Alius fabula Pars 12 サルクロス王国にて
夕食も済み、二人が居間でくつろいでいるとメルヴィから重要案件が飛び出した。
「あなた、大変よ。龍国から極秘でお客様がお見えになるわ」
「何ぃぃっ!!! 龍国からぁぁぁ!!」
封印のメルヴィから下界のメルヴィに即座に念信が送られていたのだ。
「それで誰が来るんだ?」
「とても偉い方よ」
「マジか!!? コラソンより?」
「そうよ。コラソンも呼んだ方が良さそうね」
「・・・どうしてまた俺たちの所に来るんだ?」
「どうやら私たちの国を見学したいそうよ」
「それで、いつ来るんだ?」
「明日の朝かも」
「急だな」
「でも特に何も用意しなくても良いって」
「そんな訳にもいかないだろ。母さんにも会うのかな?」
「解らないわ。シーラちゃんにも言っとく?」
「その方が良いだろ。後で知らなかったなんて事になれば暴れるぞ」
「そうね・・・連絡するわ。それよりもあなた、くれぐれも粗相の無いようにね」
龍人達よりも上位の存在であるコラソンも親しげに接してくれているので龍国には親近感を抱いていたエルヴィーノだ。
「それってマジなヤツか?」
「勿論よ。コラソンも緊張するはずよ」
「ええっあのコラソンがぁ!!」
エルヴィーノが驚いている中、メルヴィはディバルを迎え入れる為の準備を始めようとした時、封印のメルヴィから念信があった。
(ちょっと良いかしら、今回は冒険者と同行する旅人としての訪問なので普通に対処して欲しいって言われたけど、どうする?)
(どうするもないわよ。女王にも会うべきじゃない?)
(普通の旅人って女王と会えるの?)
(・・・会えないかも・・・)
(とりあえず二人で対処したら?)
(シーラちゃんには教えなくていの?)
(忘れてたわ)
(じゃ謁見とか無くても良いのね?)
(ええ、観光されるそうよ。それと正式にエルヴィーノと会いたいらしいの)
(な、なんでよぉぉ)
(分からないわよ。とにかく、シーラちゃんにも言い聞かせておいてね)
(わかった・・・)
ディバルがエルヴィーノに会う事に警戒は無かったメルヴィだ。
何故なら神の思考は男寄りだと感じていたからだ。
これが女寄りで、作られた身体も女型であれば猛烈に抵抗していただろう。
翌朝、活気づいた街並みの入り口付近に設置されている転移場所にやって来た五人だ。
ディバルの目的は三つあり、エルヴィーノと懇親を図る事と現地視察と言う旅行と食べ歩きだ。
出迎え不要とし昼食を取りながら交流を考えていた。
「おおぉぉっ。いろんな人種が居て活気づいてるなぁ」
ディバルの第一印象だが、自らが設定したとはいえ現実にその風景と街並みに喧騒を聞けば感慨深いものがあった。
初めての下界で初めての街に暮らす様々な人種。
そして肉串だ。
「これだこれ。肉串を食うぞぉ」
即座にスクリーバが屋台で売っていた肉串を買った。
バクッ、モグモグモグ・・・
「旨い!! 旨いぞ肉串はぁぁ!!」
湖畔から湖に浮かぶ城の景色を眺め堪能した後は教会に出向いた。
そこには予定通りにエルヴィーノとメルヴィが待ち構えていた。
「やぁ待ったかい?」
「ようこそ、いらっしゃいました。ディバルシス様」
メルヴィと挨拶した後で隣に居た男に声を掛けた。
「”はじめまして”モンドリアン。俺はディバルシスと言うが気軽にディバルと呼んで欲しい」
「どうも、モンドリアンです」
「どうした? 固いぞ」
「そう言われましても、お会いしたばかりなので・・・」
「そんな事を気にする男じゃないだろうに。なんなら親しみを込めてエルヴィーノと呼ぼうか?」
「ディバル様のお好きなように・・・」
「んんっ? さてはメルヴィに何か言われたか?」
「い、いいえ何も・・・」
「まぁ良い。とにかくお前とはざっくばらんに話がしたいのが俺の本音だ」
「はあ・・・」
「とりあえず教会内を見た後で港町に行くぞ。そこで食事だろ?」
「はい、おっしゃる通りです」
メルヴィは何故ディバルがエルヴィーノに親しくしたいのか疑問だった。
封印のメルヴィからディバルの意図は聞いてはいたが、どうしてなのか見当が付かなかったからだ。
(エルヴィーノと友達になりたいっておっしゃられたわ)
(なんでエルヴィーノなのよ)
(知らないわよ)
(全く何をお考えなのかしら・・・)
(でも悪い事じゃ無いわ)
(確かに。創造神様に目を付けられるなんて流石よ。そっちのエルヴィーノは良いの?)
