Alius fabula Pars19 四凶、四罪、四悪、四死
自室に戻りディバルの説明を聞いて同意したスクリーバとウルサにマリンキファは、夜の内にマリンキファの一個旅団を探査に向かわせた。
旅団の個体数は千体である。
万の個体を十の旅団に分隊して管理するのがマリンキファのマーテルだ。
ウルサの体から、ワラワラと一斉に飛び立つ光景は・・・
(ちょっとキモイな)
マリンキファに命じたのは、恨みを抱いて死にそうな子供たちを探す事だ。
恨みとは、子供達を苦しめた飢え、孤独、暴力に痛みと心の傷を負わせた同族に対してだ。
勿論理由がある。
純粋で知識が無い魂の方が御しやすいし願望も持ちやすいからだ。
そもそもは龍国内を見学した際に見つけた神々の失敗作を利用したいと考えていたからだ。
意図的に交配や進化を求めて、何かしらの不具合が生じた個体だが保存してあったり、作りすぎて保管してあった物を、許可を得てもらったのだ。
ディバルの計画では逆境に耐えて乗り越えた存在にこそ、新たな遺伝子変化や種族進化の可能性が有ると説明したのだ。
小さな期待だがゼロでは無い可能性に自然進化の醍醐味だと説いたのだ。
その起因となるのが”破壊と破滅”である。
そして、もらった”モノ”を依代にして餓えた魂を移すのだ。
新たな体を得た子供たちには教育と訓練が必要だろう。
暫くは精霊王たちに手伝う事を依頼するとスクリーバもウルサも協力的だった。
マリンキファには子供たちの性別も指示してある。
女の子が最低六人は必要だと。
それは用意してある”もらいモノ”に女性型も有るからだ。
翌朝早くから三人と一匹は貧困街に向かった。
日中は温かいが、明け方近くは寒くて身震いするほどだが、路上に寝ている者達が多かった。
マリンキファの指示の元、三人は貧困街の城壁近くにやって来た。
(この中です)
汚らしい建物と辺りから漂ってくる異臭が鼻につくが目当ての子供を探していた。
(この子達です)
そこには三人の幼子が横になっていた。
「起きろ、お前たち」
子供たちは意識が有り起きた様だが全く動かなかった。
全員の眼は窪み、虫の息だ。
「大丈夫か? 生きてるか?」
すると
「・・・お腹すいたよぉ・・・」
それは蚊が鳴くほどの小さな声だった。
他の二人も口をパクパクさせるような動きだ。
「よし、この子たちを一旦テトラに連れて行くぞ」
マリンキファに貧困街を調べさせて虐げられた孤児を回収したのだが、想像以上に子供達の体は悲惨な状態だった。
窪んだ眼は虚ろで光の無いものだった。
頬は扱け、体は骨と皮だけで生きている事が不思議な状態だ。
更に四肢のいずれかが骨折しており壊死が見られた。
テトラへの行き来を何度か行い、十六人の死にそうな子供たちを隔離した。
子供たちは、飢えと怪我に病気を患っている者も居て、あのままで居たら間違いなく餓死していただろう。
そんな十六人を予定してあった班分けして名を授けるつもりだ。
四凶、四罪、四悪、四死と言う班に分けた子供たちに幾つかの魔法を使うディバルだ。
薄汚れた身体と衣服を浄化魔法で綺麗にして個別に念話魔法を使い全員に念話出来るようにしたが肉体の回復は行わなかった。
(お前たち、聞こえるか? これは念話と言うものだ。お前たちは話さなくても心で思えば良いだけだ)
(えっ、心で話が出来るのか?)
(凄い)
(声が聞こえる)
(本当だ)
(お前たちの体はもうすぐ死んでしまう)
(((えぇぇ!!)))
(嫌だよぉ)
(死にたくないよぉ)
(お腹すいたよぉ)
(体が痛いよぉ)
(お前たち、自分が辛い思いをして悔しいか?)
