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第49話 拳王本戦2

三戦目は二戦目と同じく人狼族対人族の対戦だ。

人狼族サロイ対人族ハクダックの対戦が始まるや否や、直前の試合と同様の展開と誰もが思ったが、明らかに違いが見てとれた。


それはムーアからのアドバイスが功を奏したのだ。

それは、"普段より半歩広く間合いを取る"だ。

だがその助言を即座に実践で使いこなすのは容易では無いが、流石に教会のモンクと言えよう。


ムーアと違いハクダックは、爪の攻撃を余り受けていないのだ。

その分、ハクダックの鉄拳も同様で確実にヒットするには、お互いにもう半歩足りなかった。

だが、拳と爪が空を切る中で体術も織り交ぜようとするハクダックだが、腕を掴もうとする動きを見て距離を取るサロイ。


膠着状態の中で時間切れの鐘が鳴る。

前回同様に四人の審判が意見を交わし勝者が決まった。



「三回戦の勝者は、サロイ‼︎」



闘技場は歓喜する者と批判する者で分かれた。

確かに両者余力は有るようで、勝者のサロイも不満の様だが決められた時間無いで結果が出なかった為、観客に分かりやすくサロイが勝者となった。

分かりやすい点はハクダックの傷が多く血を流しているからだ。

勿論、軽装備の鎧を身に付けているが、サロイの爪攻撃で半壊状態となり出血が見られたからだ。

モンクの攻撃は打撃なので明らかに不利だが、そこで不平的な言動は出さないハクダックだ。

自らの修練が足りないと自覚し、再戦を望むモンクがいた。

「次に会う時は必ず捻じ伏せてやるからな!」




時間を空けて四戦目だ。

闘技場は盛り上がっている。

何故なら前回同様に人狼族と人族の戦いだからだ。

今までと同じく自分たちの勝利だと歓喜する魔物たち。

次こそは勝てと鼓舞する人族たち。

対戦は人狼族ルモン対人族ハリガーネだ。




余談だが巨猿族の男型は短足長腕で、女型は短腕長足だ。

体型で言えば男はゴリ似である。

そして女は人族と類似している。

女の手足の長さも違えば体つきも華奢だ。

これも鼻の高さと同様に巨猿族の特徴だ。

しかし、性格は違う。


普段の男たちは戦闘以外は大人しく温厚だ。

だが、女たちは高飛車で我が強く常に上から目線だ。と、言っても同族間だけである。

そんな女たちに対して男たちは、巨猿族を知る者はほぼ全て、呆れている。

どんな無茶な要望にも真摯に対応するのが男たちなのだ。

そんな哀れな男たちが唯一不満を発散出来るのが体術や武術である。

有り余る力を効果的に使う者もいれば単に暴れたいだけの者も存在する。

魔王国では無手で戦うならば最強の種族であるのは周知の事実だ。




ルモンとハリガーネの対戦は呆気なく終わった。

ルモンが人族を舐めていたのか、ハリガーネが思っていた以上に強かったのか、終わるのが早過ぎて分からないのが実態だ。


両者は前者たちと同様に闘技場中央で激突したが、ルモンの爪攻撃を繰り抜け腹に拳を埋め込むハリガーネ。

その後、後ろに回り込み首を絞める。

ハリガーネの両足は片腕と腹を締め付け、互いの左手同士がもつれて戦闘不能。

一気に右腕に力が入り、ルモンは悶絶して気絶。

一列が流れる様に即座に行われてハリガーネの勝利となった。


その動きは歴戦の強者には分かるであろう、"戦場に溶け込んだ"素早い動きだ。

そんな動きは魔物たちを釘付けにした様だ。


厳密に言えば絞技は拳技では無いが勝ちは勝ちだ。

観衆の面前でルモンの戦闘不能状態とハリガーネの勝利言動で観客は沸いた。



闘技場の熱気が冷めやらなぬまま、第五戦目だ。

人狼族シグル・ノーザ対、巨猿族ビカルの戦いだ。


試合前、ビカルは仲間と相談していた。

それはどの程度戦い、どうやって戦意不能にするかだ。

何故なら対戦相手のシグル・ノーザの親は魔王国の重鎮で有り、戦さになれば種族を超えて権限を持つからだ。


無論、その程度の根回しは事前に行なっている巨猿族だ。

もしも仮に対戦相手が人狼族となった場合を想定して族長同時が話しを付けてある。


「手心無用、むしろ手加減したと分かれば後々の遺恨となる。例え絶命したとしても本人の技量の無さで有り全力を望む」


これが族長の返事だった。


