Alius fabula Pars 13 独り言
龍国の居住区で下界の景色を眺めながら、物思いにふけっている男が居た。
(この世界に来て体が出来るまで下界を眺めていたがつくづく思う。種族の法など、力の無い者にとっては無意味だと。まぁ前世も、現世も実際の法は違えども泣くのは力の無い者、権力の無い者、金の無い者、声の小さい者だ。そして相対する者が良い思いをしている場合が多いよなぁ。真面目に生きる者、正直者の多くが辛い目に合っているのが現状だし。でも当事者にとっては刻々と過ぎゆく生活の中で訪れる多くの選択肢を、自然な振舞いで偶然や必然的に行った結果なのだろうが実際は運の要素が強いみたいだな。・・・俺は運が良かったのかなぁ?)
その運は因果のめぐりによって幸と不幸が訪れて種の進化へと発展していくようだ。
進化とは種の発展の過程である。
劣悪な環境に適合し次世代を残せる個体だけが変化出来て生き残れるのだ。
龍国で聞いた下界の進化とは・・・
大規模な地殻変動と稀に落ちてくる隕石や、周期的に訪れる宇宙線電磁波による”定期的な環境変化”だ。
もっとも身近な所では種族や生態系を問わず襲い掛かる疫病などがこれに相当するらしい。
何度も訪れた大量の宇宙線と電磁波が降り注ぎ度重なる氷河期が起こったらしい。
稀にある全球凍結する氷河期などが終わると、大地が活性化するごとく大規模な地殻変動が起こるそうだ。
繰り返す極寒気と極暑期。
地殻変動が大陸の分裂と衝突で起こす大噴火と地震による津波は小さき者達にあがなう術は無いようだ。
大噴火や放射線が生物の突然変異による進化をうながし、大陸の分裂と統合で更なる種族や文明の淘汰が多様な進化を加速させたと聞いた。
自然界の試練や、目に見えない細菌やウィルスの発生による大量絶滅に対抗するのは生存本能による遺伝子変化だ。
何度も言うが、大陸の結合で起きる種の混同で多様化する変化から進化し、そうでない者たちは淘汰されていく。
だが人族の未来は進化だけでは無い。
偶然が重なる事で、同じ確率で退化も起こる。
典型的な例は人族から猿人とも原人とも呼ばれる個体に退化し、文明を拒絶し僻地で孤立して生活する種族もいる程だ。
進化も退化も大陸の離合集散と”奇跡的な偶然”が関係あるらしい。
地殻変動は急速な速度で進み、生命の進化も急速な発展と衰退をもたらしたそうだ。
まるで何かの意思によって行われたかのように・・・
それまでの文明は地殻変動で大地に深く飲み込まれ、地震の影響で起こる津波が跡形もなく文明を飲み込んで行った。
多くの文明が火山による噴火や、大地の衝突により地中深くに沈み、地熱で溶けてしまったのだ。
だから現在も未来も痕跡を辿ることは出来ない。
地上世界を支配していた生物の度重なる種族交代で次の時代を作る進化が芽生えて行ったらしい。
だが遠い未来、地殻変動は”ある理由”によって止まっていると感じる程、遅くなってしまう。
(どうせ消えてしまう文明だったら、俺の好きな様に手を出しても良いかなぁ。だったら、あんな事も、こんな事も、そんな事も・・・。いろんな事を試してみるのも面白いなぁ。この世界をたのしむ事を考えるか・・・)
龍国にいる間、下界を散歩して異世界を体験したいと考えていたディバルは、どうせなら小説にしたかったプランを実行すべく準備に取り掛かった。
龍国に存在する現在の世界地図を見ながら構想を立てる。
(エルヴィーノが関与している国には手を出さない事を前提としたら、この大陸か、こっちの大陸だな)
現状いくつかの大陸が存在するが、高度な文明を持っているのはエルヴィーノが関与している国だった。
直接関与は無くとも陸続きで別の国は選択肢に無かった。
(やっぱ、この大陸かこの大陸だな・・・)
片方は比較的小さな大陸で、文明の発展は遅い。
もう片方は大きな大陸だが、国が乱立して絶えずどこかで戦乱が起こっているらしい。
(これは誰かに聞かないと解んねぇなぁ)
下界の事はバレンティアが詳しいとの認識があったので呼び出す事にした。
「お呼びでしょうかディバルシス様」
「この大陸の事を聞かせて欲しい」
机にあった地図を見ながらバレンティアに問いただした。
「この大陸は我が管轄となっております。何度も文明が滅びましたが現在発展期を迎えておりまして多数の国が覇権を争っている状態でございます」
「そうか。文明発展度はエルヴィーノが関与している国の方が上だな?」
「はっ、おっしゃる通りでございます。我が管轄ですが直接文明発展に手を下す事は禁じられているので、若干遅い発展具合です」
「そうか。宗教はどうなってる?」
「はい一応、龍神信仰がございましてバリカタ教と申します。ほかにも土着の宗教が幾つか存在しております」
「なぁ、それってお前を奉ってるのか?」
「はい、姉を見習っております」
「じゃ天啓とかしてんの?」
「人族の絶滅に関する場合のみですが、我が管轄には龍種も多数生息しておりまして、そちらの種族には連絡していて稀に会う事も御座います」
「ふぅむ・・・」
ディバルは試案を巡らせていた。
「ディバルシス様、我が管轄に降臨なさるおつもりでしょうか?」
「ん? 降臨なんてしないさ。ちょっと散歩するだけだから」
「・・・ですが、もしも下界に降り立つのであれば、ご案内致しますのでお呼び下さいませ」
「大丈夫だ。スプレムスには承諾させたし、配下の者も用意してもらったから、あとは棲家をどうするかなんだ」
「棲家? 棲家とは下界での滞在地でございますか?」
「そうだな」
「それでしたら大神様にご相談された方が宜しいかと存じますが・・・」
「待て待て、アレに言うとややこしくなるから俺とお前だけで決めたいのさ」
「そんなぁ・・・」
バレンティアの思考は誰にも相談せずに創造神の要望を受け入れて何かを作り、眷属や大神に怒られる事を恐れていた。
「ディバルシス様、せめて住処を作成する前に我から大神様へ報告しても宜しいでしょうか?」
「・・・解った・・・」
ホッとしたバレンティアだ。
「ただし、決めた事は変更無く実行してもらうぞ」
「はっ、畏まりました」
大神であるスプレムスに報告さえすれば、両方の責務を全うしてディバルの無茶な要望を受け入れつつ眷属に迷惑が掛からないように出来るからだ。
「では、どのような城をお考えでしょうか?」
「城ぉ!? 城なんていらないぞ。普通の屋敷だ。まぁ間取りは考えてあるが、それよりも屋敷を移動させる手段を思いついたのさ」
「屋敷を移動させる手段でございますか?」
「そうだ。巨大な岩のゴーレムが両手で持ち歩くのさ」
「・・・はぁ・・・」
バレンティアはディバルの構想を思い浮かべた。
「さ、流石は創造神様。我らでは思いもつかない発想でございます。それでは大神様にご報告に向かいますので」
「ああ、頼んだぞ」
とりあえずバレンティアに丸投げしてしまった。