(((・・・)))
(どうなんだ)
(((くやしいよ)))
(((お腹すいたよぉ)))
(辛かっただろうなぁ。でもお前たちの体はもう力尽きてしまう)
(((いやだぁぁぁ)))
(でもな、お前たちが妬みや、嫉妬に、憎悪と、食欲が誰よりも勝っていたなら、俺がお前たちに新しい体を用意してやろうと思っている)
(((ほんとう!?)))
(お前たちに必要なのは人としての優しさではなく、今まで酷い仕打ちを堪えてきた執念に怨念だ。それこそが力となって新しい体に移る事ができるんだ)
(((・・・)))
子供たちの半分以上が理解していなかっただろう。
数人は警戒してか敵意を向けた目でディバルを見ていた。
絶望のどん底に捨てられていた子供達は半信半疑でいるようだ。
絶望を理解できない幼子は虚ろな眼差しをしている。
しかし、ディバルは続けた。
(お前たちの未来は二つ用意してある。一つはここで元気になるまで腹いっぱい食べて、元の世界に戻る事。一つは新しい体に生まれ変わって、今までの復讐をする事だ。今のお前たちが何故こうなったのか、俺に細かく話す必要は無い。その原因にお前たちが恨みを晴らせば良いからだ)
(((・・・)))
ディバルの眼には考えている子供と、虚無を見ている子供たちが映っていた。
これは年齢による個体差によるものだ。
栄養失調で小さいが自称十二歳が最年長で、四肢が欠損し既に自力では立てない程の幼子は強制的に憑依させるつもりでいたディバルだ。
(僕と弟は生まれ変わりたい)
(わたしも)
(わたしもよ)
(僕も)
(俺もだ)
(((・・・)))
(分かった、お前たちの望みを叶えてやる)
結果的に意識が朦朧としていた子供を除けば全員だった。
マリンキファに調べさせて連れて来た子供たちは恨み、妬み、嫉妬、憎悪、食欲、家族欲、貪欲、力欲の強い者達で、スクリーバとウルサにも手伝わせて虐げられた孤児の魂を用意した依代に憑依させていくが、四凶四罪四悪四死の十六体は魔導写真を撮り、先に依代を変身させておいた。
(幼い子供たちの体がいきなり化け物だとまずいだろう・・・)
ディバルの配慮だが計画では”人が変身して強い獣人に変身させる”方が受け入れやすいと判断したためだ。
(他の子供たちも同様に大人の体に生まれ変わるのだからなぁ)
また、これを機にディバルは子供たちに新しい名を与え、強さの先入観を植え付ける。
人を憎み、世界を憎む魂を憑依させたのはホムンクルスや魔物を合成させて作られた実験体たちで、許可を得て龍国の資料室に保管してあった素体だ。
変わりに子供達の体は標本として保存する事とした。
子供たちの憎悪の原点を忘れた頃に思い出させるためだ。
子供たちは四つの班に分かれて憑依させていったが、子供たちの中に三組の兄弟姉妹が居たので同じ班か同種族に配慮した。
何故ならば一概に兄と姉の方が強い願望を持っていたからだ。
それは弟と妹の幸せである。
【四凶四罪】は10歳前後の魂を元としたキマイラ達だ。
四凶班は全員男型で共通魔法として変化魔法と回復魔法に気配隠蔽、暗視を与え、個別能力は二つ与える事にした。
色欲のフェントゥエンは犬翼人【身体能力強化魔法、ゼンチ魔法】
貪欲のタォティエは羊人【物理攻撃無効化、中級雷魔法】
乱欲のチャオウゥは獣翼人【状態異常攻撃、各種初級攻撃魔法】
力欲のチョンジィは虎翼人【中級魔法攻撃無効化、身体能力強化魔法】★弟
四罪班は全員女型で共通魔法として変化魔法と回復魔法に気配隠蔽、暗視を与え、個別能力は三つ与える事にした。
憎悪のゴンゴンは赤髪の巨蛇人【中級魔法攻撃無効化、猛毒攻撃、魅了魔法】
恨みのファンドゥは黒猫人【身体能力強化魔法、飛火、中級土魔法】★姉
妬みのグェンは鳥人【中級魔法攻撃無効化、飛火、中級風魔法】
