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デスパラ=神として転生したオジサンは下界でパイ作り職人を目指す=  作者: 流転小石
第1章 異世界的紆余曲折
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第19話 バンピーレ王

数日後の宵の口、バンピーレの一行は十騎の飛龍で王都に訪れた。


吸血族(バンピーレ)の吸血王、ラモー・サム・クロストリジウムと、その妻のカレラ・ディタ・クロストリジウムに付き添いが三人と献上品を飛龍に背負わせてだ。


五体の飛龍の背に山の様に積み重ねて運ばれたのは葡萄酒と果物だ。


本来バンピーレの主食は血だか、一番の御馳走は人間の血だ。

勿論、普通の動物や魔物の血でも代用は出来るが、魔素を含む人族の血が味と栄養が均一していてバンピーレの口に一番合うらしい。

普通の動物は魔素が薄いので味気なく、魔物の血は個性が強すぎて臭いらしい。

以前、自尊心の強いクロストリジウムが空腹時に言った言葉がある。


「魔物の血を啜るくらいならば、この葡萄酒で空腹を誤魔化せばよい」


そして果物も大好物で普通の食事も可能だがバンピーレの栄養素は血液からの摂取である。

領土内には多くの葡萄畑や果樹園を栽培して船で輸出している程だ。

因みに船で貿易しているのはエジェスタス王国の港町である。


閉ざされた楽園だが、他国に逃げようとする人族は皆無だ。

クロストリジウムがある程度人族の自由を認め、人族の中で間諜を相手国に送り、その情報を人族達で判断させているからだ。

他国と比べ貧富の差が無く、とても裕福な者は居ないが貧困街など存在しない自分たちの街を比べれば、自ずと全員の意見は一致するからだ。



日差しから身を守る為に大きな布で全身を覆い、午後から国元を立ったが王城に辿り着いたのは、どっぷりと闇夜の降りた王国だがクロストリジウムと妻のカレラは驚いていた。

それは王国内の領土を空から眺めても解るほど巡回兵が多く見られ、飼育されている動物や広大な畑なども目に入ったからだが、それらよりも二人を魅了したのは闇夜に浮かぶ王城だった。


城下町は普通に明るいが、沢山の松明(たいまつ)の明かりに照らされて王城だけが巨大な松明の様に輝いて見えたからだ。

松明には片側に鎧にも使われる金属板を置き、明かりが城に反射するように工夫されていた。

闇夜で目立つが、戦時中ではなく平和な現在であれば遠く離れた王国内からも魔王の威光を示すべきと側近のリオが提案したものだ。

実際の所、夜行性の魔物も多く深い森でも高い木や小高い丘の上からならば、松明に照らされた王城の先端が見えるらしい。


「あなたぁぁ、アレを見てぇぇ」

沈む夕日を背に妻の指し示す方角は目的地に向かっているが、以前とは違う風景だった。

(あれは・・・もしや城か? 城が燃えている? イヤそんなはずは無い。どうなっているのだ)


