Alius fabula Pars17 ギルドにて
翌日、エジェスタス王国の首都に行くのでギルドで道中や周辺の事を聞きに向かった。
前日と同じ受付嬢に話をした。
「おはよう」
「おはようございます。宿屋蛸壺どうでしたか?」
「ん~宿屋ってあんな感じか?」
「このポリプスではそれなりの宿でしたがお気に召しませんでしたか?」
「ん~食事がねぇ期待したほどでは無かったなぁ」
「もしかして宿泊者専用の料理を食べられたのかなぁ」
「と言うと?」
「単品で頼むと美味しい料理が出て来るので私もたまに食べに行きますよ」
「そうだったのか。残念だが次回の楽しみに取っておこう」
「私も細かく教えずに申し訳ありませんでした」
「いいよ、別に。それよりも王都に向かう道や注意箇所とか有れば教えて欲しいな」
「解りました」
受付嬢が簡単な地図を出して王都までに出てくる魔物や盗賊が出没する箇所を教えてくれた。
「兄貴、アイツらです。”クソーカスの兄貴”が絡もうとした奴ら」
「よし俺が代わりに締め上げてやる」
昨日の五人以外にも下っ端が居たようで、仲間を引き連れてギルドで張っていたようだ。
もっとも当事者にとって悪意を持って近づく者には容赦しない三人だが、悪意を持つ者も自分たちの都合の良い解釈をしている。
「兄貴の仇を取って有り金全部頂いてやるぜ。この人数だから命も落とすかもな、へへへ」
下っ端がディバルの魔法を知る訳がない。
しかし昨日、適当な因縁を付けに三人に向かっていたら急に倒れたのだ。
下っ端は何かされたに違いないと思い込んでいる。
当たっているがディバルにとっては迷惑な話なのだ。
「おい、オメェら。昨日はよくも俺の兄弟を殺ってくれたなぁ、どう落とし前を付けるつもりだぁ!!」
「「何ぃ!」」
「待て」
「「はっ」」
最小にしてある自動防衛魔法の範囲外からの問いかけにスクリーバとウルサが即座に反応するも、ディバルが静止した。すると
「待ってください。昨日の五人とこの方たちは関係ありません」
昨日もその場に居合わせた受付嬢が弁明した。
「関係無くても俺たちがこいつ等に用が有るんだよ、ねーちゃん」
ディバルは任意で防衛魔法を解除した。
「こいつらは冒険者か?」
「一応ですが・・・」
「乱暴者で嫌われ者か。弱者から金品を奪う事が目的だな」
「証拠は有りませんが被害届は出ています」
「解った。任せてくれ」
受付嬢は困惑していた。
目の前で旅人が悪者の餌食になりそうだからだ。
「お前たちの仲間を全員連れてこい」
「何ぃ!?」
「仲間を全員連れてこいと言ったのだ。金なら沢山あるぞ」
するとディバルの手から金貨が溢れて来た。
「おぃ、てめぇら。仲間を呼んで来い!! 直ぐにだ。行けぇぇぇ」
「ギルド内でこいつらと関係ない奴らは離れてろ!!」
チンピラ冒険者よりも大きな声で一般冒険者の誘導を促したディバルだ。
敵対する冒険者たちは睨みつけている。
対峙しているのはスクリーバとウルサだ。
ディバルは先ほどの続きを受付嬢に聞いているのだが、当の受付嬢は気が気では無かった。
すると駆け付けた冒険者仲間が総勢二十五人居た。
明らかに冒険者とは呼べそうに無い者が半分だ。
「さぁ、どう落とし前を付けるつもりだぁ。金出すなら有り金全部寄越せやぁ」
すると振り向いたディバルが二つの魔法を放った。
ドタドタと崩れ落ちる自称冒険者たち。
両手両足が付け根から切断されているにも関わらず、血が流れていないのだ。
何よりも”静か”だった。
自称冒険者は口をパクパクさせているが声は出ず、苦悶の表情を浮かべている。
ディバルが使ったのは、”シダン”と消音魔法だ。
「これは・・・一体どういうことですかぁ!!」
「この街の乱暴者で嫌われ者に罰を与えたのさ」
「確かに嫌われてるし懲らしめて欲しかったけど・・・」
「それが今な訳だよ。この魔法は特殊でね、最上級の治癒魔法でしか治せないのさ。そしてこの国に最上級の治癒魔法を使える者はいない。まぁ手足が無くなって話す事も出来ず、永遠に激痛が走るから今まで犯した罪の痛さを体感して死んでいくよ」
「そんなぁ・・・」
「まぁ後片づけはお願いするよ。裏の解体廃棄所にでも捨てておけば良いさ」
「でもぉ・・・」
「俺たちの事を報告する義務が有るからか?」
うなづく受付嬢。
「君もこの街の人たちも、こいつらに嫌がらせを受けていたんだろう? 因果応報ってやつだ。そして俺たちは只の旅人でギルド職員さんは何も知らない。街に不定の輩が居なくなって活気づくよな。良い事ずくめだよ」
「確かにおっしゃる通りです・・・」
受付嬢は浮かない表情だ。
「仕方ないなぁ」
そう言ってディバルは受付嬢のおでこを触った。すると
「あれっ!? 私、ええぇぇぇぇっ!!」
目の前の惨状に驚く受付嬢だった。
ディバルは数分間の記憶を魔法で消したのだ。
「どうなってるんですかぁぁ、これぇぇぇ!?」
「解んないよ、急に倒れだしたんだ」
「とにかく手当をしないと」
ギルド内には多数の職員が居るがディバルの話を聞いていたのは受付嬢一人だ。
ギルド内が慌しくする中、ディバル達は平然と出て行った。
ギルドでは手足が切断されて声も出せずに苦悶の表情となる魔法など誰も知らなかった。
冒険者たちも噂をするが、何かしらの呪いの類いを掛けられたと言い張る者が多かった。
それだけ迷惑な連中だったのだろう。
旅人が居合わせた事実をその場に居た冒険者たちは一切話さなかったが、話を盛る者は旅人の呪いだと騒いでいたほどだ。
当事者だった受付嬢も聞き取りされたが、肝心の記憶が無いので旅人の事は忘れ去られていった。
悪即滅