嫉妬のサンミャオは白兎人【身体能力強化魔法、物理攻撃無効化、魅了魔法】
基本能力値は四凶が上なので、四罪には個別能力を多く与えてある。
変化魔法は変身魔法の劣化版だが、使用者の経験と練度で全身変化も可能となる為、人族の中で日中の活動も考慮して獣人の八人には頑張って欲しい所だ。
【四悪四死】は五歳前後の魂と兄弟姉妹をホムンクルスに憑依させて、人族の中で活動するために苗字を付けてやった。
四悪班は全てホムンクルス体で、元となる人族と似せてあり髪や瞳の色もまちまちで同じ魔法を持たせ、それぞれが潜在的な悪の意識を刷り込んだ。
人族に溶け込みやすい容姿だが、幼い魂に表面的な”普通を装う訓練”を受けた為、二重人格を持つようになった四人で、仲間意識があり他の十二人とは協力体制を持たせる予定だ。
バルカリア・ロバール(男) 逆切れ暴力悪は、直ぐに暴力で解決しようとする思考。
ペリキュローザ・ラガー(女)自己中心悪は、全て自身の都合の良くならないと許さない思考。
レピデウス・ガラマ(男)理想主義悪は、その理想の為に異を唱える者を排除する思考。
ゼニキュラータ・ダンバー(女)可虐性欲悪、性別問わず虐待する事で自己の欲求を満足させる思考。
四人の個別能力は二つで【男には身体能力強化魔法、女には魅力魔法、全員に回復魔法】を与えた。
更に四人は普段は至って普通の男女だが”ある言葉”で潜在悪に豹変する。
バルカリアは命にまつわる言葉。
ペリキュローザは善にまつわる言葉。
レピデウスは神にまつわる言葉。
ゼニキュラータは金にまつわる言葉。
四死班は全てホムンクルス体で耳に特徴があるエルフに容姿が似ている。
四人には共通魔法として【上級魔法攻撃無効化、物理攻撃無効化、回復魔法】と個別能力を与えた。
ウスタス・トリシュナー(男)は【上、中、低級水魔法】を使い溺死させる。▲兄
ラクタス・トリシュナー(男)は【上、中、低級火魔法】を使い焼死させる。▲弟
アルビダス・ラティ(女)は【猛毒魔法と状態異常魔法】を複数使い悶絶死させる。◆姉
フラジリス・ラティ(女)は【シンクウ】を極小から広範囲まで使い窒息死させる。◆妹
彼らの事を何も知らなければ普通の好青年や綺麗な女性とエルフたちに見える容姿だ。
そして十六人全員がスクリーバとウルサの教育を受けさせ、都合の良い部下にするつもりだ。
四凶、四罪は最低でも五年は教育が必要だろう。
なにしろ精神年齢が十歳前後なのだから。
四悪、四死は元の年齢を考慮すれば倍の十年は必要としていたが、何故かスクリーバとウルサは楽しそうだ。
子供たちの魂は幼いが、今までの辛かった記憶を留める為にスクリーバが魔法を使った。
記憶は成長と共に薄れゆき、いずれ忘れてしまうからだ。
今までの記憶を鮮明なまま永遠に覚えておく精霊魔法である。
四凶、四罪は獣人なのでウルサが担当し、四悪、四死は人とエルフ似なのでスクリーバが担当する。
更にメイド達四人はロングスが四凶、ブレビスが四罪、カウダが四悪、ドゥオが四死の担当をする。
人族的な考えの元、成人にあたる十五歳を目途に同伴者と共に下界での実施訓練を予定している。
その成人を目途にスクリーバとウルサは子供たちを自分の眷属にしようと目論んでいた。
子供たちは我らの手先として愚かな人族を滅ぼす役目を与えようではないか。
ふむ、我らがアルジ様もそのつもりのようだしな。
By Ursa & Scriba
北の精霊王ウルサは風の属性
南の精霊王スクリーバは火の属性
逆切れ暴力悪(短絡的に暴力を行う場合に使用する手段)
自己中心悪(ナルシストが強すぎる脅威)
理想主義悪(目標を正当化する為に他者を虐げる者)
可虐性欲悪
飛火=追尾式炎魔法。




