第21話 お呼び出し
ある日、別々の場所でスクリーバとウルサがそれぞれに言い放った。
「「我らのアルジ様が、お前たちをお呼びになっておる」」
魔人王バーネッティと魔天女ロドコッカスに、聖魔王アスラと聖魔女リオが仕事の手を止めて確認した。
「「「今すぐか?」」」
勿論ディバルはそんな無茶は言わない。
四人の都合を考慮して、朝か昼に集合とだけ伝えたのだ。
連絡を受けたのは夕方なので、考える間もなく明日の朝に転移で”テトラ”に向かう事となった。
基本的に三十日に一度の間隔で全員集合している四人だ。
眷属となって既に一年以上過ぎたが、両国に着任後半年でスクリーバとウルサは頻繁に”テトラ”に戻るようになっていた。
現在は月に十日も城に滞在していれば良い方だろう。
そこまで姿が見えないと他の重臣から所在を問いただされるが、”極秘任務”で統一してある。
最近は魔天女と聖魔女の要望で食事を取りながらの報告会だ。
しかも四人の要望で”箸”を持参し、食べものは今までと同じだが”和式の器”での食事だ。
既に当たり前になっているが、メイドの四人以外に厨房には調理専任の男のホムンクルスが立っている。
ディバルの計画で、メイドの役割が増えた為に料理人を増やしたのだ。
メイドを含めホムンクルスには”適切な性格”と”様々な芸当”がプリインストールされている。
そのおかげで食事の配膳は二人で事足りている。
「どうだ、お互いに元の種族とは違う目線で治める国は面白いだろ?」
「確かに今までに経験の無い事ばかりで新鮮だわ」
ディバルの問いかけに苦笑いする聖魔王アスラの側で応える聖魔女リオだ。
「アルジ様のおかげで対人関係も問題無く過ごしております」
オスコとゾフィには教えてないが帝都の王城勤務の者は、ほとんどが精神去勢されているからだ。
「これからも、どんな面白い事が起こるか楽しみだな」
毎日の諸問題を処理する事で、手一杯の四人は苦笑いするしかなかった。
「しかし、もう直ぐ二年になるがここまで内政を作り上げるとは四人とも素晴らしい成果だ」
ディバルに褒められて四人とも嬉しそうだ。
「帝都での内乱を即座に収めた手段も良いし、その後の処理も的確だったな」
「は、お褒めにあずかり光栄です」
「王国も食料事情が改善されて魔物も喜んでいるしな。あのバンピーレの覚醒進化にも驚かされたぞ。進化したお前たちの血にあんな効力が有ったとは流石に予想外だったぞ」
「ありがとうございます。俺たちも本当に驚きました」
「ふむ。魔物達の闘技会も順調のようだな」
「はい、新たな闘技場も建設途中なので、完成次第アルジ様も観覧して頂きたいと考えております」
「そうか、楽しみだな」
食堂で朝食を取りながらの会議だが、所要が有りスクリーバとウルサは席を外している。
本来は食事の必要は無いがディバルも四人と同じ物を食べている。
「さてと、覚えているか? お前たちの成果に対する褒美を」
「「「はい」」」
「まぁ成果の早い者順とは言ったが、こればかりは運だからな。反乱は相手次第だし、食料改革は成果が出るまで時間が掛かるからな・・・」
四人はそれぞれが狙っている褒美が重ならない様に祈っていた。
「そこでだ。一斉に欲しい物を宣言するのはどうだ?」
「「「お言葉のままに」」」
「そっか。じゃ、いっせぇのぉで、言うんだぞ。いいか?」
「いっせぇせぇのぉ・・・」
ディバルの耳には、はっきりと四人の声が聞き取れていた。
魔人王は「聖弓の弓束を賜ります」
聖魔王は「氷炎魔法双剣の柄でお願いします」
聖魔女は「暗黒魔闘鎧をください」
魔天女は「神聖魔闘鎧を頂戴したいです」
と宣言していた。
「おおっ、見事に別れたなぁ」
その言葉を聞いて四人は安堵した。
ディバルは二人のメイドに聖弓の弓束と氷炎魔法双剣の柄を渡してオスコとアスラに届けさせた。
「「これが・・・」」
「まだ使うなよ、説明するからな。ゾフィとリオは側に来い」
椅子に座るディバルの左右に立ち、頭を差し出せと指示された。
二人は頭を垂れるとディバルの手が後頭部に触れた瞬間に電気が走った。
「「キャッ・・・あっ!!」」
ピリッと走る電気に驚いたが次の瞬間、意識に欲しかった魔法が自分のモノになったことを理解した。
「では四人とも庭に出ようか」
屋敷の庭はかなり広い。
「誰から説明するか?」
「「「・・・」」」
四人になると”譲り合いの精神”が復活するようだ。
「ではワシからお願いします」
いつものように”オスコ”からだ。
「よし、以前の説明は覚えているか? 聖弓の弓束は、普段は持ち手の部分だけだが、魔素を送るとこうなる」
聖気が溢れる大弓が現れた。
「じゃ、やってみろ」
魔人王バーネッティことオスコに弓束を渡すと、左手に持ち真横に突き出して魔素を送った。
「おおっ」
金色の大弓が現れた。
「弦は見えないけどな、適当な場所に弦を引く動作で魔法の矢が現われるからやってみろ」
「おおっ、矢が出た!!」
光り輝く矢が出て驚くオスコ。
「魔素の続く限り無限に矢を射る事が出来る訳だ。そして弦にかける指の本数で矢の数が変わる事だ。注意する点は、威力は弓束の魔素で調整し、飛距離は弦を引く右手で調整できる」