先行のクロストリジウムと妻のカレラは飛龍の速度を上げ、城が燃えている理由を知りたかった。


「こっ、これは・・・」

「あなた、凄いわこれ。まるで王城だけが昼の様よ」


王城の周りを旋回する飛龍に乗り、珍しい風景を見ていたバンピーレの夫婦だ。

「綺麗・・・」

「やはり、新たな魔王は今までの奴らと一味も二味も違うらしい・・・ふははははははっ」


飛龍が降り立つ広場にも松明の明かりで煌々と照らされていた。

「待っておったぞ、クロストリジウムよ」

王城の広場で十騎の飛龍を迎えたのはパルビルブラだった。

「ふむ、空からの眺めも良い物だ。国内の変化が見れて良かったぞ」

「おおっ、そうかそうか。以前とは様変わりしていたであろう」

「全くだ。それにこの王城は良い」

「ふむ。最初は反対意見も有ったのだがな、今では夜に照らされる王城が当たり前になっとる」

「さもあらん。日中の城よりも闇夜に映える王城は素晴らしいな。我らも真似たいものよ」



一行は謁見の間に案内され、貢物も一緒に運ばれた。

「パルビルブラよ、城内だが以前よりも綺麗になってないか?」

「おお、やはり解ったか!?」

「どういう事だ」

「なに、即位早々魔王様に城が汚いと言われてのぉ、城全体を浄化されたのじゃ」

「なにぃぃ!! 城全体を浄化だとぉぉ!!」

夫が驚愕し、妻も警戒心が強くなった。

「案ずるな、クロストリジウムよ。魔王様から先に質問されたわ、浄化魔法を使ってはいけない種族を教えろとな。お前たちの事は説明してある」

「む、しかしなぁ・・・」

「パルビルブラ様、浄化魔法は我らにとっては致命的な魔法です」

「奥方の気持ちもごもっともであろう。まぁ、お会いすれば二人も解る事よ。フォッフォッ」



謁見の間では、聖魔王と聖魔女にウルサが待ち構えていた。



「バンピーレ族のラモー・サム・クロストリジウムと、妻のカレラ・ディタ・クロストリジウムだ。新たな魔王の就任、心よりお祝いする」


クロストリジウムは臣下の礼はとらない。

魔王とは同盟者であり、同等の力を持つ対等の立場だからだ。


「遠路はるばる、ようこそお越しいただいた。俺が新たな聖魔王アスラだ。そして側近の聖魔女リオとウルサだ」


クロストリジウム夫婦の眼に映ったのは、アスラとリオの額にある一本角だ。


そしてパルビルブラから聞いていた儀式に入る。

それは新たな魔王の力を見る為に、少量の血を与える事だ。



「ええっ、それって首に噛みつくのかぁ!?」

「いえいえ、指先をチクリと針で刺し、血を皿に付ければよいのです」

「なんだ、驚かすなよ」

事前に儀式を聞いた時は驚愕した聖魔王だった。



パルビルブラが用意した針を刺し、血を皿に乗せた。

と同時に、クロストリジウム夫婦の肌が総毛立った。

ドクンッ

(な、なんと言う・・・(かぐわ)しい匂いだ)

ドクンッ

(どういう事、匂いだけでこんなに体が反応するなんて・・・)


「さぁ、クロストリジウムよ。新たな魔王の血を受け入れるが良い」

小皿を受け取った両手は震えていた。

本人も理由は解らず、その姿を見ていたカレラも血を舐めたい衝動を抑える事で一杯だった。


ペロッ・・・

舌の上に広がる芳醇な血の味。

(凄い・・・)

未だかつてこのような濃厚な旨味のある血は初めて味わった。

その香しい血は濃厚な旨味を口いっぱいに広げ溢れてくる唾液に血が溶け込み、身震いするも我慢できずに飲み込んだ瞬間だった。


ゴクリッ・・・!!!!