(アレは私達だけの男だけど、下界のエルヴィーノは皆と共有する存在だそうよ)
(ふぅぅん・・・)
何故か釈然としないが納得した下界のメルヴィだ。
「ディバルシス様、こちらが勇者の称号を持つシーラ・ジャンドールです」
メルヴィの紹介で、一歩後ろに控えていたシーラが紹介された。
「初めまして。シーラ・ジャンドールと申します」
「おおっ実物の方が遥かに美人だな、エルヴィーノ。羨ましいぞ。おっとディバルシスだ。よろしくなシーラ」
「は、はい・・・」
いきなり褒められて頬を染め思考が真っ白になったシーラだ。
何故なら直前までインスティントからの念話で、決して粗相の無いように余計な発言をするなと、うるさい位に念話されていたからだ。
メルヴィからスクリーバ達の紹介をされた後、教会内に安置されている五体の像の説明を真剣に聞いていたディバルだった。
その後、城下町から港町を見学し目的地の海鮮料理屋に着いた。
「ようこそ、お待ちしておりましたディバルシス様」
待ち構えていたのはコラソンだった。
「やぁコラソン。今回はお前が厳選した料理らしいな、楽しみにしてるぞ」
「はい、お口に合うように取り揃えましたのでお楽しみ頂ければ幸いでございます」
コラソンが普段使わない丁寧語で会話する姿を見て緊張するエルヴィーノだ。
この料理店はエルヴィーノがコラソンの為に作ったと言っても過言ではない。
地下に秘密の食材保管庫が有ったり、コラソンがどれだけ食事しても費用は全部エルヴィーノ持ちだったりするが、今回コラソンが厳選したのは調理方法で食材は五人の龍人が世界中から集めた美味しい物だ。
朝早くから料理たちに試作を作らせて自分たちで味見を繰り返したのだ。
もともと料理に定評があった高級料理店の食材を更に希少な食材に変えて作らせたモノが不味い訳が無い。
「旨い!!」
「美味しい・・・」
「ホント美味しいね」
ディバルは城や街の美しさを評価しながら美味しい食事に舌鼓を打っていた。
「所でエルヴィーノは知ってるか? ここでは無い地方や、別の大陸にも勇者や魔王が存在している事を」
「・・・知らないし、初耳だけど」
「本当ですか? ディバルシス様」
シーラも知りたがっていた。
「まぁ自称だ。俺は金持ちだぁって言ってるのと同じだよ。そもそもお前たちの称号は誰が付けたか知ってるか?」
「「ええっ!?」」
エルヴィーノとシーラの目線が泳いだ。
「まぁ、神に近い存在だな」
「か、神様ぁぁぁぁ!!」
「そうか・・・」
シーラは驚いているがエルヴィーノは困惑している様だった。
「まぁその存在はお前たちしか認めていないから安心して良いぞ」
(別に認めてもらわなくてもなぁ・・・違う称号だったら良いけどよぉ)
誰かの心の愚痴が数人にバレていた。
「まぁ世界にどれだけ自称魔王が居たとしても、公認の大魔王はお前だけだから自信を持てなエルヴィーノ」
「公認って・・・それに俺は言いふらさないし自覚も無ぇよ」
「それでこそエルヴィーノだ。ハハハハッ」
普段はコラソンもメルヴィも気楽に話しながらの食事だが、全員が重く口を閉ざしていた。
「所でエルヴィーノ、お前に協力してもらいたい事がある」
「はい、何でしょうか?」
「今ではないが、そのうち相談する事が出てくるから頼むな」
「は、はあ」
「多分その時はメルヴィやシーラにもお願いするかもしれないが頼むな」
「「はい」」
美味しい食事とディバルの目的は達成できたので次の場所に向かう事にした。
「みんな今回はありがとう。特にエルヴィーノと交流できて良かった。これからも宜しくな」
そう言って手を差し伸べたディバルだ。
その手を握った瞬間、エルヴィーノの頭に声がした。
(黙ってよく聞け、これは接触型の念話だ。通常の念話と違い、盗み聞きされることは無いから安心しろ)
笑顔のディバルだ。
(いずれお前には別の大陸で頼みたい事がある。ん? お前にとってはたいした事じゃないぞ。俺はお前に依頼するだけだ。俺の依頼とは別にお前がどんな行動をしても俺は関与しない。いいか? 関与しない)
(はぁ・・・)
(お前の知らない大陸の綺麗なお姉さんが誘惑しても俺は全く関与しない。お前の自己判断で行動して自己責任だ)
(ええっ!!)
(余計な事は言うな。ニヤニヤして顔に出すなよ)
「じゃそんな訳だ。メルヴィ、コラソン、シーラ楽しかったぞ。エルヴィーノ、連絡するからな」
「あぁ分かった」
真剣な表情で目が輝いていたエルヴィーノだ。
慌しくもディバル一行はどこかへ転移していった。
(ディバル・・・良い奴かも・・・)
大魔王チョロと変えるべきか。




