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デスパラ=神として転生したオジサンは下界でパイ作り職人を目指す=  作者: 流転小石
第1章 異世界的紆余曲折
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Alius fabula Pars21 カルバラリアと言う国

ラソンとデクストラとシニストラを引き連れて転移して来たのは、山脈に囲まれたエルフの小国家カルバラリアにある城下町ゲニキュラータの近くだ。

本来は徒歩で旅を楽しみたかったのだが、いつも転移して訪れるラソンと同行なので文句を言わず付いてきたディバルだ。


この小さな国は二千人ほどしかおらず、そのほとんどが与えられた研究に従事していた。

研究以外に重要な役割は食料生産や生活にまつわる仕事と国境警備だ。

国境には幾重にも張り巡らされた強力な防御魔法と幻惑魔法が発動しているが、巡回警備も行っている。


(きこり)や冒険者の一部の人たちには古くから森のエルフと言い伝えられているが、実際は研究を隠すための擬態であり、人族を本質的に信用していない。

勿論魔物は論外だ。


そんな城下町ゲニキュラータの近くに転移して現れた四人だ。

すると、城下町から誰かが走ってくる姿が見えた。


「はぁはぁはぁ、ラソン様はぁはぁ、ようこそお越しいただきましたはぁはぁ」

その息遣いで、どれだけ慌てて駆け付けたのか理解したラソンだ。


「良いのよ。今回は表敬訪問なので皆には普段と変わらない研究生活を見せてもらうわ」

「ひょ、表敬訪問・・・研究生活・・・ははぁぁぁ。そのように伝えますので、ごゆるりとお越しくださいませぇぇぇ」

一見、若そうに見えるエルフだが、慌てて城下町へ駆けていった。


「なぁラソン、大丈夫か?」

「はい。全く問題有りませんわ」

「「・・・」」

シニストラとデクストラは無言だ。




「たたたたたた大変だぁぁぁぁぁぁぁっ!!

「うるさいぞ、貴様っ」

「一体どうしたんだ」

「ら、ら、ら、らそ・・・」

「ら、だけじゃ解らんだろぅ」

「いい加減、落ち着いて話せ」

「すーはーすーはー・・・・


深呼吸して落ち着いたエルフだ。


「バーシカラ様からの(おお)せで、街はずれの転移場に走って行ったらさぁ、なんとラソン様がいらっしゃった」

「「「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」」」




アスペルギルス・バーシカラはカルバラリアの国王となっているが、実際は研究とこの地域の責任者である。

金髪碧眼で長い髪を結び所謂エルフスタイルの容姿だ。

整った顔立ちで若く見えるが軽く千年は生きており、この地で生きるエルフたちを代々治めて来た直系一族だ。

そのバーシカラが警備兵に用を頼んだ。

「転移場に来られる方を、粗相無くお連れするように」

言葉を鵜呑みにした警備兵は、駆け足で向かえと言われ命令のまま走って行ったのだ。


ほんの少し考えれば解る事だ。

転移場など限られた者しか使わない事を。

その姿を目にするまで失念していた警備兵は驚愕したが、初めての邂逅でなかった事が救いだった。

息は上がっていたが、ご挨拶できたからだ。

しかし、ラソンの口から飛び出した言葉に、今までにない緊張感が全身を駆け巡ったのだ。


国内のエルフは全員ラソンの事を見知っているし、訪問の際はバーシカラ自らが先頭に立ち出迎えていたからだ。

しかし、今回は違った。

バーシカラの命令で、事も有ろうに一介の警備兵が一人で出迎えてしまったからだ。

そしてラソンの言葉だ。

表敬訪問と研究生活は今まで聞いた事の無い内容だった。

何も聞かられて無い警備兵は思考の渦におちいり、その場から逃げてしまったのが実情だ。


その場に居た五人の警備兵は、一人を残し二手に分かれた。

二人はバーシカラの元へ。

もう二人はラソンたちの元へ。



「なぁラソン。これは城下町なのか?」

ディバルが尋ねたのも無理はない。

一本の細い道が続いているが人族とは違う住居だ。

森の中に点在する巨木を利用して家を作り、数軒の家族が暮らしていると言う。

遠くからでは、そこに住居が存在する事も解らないであろう。

そして森の中にはほとんど人の気配が無い。

旅人が居る訳もなく、冒険者もいない。

露店も無く、幼子が数人目に付くだけだ。


「はい、この街の者は、ほとんどが城で魔法の研究をしております。街に居るのは幼子に警備兵と農業担当の百人足らずですから、ほとんどが仕事に精を出しています」


(なるほどなぁ、自給自足とは聞こえは良いが、この場所に監禁されて研究しているのかぁ。疑問とか思わないのかなぁ? いや、おせっかいは止めておこう)

見渡しても大木に寄生するキノコの様な家々にはエルフの気配は無く、幼子は集団で遊んでいる。


「ここでは何を食べて暮らいているんだ?」

「野菜に山菜やキノコに、狩りで仕留める動物でしょう」

「へぇ肉も食べるんだ」

「エルフは雑食ですから何でも食べますわ。その点は人族と同じで助かります」

「いゃ、エルフは採食主義で肉とか食べないって聞いたような気がしたからさ」

「あぁ、多分冒険者たちが風潮している出任せでしょう」

「なぁんだ」

「冒険者たちは自分たちと容姿が違うエルフのように、どうしたら美形になれるのか考えたらしいですよ」

「その答えが肉を食べないってか?」

「はい」

「ホント馬鹿だよなぁ」

「ではディバルシス様はご存じなのでしょうか?」

「当り前だ。俺がそう想ったからだ」

「まぁ」

「美しい者は美しいままに。そして、より美しく生まれる様に想ったからさ」

「・・・」

ラソンは尊敬の眼差しを向けていた。

「言っとくがエルフの事じゃないぞ。お前たちの事だ。結果的にエルフもその恩恵を受け継いでいるみたいだがな


「感謝致します。そしてこの事は我らが神にも報告して宜しいでしょうか?