「はうっ!!」


飲み込んだと同時にクロストリジウムの体に異変が起こったのだ。

身体からは魔素が溢れ出し、筋肉が見る見る膨れ上がり、長い銀髪が闘気で逆巻いていた。


「クロストリジウムッ、止めよ馬鹿者」

パルビルブラは豹変したクロストリジウムが反旗をひるがえした様に見えた。

「おっ何だ、どうなってんだ」

「あなたっ、落ち着いて!!」

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


身体が発光し爆発的に魔素を発散させると、その場が収束していった。

それはまるで長い時間を掛けて体が成長した感覚だった。

全員がクロストリジウムの居た場所を目視すると、上半身が裸の男が立っていた。

「クロストリジウムッ!!」

「あなたぁ!!」

「・・・こ、これは・・・なんと言う事だ・・・」

誰もが、目の前で起こった異常事態を理解していなかった。

「パルビルブラよ、我を見てくれ」

「む、見ろとは鑑定だな?」

うなづくクロストリジウムに魔法を使うパルビルブラ。

「何ぃぃっ、馬鹿な、有り得ん」

「どうなっていた?」

「ワシが知るお前の力を大きく掛け離れた・・・ワシをも凌ぐ強さになっておるではないか」

「何ぃ、やはりそうか・・・」

「あなた、どういう事か説明してくださるかしら」

笑顔を妻に見せてアスラの前に立つ。


「このような姿になり申し訳ないが、聖魔王様の前で忠誠を誓おう」

「なにぃ」

「何を言い出すの、あなた」

パルビルブラとカルラの言葉にも耳を貸さず話を進めるクロストリジウムだ。


「今後、定期的に貴方様の血を分けてくだされば、我が生涯を掛けて貴方様をお守りする事を約束しよう」

「あなた、どういう事か説明して頂戴!!」


目の前のドタバタ劇に呆気に取られていたアスラとリオだった。


「待たれよ!!」

それまで沈黙していたウルサが発した。

「ここから先は個室で行う方が良かろう。他の者も聞き耳を立てているからな」


「じゃ二人とパルビルブラも来ていいよな」

アスラがウルサを見るとうなづいた。


謁見は一時中断となり、個室へと場所を移した。

途中、ウルサが気を効かせてクロストリジウムの着替えと、何故かカレラの着替えも用意させた。



「では、さきほどの続きと参ろうか。クロストリジウムの誓いをお受けなさるか否か。お答えください、魔王様」

「確認したいけど、血ってさっきの数滴で良いのか?」

「数滴以上であれば、この上ない褒美でございます」

クロストリジウムは既にアスラの前で膝まづいていた。

アスラはウルサの顔を見るとうなずいた。


「解った。お前の誓いを受けよう」

「おおおっ、ありがとうございます」

そう言ってアスラの足に接吻した。

その姿を見て気が触れたと勘違いしたパルビルブラとカレラだ。


「クロストリジウムの誓いは受理された。では奥方はどうされるか?」

ウルサの質問に驚くカレラ。

「はいっ!? あのぉ何が何だかさっぱり分からないのですが・・・」


ウルサの眼には映っていた。

新たな種族となったクロストリジウムの鑑定だ。


「クロストリジウムは先ほどとは違う場所に至ったのだ」

「それはどういう事ですかな?」

パルビルブラの鑑定は漠然と力の数値を見る事が出来るものだ。

「ふむ、一つ上の種族に昇華したのだ」

「何ぃぃぃ!!」

「なんですとぉぉぉ!!」

「えええぇぇぇ!!」

本人も驚いている。


「今までは只のバンピーレだったが、真祖(ベルマ)バンピーレと言うべきか」

「おおっ真祖か、凄いな」

ウルサが教えるとアスラも前世の知識で知っていたようだ。


真祖(ベルマ)。我が・・・」

「本来は有りえない事だが、聖魔王様の血で覚醒進化したのであろう。いやはや、全くの想定外である」

ウルサが補足説明してくれた。

「この手は何故に赤いのだ?」

クロストリジウムの手は以前と違い高揚した肌の様に赤みを帯びていた。

「まさしく、それこそが真祖の証である」

「「「おおおおっ!!」」」

周りの者達は気にしていないがウルサが断言した。


「我が古き友が進化したとは喜ばしい事よ。して、奥方は如何なされるかな?」

「あなた・・・」

カルラが頬を染めて呼びかけると、クロストリジウムはうなづいた。

「お願いします、聖魔王様」

「ふむ、しかし聖魔王様には既にクロストリジウムの誓いを受けたばかりだからな」

何故かウルサが否定した。

「ええっ、わたくしは駄目ですかぁ」

「駄目ではない。もう一人血の誓いを受ける事が出来る者が居るであろう」

すると全員の視線がリオに集まった。


「えええっ、わたしぃぃ。そんな力なんて無いわよぉ」

「大丈夫だよ、リオ」

「どうか聖魔女様の御力を与え下さいませ」

渋々だが、その場の空気を読んで準備するリオ。

(もう、どうなっても知らないからねぇぇ)


準備が出来ると、アスラとウルサにパルビルブラは片隅で後ろを向いた。

先程と同じならば上半身の服がボロボロになるからだ。


リオの血が入った皿を夫であるラモーから妻のカレラに手渡した。

(あああっ、なんて芳醇な香りかしら。魔王様の匂いも良かったけどリオ様の匂いもたまらないわぁ)


ペロッ・・・・・ゴクリッ!!!

「あああああああっっ!!」

先程と同じなのは二回見ているリオしか分からない。

ラモーは自分が如何に豹変したのかを妻を見て理解した。


「はぁはぁはぁ・・・凄いわ、力が溢れてくる・・・」

用意してあった上着を羽織り、ウルサに聞いたリオだ。

「進化してるか確認してくれるかしら」

リオの問いかけに全員が振り向いた。


「おおおっ、奥方までも我を上回るとは。凄すぎるぞ、この夫婦は」

ちゃっかりと鑑定していたパルビルブラだ。

「ふむ、クロストリジウム同様に進化しておる」

ウルサの発言を聞き、リオの前で膝まづくカルラだ。

「わたくしも、定期的に貴女様の血を分けてくだされば、我が生涯を掛けて貴女様をお守りする事を約束しましょう」

リオもウルサの顔を見るとうなづいた。

「貴女の誓いを受けましょう」

「有りがたき幸せ」

そう言ってリオの足に接吻したカレラだ。




「いやぁ、久しぶりに王城に来てみるものだなぁ」

「そうね、あなた」

バンピーレ夫婦は上機嫌だった。


「今宵は二人の進化を祝おうではないか」

パルビルブラの提案で、その夜は盛大な祝宴が開かれた。


なんか進化してるし。

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