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デスパラ=神として転生したオジサンは下界でパイ作り職人を目指す=  作者: 流転小石
第1章 異世界的紆余曲折
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Alius fabula Pars18 城下町ジェスタにて

途中、野を超え谷を越え、いくつかの村落を越えてエジェスタス王国の城下町ジェスタに辿り着いた。


ディバルの第一印象は酷い王都だった。

商業が発展しているとの認識だったが、”百聞は一見に如かず”だった。

城門の周りには噴き溜まりの様に浮浪者たちがたむろしている。

その浮浪者達に金銭に余裕の無い者や、如何わしい者達が集まって集落を形成している様だった。


長い列を経て初めての王都の城門をと通る事となった。

並んでいる途中も物乞いの子供に老人が問いかけてきたが相手にしなかった。

全てを救う事が出来ないが、全てを不幸にする事は簡単だからだ。

現世から解き放つことが救いだとしても、第三者からすればそれは不幸である。

死は苦痛の現世を断ち切る事で昇華して幸福になると愚かな人族は説いているが、全くの無意味だ。

死は無であり、自我や意識も無い状態が死なのだ。

もっとも蘇生した者も記憶は無いし、経験者が居ないのだから仕方がない。



「我ら三人は旅人でフォルティス帝国からやって来た。エジェスタス王国では商品の買い付けを考えている」

「ふむ、旅人の認識票か、初めて見た」

既に何度目かの”初めて見た”だ。


難なく城門を通り例によってギルドへ向かった。

事前に知っていた事だが、旅人も倒した魔物をギルドで売る事が出来る。

旅人が出来ないのは”依頼を受ける事”だけだ。

他の情報を得たり、依頼する事は可能なのだ。


ディバルは道中で目に付いた魔物を多少確保してギルドで売る予定だ。

(何事も経験だからな)


何度か経験して初見のギルド訪問も簡素化した。

最初から威圧して注意を集め、悪意を感じた者は即座に”パン”だ。

疑わしきは悪、即、パンである。

その経験で威圧に対する敵意は警戒心の表れだと理解したからだ。


三人との対話や接触も無く、沈黙する者達は誰かが気づき騒ぎになるも無視してやり過ごすディバルだ。


王都の受付も巨乳は皆無で、キッチリとした制服を着用していた。

(まぁリアルってこんなもんだよな)

例よにって宿屋の紹介と魔物の買取を頼むと、違う受付に案内された。

狼系、ウサギ系、イノブタ系の魔物達を数匹づつ出した。

魔物よりも、忽然と取り出した事の方が驚かれた。

「次元収納をお持ちだったとは、恐れ入りました」

(次元収納? 国によって魔法名称が違うのか? それともギルドの呼び方か?)

「たいした事ないよ。収納力も小さいしね」

「この魔法をお持ちだけでも、とても有利な条件で仕事には困らないと思いますよ。はっ、だから旅人で買い付けをされているのですねぇ」

受付嬢が勝手にディバルの設定を始めていた。

「まぁそんな所さ。それよりも王都で一番の宿屋を教えてくれないか?」



港町ポリプス以降は街も小さく、他は村ばかりだったので”蛸壺の部屋”が良かったと思い返せるほどだった。

スクリーバとウルサからはテトラに戻り休憩を取ろうと提案されるほどだったが、この王都では一番良い宿に泊まると約束して、進められた宿屋の前に来ていた。


商業館アルボリウスは宿ではなく館と名乗っているのだ。

建物は石作りで五階建ての大きな宿である。

中に入ると前世のビジネスホテルを彷彿とさせる簡素な作りだが、今までの宿と比べると天と地ほどの立派な作りだった。

食事をする場所も広くて明るい店内だ。

部屋も食事も期待できると浮かれて受付に立つ女性に向かうディバル。


「旅人三人だ。食事付きで一泊頼む」

「個室ですか? 三人部屋ですか?」

「三人部屋だ」

「二階と最上階がございますが」

「・・・最上階だ」

「ではこちらの料金になります」


エジェスタス王国の宿屋は全て料金が細かく提示してある。

これだけは商業国家として良い事だと思ったが、流石に今回の料金は高かった。

(蛸壺の七倍かぁ・・・どれだけ違うのか見ものだな)


夕食は毎回食事付きで、単品も追加する事にしていた。

何故なら旅人だから、その宿の基準を知り土地の料理も堪能するのである。


まずは部屋の確認からだ。

五階までは階段で何度も行き来するのは面倒だろう。

鍵を使い、扉を開けると広い部屋だった。

今までで一番広くて綺麗な印象だ。

椅子の座面は柔らかく、寝台にもマット”らしき物”が敷いてあった。

当然の様に折りたたんである布も白かった。

何より、枕まで完備してあるのだ。

それらを見て感動するディバル。


「アルジ様、ご覧ください」

スクリーバが教えてくれたのは窓からの眺めだった。

薄い灰色の石壁に赤茶色の屋根が夕日に映えて国内を一望できた。


「流石に五階からの眺めは良いな」

「建造物が遠くまで続いておりますな」

「人工物も見方によっては美しいが、所詮は”うたかた”か・・・」

「アルジ様、うたかたとは?」

「水辺にあぶくが出来るだろう? (はかな)い一瞬の美しさも時が過ぎれば無に帰してしまい記憶の中で思い出すことさ」

「なるほど、一時の美を心に刻む事ですな」

「そうだな、誰と体験したのかも重要だぞ」

「我らはいつまでもアルジ様と旅のお供を致します」


しばしの景色を堪能した後で夕食を取りに食堂へ向かった三人だ。

宿泊に付いている夕食と単品を三つ頼み辺りを観察していた。

ほとんどが商人の様な人族で、冒険者風な護衛が数人見受けられた。


「お待ち同様ぁ、単品はもう少し待ってねぇ」

「ちょっと聞きたい事が有るけど良いか?」

「なんだい?」

給仕のお姉さんに聞いてみた。


「街の外には沢山の浮浪者がいるけど街中には居ないのか?」

「あんまり大きな声では言えないけどさぁ、西の地区には貧困街があるから近づいちゃ駄目よ」

「貧困街!? なんでこの国に? そもそも外の人たちは他所から来たのか?」

「違うわよ。みんな街の住人だったの。でもね、政治が腐敗しちゃってこの有様よ」

「しかし食べ物が無いと死人も出るだろう」

「当り前じゃない。毎日沢山死んでるわ。子供なんて本当に可哀そうよ、ガリガリに痩せこけちゃってさぁ」

「それは・・・危険だねぇ」

「そうよ、だから近づかない方が良いわよ。身ぐるみ剥がされる事になるからね」


そのあと追加の料理を食べているとスクリーバから質問が有った。

「アルジ様、随分とご機嫌が宜しいようで」

「ん? 解ったか?」

「確かにここの料理は今までで一番の美味ですな」

「確かに美味しいな」

(とは言っても普通だ)

「俺が浮かれているのは食事のせいでは無いぞ」

「そうおっしゃられると?」

「うむ、明日の朝、貧民街に出かけるぞ」

「しかし・・・」

「まぁ待て、詳しくは部屋に戻ってから説明しよう」


改めて魔法名パンの説明。

発動結果の意味を理解し、視覚で対象者が認識され効果音で発動する小規模の爆発魔法。

照準は認識した対象の脳漿の中心で間脳だ。

間脳を破壊されると全ての自律神経が途絶え、同時に大脳の中枢神経も破壊される。

これにより多少意識は有るが体は動かせず痙攣し泡を吹きながら”もがき苦しみ”死に至る。

ディバルの”ゼンチ”は目視せずとも認識する事が可能。

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