「なるほど、これはかなり練習が必要ですな」
「お前なら出来るだろう。最後に取って置きの方法だが、サクテキを使えば目を瞑っていても矢が当たるだろうな」
「なるほど、サクテキで敵や標的の場所を認識して矢を放てば見えなくとも命中する訳か」
「そうだ。仮に敵が動いていたとしても、矢に追尾させる思念を送ってから放てばサクテキを解かずに見ていれば良いだけだ」
何気に奥義的な方法を教えたディバル。
「この聖弓の弓束を使いこなして見せましょう」
不敵にも自信満々でほほ笑んだオスコだ。
「楽しみにしてるぞ。修練に励め」
「承知しました」
オスコとのやり取りを終えてアスラに話しかけようとしたが、既に氷炎魔法双剣の柄を使いこなしていた。
「使いかってはどうだ?」
「はい、アルジ様。素晴らしい魔法剣です」
アスラは普通に剣を振る様に魔法剣を使っていた。
「それじゃ只の剣と同じだろ、片方貸してみろ。使い方を教えてやる」
ディバルが氷魔法剣の柄を手にして説明を始めた。
「俺と同じようにやってみろ。この剣は魔法と同じだが剣の形に捕らわれるな」
前方に突き出した魔法剣だが、剣の部分がグングンと伸びていった。
「ええええええええっ!!」
一本の長い氷の剣だ。
「あのぉ・・・」
「重い訳無いだろ、自分の魔法だぞ」
「あっ」
自分の認識が間違っていた事を理解したアスラは真似てみた。
「出来ました」
炎の剣が伸びていた。
「じゃ、次はこうだ」
長い氷剣が扇型に変わっていった。
「沢山敵が居たら便利だろ」
「はい、やってみます」
難なくこなすアスラだ。
「次はこれ」
先程の扇型の様に氷の塊を放出した。
「凄い、そんな事も出来るんだ」
「魔法だからな。柄は魔導具に過ぎないって事だ。あと、こんなのも出来るぞ」
そう言ったティバルは普通剣の大きさにして天にかざすと、巨大な氷柱が上空に浮かんでいた。
「うおぉぉぉっすっげぇぇぇ!!」
魔法を解除してアスラに体験させてみた。
巨大な炎の塊が上空で燃え盛っていた。
「おい、熱いから長くするなよ」
「はい」
「注意する点は、魔法は魔素を使う訳だ。何を言いたいか分かるよな?」
「はい、自分の魔力に応じてそれぞれの発動回数と時間を調べる事です」
「そうだな、それと最大魔力値だけが最強では無いぞ」
「そうおっしゃいますと・・・」
「まぁ炎より氷の方がやりやすいか・・・」
目の前で氷の剣の切っ先を見る様に指示した。
すると、小さな氷の針が現れてクルクルと回転していた。
「これは一体・・・」
「見えた方が解りやすいだろ。そのまま見てろ」
すると、小さな氷の針は太くなり回転を増していった。
「只の氷じゃないぞ。強度を増して回転している・・・」
「もしかしてアルジ様!!」
「そうだ。氷の弾丸だ」
「すげえぇぇぇぇ!!」
「オスコにも教えたが、サクテキを使えば目を瞑っていても氷が当たるし、追尾させるなら思念を送って放てばサクテキを解かずに見ていれば良いだけだ」
「あ、ありがとうございますアルジ様」
「まぁ後は練習有るのみだ」
「はい」
三人のやりとりを見ていたリオとゾフィだ。
「私たちも個別指導かな?」
「う~ん、多分属性が違うだけだから一緒に聞くと思うよ」
「お待たせ。暗黒魔闘鎧と神聖魔闘鎧だけど、扱い方は一緒だから聞いてくれ」
(ほら・・・)
(同じなんだ・・・)
「まず前回にも説明したけど、これは鎧と言っても魔法だ。したがって魔素が枯渇すると消えて無散するから注意する様に。それと武器や盾も同時に発動する事が出来るが、後から出す事も可能だ。肝心なのは鎧の形を正確に想像する事だ。全身鎧が一番防御力高いけど、普段着にする必要は無いぞ。2人がどんな鎧にするか楽しみだよ」
リオとゾフィは事前に打ち合わせをしていたらしい。
「じゃ二人は同時にやってみようか」
「「はい」」
するとリオの周りに漆黒の靄が溢れ出し、次第に鎧の形に変わっていった。
ゾフィの周りには光の粒子が集まり、眩い光を発散させる鎧に変わっていった。
完成した漆黒の軽装鎧は四肢と胸に腰を覆い剣に盾を持つリオと、黄金の軽装鎧はリオと同様だが盾は持たず剣だけだった。
「おおおっ二人とも凄いぞ!」
ディバルに褒められて嬉しいようだ。
「じゃ全身鎧に行ってみようか」
「「えっ」」
「えっじゃない。基本は全身鎧だ。普段は軽装鎧でも構わないけど、全身装備出来ないと意味無いからな」
「「・・・」」
「さぁやってみろ」
二人はそれぞれの城内を歩く兵士を思い出して瞑想していた。
「「行きます」」
それは二人同時だった。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
それぞれ光の粒子と漆黒の靄に覆われていった。
完成した全身鎧と装備は申し分なかった。
ただ、二人が考えたと言う個性が見られなかった。
ありがちな全身鎧だ。
「・・・まぁ一応は出来るか・・・もう少し個性を形にした方が素敵な鎧になると思うぞ」
「「・・・」」
「二人の鎧は同じ基本性能だ。ただし、性能よりも技術が劣っていたら敵対者に負けるからな。この鎧が絶対では無いぞ。良く覚えておけよ」
「「はい」」
あとは練習しろ。