「好きにすれば良いさ」




カルバラリアの国土は小さい。

四方を山脈に囲まれているからだ。

観光する場所も無い。

露店も無い。

人も歩いてない。

しかも研究の邪魔をしてはいけないし、過去の研究成果は全て脳内に入っている。

何気にカルバラリアの研究成果を思うと、魔法検索魔法が勝手に発動して一覧が出る。

この地に訪れて百歩足らずで、国の価値を知り終えてしまったのだ。


「ラソン、手間を掛けさせたが戻ろうか」

「折角ですので国王とご挨拶は如何でしょうか」

「今更だが必要か?」

「是非会ってくださいませ、本人も更なるやる気を出しますわ」

「そうか・・・」


遊んでいた幼子に絡まれながらも王城を目指す四人だ。

王城は石作りの建物で二階建てだが地下三階で、苔むして大きな緑の塊となっていた。

表層の城よりも地下の施設の方が重要で巨大な実験場となっている。

言い換えれば、石作りの巨大な実験場の上に見せかけの城が乗せてあるのだ。

したがって城の外観などは気にしないから苔に覆われた城となっている。

城内の壁面には全て龍の文様が刻み込まれていた。



事前に何度もラソンから念話で連絡を受けていた国王アスペルギルス・バーシカラは謁見の間で本来自分が座る玉座の前で下賜づいていた。


謁見の間の扉が開く音が聞こえた後、締まる音も確認した国王だ。

数人が絨毯の上を歩く音がした。

すると自分の横に気配を感じ、目を開けると驚愕したバーシカラだ。

なんと、ラソンが下賜づいていた。

あの気高き尊いラソンが、である。

バーシカラの思考は驚きの余り、何が起こっているのか理解できなかった。

少なくとも自分が生を受けてラソンが頭を垂れる姿は一度も見た事が無かったからだ。

千年以上生きた中で、嫌な汗が全身から流れている事が肌で感じる国王だ。


すると男の声がした。

「アルジ様のお許しが出てので(おもて)を上げて良い」

ゆっくりと、恐る恐る、緊張したバーシカラが顔を上げた。

普段は自分が座る玉座に存在したのは”光体”だった。

左右には黒装束の男女が立っている。

「はうっ」


即座に目を瞑り再び頭を垂れる国王だ。

眼を食いしばり自問自答するバーシカラ。

(あれは・・・まさしく・・・見てはいかん。目がつぶれる)


沈黙が続く中で念話するディバルだ。

(これはどういう事だラソン)

(本人に確認しますので少々お待ちくださいませ)


(バーシカラ、どうしたのですか?)

(ら、ラソン様もお人が悪い、神の降臨とは聞いておりませんでした)

(・・・貴方にはどのように見えるのかしら?)

(ひ、光のままでごさいます)

(そう・・・)

ラソン達には普通に見える姿だが、国王には光体として認識されているようだ。


(・・・の様で、この者には神として見えるのでしょうか?)

(はぁぁぁぁっ!? 何でだぁ、そんなエフェクトが出てるなんてどういう事だぁ。何か思い当たる効果はあるか?)

(エフェクト・・・いいえ、わたくしには解りかねます)

(くっ、魔法検索、光体エフェクト)

すると、目の前に空中展開された魔法名が有った。

しかも、龍族と眷属には無効と出ている。


(後光かぁ・・・でも後ろで光ってるのに前の姿が見えない訳無いよなぁ・・・あっ)

エフェクトに強中弱と切るがあり、強になっていた。

(よし切るにしたぞ。ラソンこれで大丈夫だ)


(さぁバーシカラもう一度御覧なさい)

恐る恐る顔を上げる国王。

玉座に座っていたのは先ほどとは違い、仮面を付けた男だった。


「驚かせたようだな」

「滅相も御座いません」

「まぁ今回はお前たちの研究を(ねぎら)う為の訪問だ」

「バーシカラ、このお方が貴男の前にお姿を御見せになられた事こそが最大の褒美ですよ」

「ははぁぁぁ、このバーシカラ、貴方様の為にこの命の全てを研究に役立たせて御見せします」

「あぁ、期待しているぞ」

「ははぁぁぁ」


(もう良いかラソン)

(ありがとうございます。わたくしはもう少しこの者と用が有りますので、これにて失礼いたします)

(構わないぞ。また会おう)



城に向かってきた道を帰る途中思案していたディバルだ。

(しかしいつの間に後光なんてスキルが発動してんだ? テトラに居た時は無かったはずだ。光ってたら子供達も気づくはずだしな)

「お前たち、誰かが俺にスキルを加えたとこを見たか?」

「アルジ様にそのような事が出来るのはこの世界にお一人でございます」

「なにぃ!? あっ、アレかぁ・・・ちっ、仕方ない。文句でも言ってくるか」


シニストラの助言で理解したディバルはそのまま三人で転移した。




「ラソン様、あのお方は一体・・・」

「バーシカラ、余計な詮索はいけませんよ」

「ははぁ」

「まぁ神々が何をお考えなのか、わたくしにも解り兼ねますけど」

(やはり神であらせられたか・・・)

「でも、”このような事”はもう無いはずだから安心して研究に励んでね」


誰だぁ、勝手に光らせたのはぁぁ!!!

バーシカラとはもう会う事は無いのかなぁ?

“ドッキリ”はもうないよ。

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