。
心は愛国心であり愛情や思いやりと仲間意識で、善良な精神を宿す事である。
学は基礎的な学問と魔導に関するものである。
技は生活における一般的な技術や格闘の技術に魔法の技術だ。
体は基礎体力の向上と戦闘における持久力を養う事だ。
他国よりも比較的安全なこの国でも、戦争や魔物との戦闘で命を落とす者が多いからである。
そんな学園の者達が必ず行う行事が有り、弱い魔物との対峙する課題で、引率者と少数の子供たちが課外授業に出ていた。
「・・・であるから、魔物が現れても決して慌てずに対処する事。そして魔物が逃げても深追いしない事。そしてこの三日月の森から奥に行かない事。最後に何か有れば即座に撤退する事。普段の講義を受けていれば全員が達成できるはずだ。各班の準備ができ次第行動せよ!」
引率者の注意喚起が終わり四人から五人の班で魔物を仕留める為に森の中に向かうのだった。
そんな班の一組に配属されたこの国の第二王子オットー・ラクサ・ナ・モナスカ(14歳)と第二王女ミルカ・モリニア・ナ・モナスカ(13歳)に平民だが仲の良いニコとダインだ。
オットーとダインは魔法も使える騎士見習いで、ミルカは攻撃魔法に支援魔法が得意であり、ニコは防御魔法と回復魔法が得意だった。
四人は警戒しながら森の散策を行っていた
「なかなか魔物って出てこないなぁ」
「そりゃ簡単に見つかるほど魔物が多ければ討伐隊が出てるわよ」
「まぁ鼠や兎は見かけるけどなぁ・・・俺たちの獲物はもっとデカくないとな」
「だよな。大物狙おうぜ。俺たちならドラゴンでも倒せるさ」
「ドラゴンは無いわ、ダイン」
「まぁ飛んでるのはキツイけど羽無しだったらイケるだろう」
「小型の地龍の子供だったら時間をかければ可能性はあるかも知れないわ」
「そこまで酷くないだろニコ」
「ニコの言う通りよ、ダイン」
「うわっ。ミルカまで俺たちの戦力を過小評価するのかよ。オットーはイケると思うだろ?」
「まぁダインの発想は理解できる」
「ほらな」
「だがな、俺たちは未経験者だ。経験者達とは違い頭で理解しても体が動かない場合があるらしい」
「”兄上”の助言か?」
うなずくオットー。
「兄貴の助言は”如何なる場合でも油断するな”だ。そして”常に見られている事を意識しろだ”」
「あぁ、覚えてるよ。人だろうが魔物だろうが敵対する者に対してだろ」
「本当に解ってるの、ダイン?」
「当り前だろう!!」
四人は警戒を怠らず、森を散策し魔物を探していった。
そう、決して警戒を怠ってはいなかったのだ。
しかし突如として鳴り響く咆哮と共に一気に緊張感が増し、戦闘態勢を取るが体は硬直していた四人だった。
ドドドドッ
森の奥から現れたのは”ブバルス”だった。
額から巨大な角が前方に生えており、体毛が斬撃を阻み剣士には難敵とされる魔物だった。
「くそっ、なんでブバルスが出てくんだよぉぉぉっ」
「うそっ、この辺りにブバルスが出るなんて聞いてないわ」
「みんな補助魔法を使え!!」
それぞれが身体能力強化魔法、反射速度強化魔法、物理攻撃減少魔法、魔法防御壁展開、炎の魔法展開準備を行い、即座に実行した。
ミルカの放つ火球がブバルスに直撃し黒煙が立ち上る。
「やったか!?」
ダインが喜び勇んた瞬間、黒煙の中から猛烈な勢いで突進してきたブバルスだ。
「ブモモモモモモォォ!!」
ブバルスは奥に居る小さな女の子に狙いを定めた。
ミルカが続けざまに放つ火球はブバルスの足止めにはならなかった。
斬撃の効果が薄いと知ってはいても他に対処する方法の無いオットーは果敢に立ち向かっていた。
オットーの斬撃を振り切った瞬間、全員が理解した。
(((ニコが狙われてる!!)))
「ダイィィン、ニコを守れぇぇぇぇ!!」
オットーの叫びに即座に反応したダインはニコの前に立ち剣を構えて対峙していた。
ニコは何度も防御魔法を重ねがけし、震える脚で二人はその瞬間を迎えた。
ズドォォン!!
巨大な大木にぶつかり、一瞬だがふらつくブバルスだ。
ダインとニコはぶつかる直前に横に飛び、そのまま草陰に隠れたのだ。
ブバルスの体制が不安定な瞬間にミルカが火球放つ。
「ブモモモモモモォォ!!」
どうやら今度はミルカを標的にしたらしい。
「良いぞミルカ。そのままこちらに敵意を向けさせて森を抜けよう。一緒に走るぞ」
「解ったわ」
オットーとミルカはダインとニコが隠れている逆の方向へ走り出すと、ブバルスが追いかけて来た。
魔物に追いかけられる王族。
野牛=Bubalus