「そんな事言ったってよぉ」

「なぁ、娘だぜぇ」

「どうすりゃぁ良いんだ!」

「だから、ちょこっと手を抜いてよぉ」

「バレたらどうすんだよ」

「それは・・・上手く誤魔化せよ」

「簡単に言うな。はぁ、何で俺の相手がノーザ様の娘なんだよぉ」

「おい、決め手はどうするんだ?」

「それだよ」

「知らんぞ、顔に傷付けるなよ」

「怖い事言うな」

「お前、一生恨まれるぞ」

「よし、顔は狙わん」

「どうすんだ?」

「腹狙いだ」

「・・・手抜きだってバレるぞ」

「・・・じゃどうしろって言うんだよー」

「そりゃ腕か足くらい折るとかよ」

「お前、他人事だと思って凄い事言うな」

「仕方ないだろうに」

「ノーザ様の娘だぞ‼︎人狼族を敵に回す気か‼︎」

「お前がな」

「この人で無しがぁぁぁぁ!」


とある巨猿族たちの会話である。

以外とシグル・ノーザは同族に人気があるようだ。

巨大な体で細心の注意を払い、対戦を誰かに代わって欲しい本音は口に出さなかったビカルだ。


そんな対戦相手の心情などいざ知らず、女性選手シグル・ノーザは"かの試合"に感化されていた。

それは女剣王ファルソの戦いである。

自分も勝ち進んだのちに女同志で共に頂点に立つ事を夢見る乙女である。


ポッと出のファルソだが、今や絶大な人気を誇り特別扱いを受けている。

最たるは魔王と聖魔女の同席を常として、一人になる事は無いが、真実を知る三人で相談して決めた事だ。




(顔は狙わず、腕が足を折れば・・・)

ブツブツブツ・・・


カンカンカン!


試合開始の鐘が鳴ってもビカルは動かなかった。

脳内で戦闘予測に余念がなかったが、既に試合は始まっていたのだ。


(ゲッ!いつの間にシグル様がっ!)


そのシグル・ノーザが襲って来た。

シグルの爪攻撃が連続してビカルを襲う。

後ずさりしながらシグルの攻撃を(かわ)すがシグルの攻撃が終わる事は無かった。


シグルの連続攻撃が続く中、体勢を崩したビカルが咄嗟に裏拳を放つとシグルに直撃した。


物凄い勢いで吹き飛ばされたシグルに驚いたビカルだ。

吹き飛ばされたシグルは横たわった動かなかった。

青ざめるビカル。

「審判っ!」

審判員を呼んだビカルも慌てて駆け寄る。


「シグル!シグル!大丈夫か?」

「シグル!シグル・・・」






「うっ・・・」

「大丈夫か?」

「私はまだ戦える」

そう言って敵対する巨猿に襲いかかる。

戦いは当初から攻防が続き、結果的に時間切れで審判の判断となった。


「勝者、シグル!」


歓声が沸き立つ。


続く試合も順調に進み決勝戦となる。

相手は人族だ。

試合はアッサリと終わった。

シグルの圧勝である。


「初代拳王は人狼族のシグルに決定しましたー!」


シグル、シグル、シグル、シグル!

歓声が止まらない。

(私も遂に頂点に達したか。これで王国から二人も。それも女の身で頂点だ。あの女とも拳を交える時も来るだろうが今は満足だ)


「シグル、シグル・・・」

沸き立つ観客。

「シグル、シグル・・・」

「シグル、起きよ、シグル」

「いい加減に起きろシグル」


「・・・ハッ、ここは?」

「やっと起きたか」

辺りを見回すシグル。

同族の人狼が数日と巨猿族も居た。

「私は・・・」

「お前は負けたのだ」

「・・・そうか。あれは夢か・・・」


シグルは試合中意識を失い敗北した事を知った。


不戦勝選手としてベニッショガが選ばれた。





今回の投稿に一カ月以上かかりました。

妄想思考はあるけど指先が動かない、と言うより体から動こうとしない感じでした。

原因は痛みです。

病巣が悪化して痛みが増しているのが現実です。

食事もほとんど取れてなかったけど、空腹よりも痛みが優ってました。

それに伴い他の具合も悪くなり一日中寝たきり状態でした。

今は医師の指示の元、痛み止めを増やして何とか平常を保っている状態です。

薬漬け感が増してます。

当初の数倍の痛み止めの効力でようやく安静出来ているようです。

昨夜から安堵の思いで寝れる様になりました。

こんな感じですが少しずつの投稿になります。

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