Alius fabula Pars48 独り言
この世界にやってきて数年経つが、時々物思いにふけることがある。
最初は何事が起こったのかと戸惑ったが、この世界の説明を受け自分の記憶と照らし合わせた結果、アノ出来事が起こったと自覚した。
ディバルの前世で異世界とは?
記憶ではあまたの物語に対して言いたい事が山ほど有る方達は沢山いると思う。
個人の主観でザックリ言うなれば現実の自分が存在する世界から移動不可能な場所にある世界を異世界と定義付ける。
金銭的な問題では無いよ。(合ってますよね?)
そこに魔法と言うファンタジー要素を取り入れた物語を主な題材にしている。
したがって、我々の世界観は無いのが当たり前であり、常識や民主主義などは基本的に存在しない。
前世の歴史で例えるならば、世界大戦以前の常識の下に個人主義や権力者に腕力のある者の主張が強く存在すると考えた方が自然だ。
しかも中世では無くそれ以前と考えた方が妥当だろう。
何故なら、中世を甘く見過ぎであるからだ。
人間の意識成長は基本的に止まっている。
これは何千年経っても本質は変わっていないからだ。
自称前世では現代人だったディバルが密かに思っていた御都合主義がノベル世界だ。
こんな異世界に来たディバルだが、実際に自覚したのは転生でも無く転移でも無い、魂だけが呼び寄せられて自分の身体を構築すべく容器の中で作られていく自分用の体の様子を眺めていた時だ。
神々の住まう世界を知り、研究者たちに下界と蔑まれている地上に降り立ち、自分の考えた世界と人物との邂逅だ。
何もかもが新鮮だった。
当初はギルドの訪問や冒険者たちとの関わりを警戒して専用の魔法も作らせたのだが、よくよく考えたら既に対応作は有ったのだ。
大魔王が初期段階で不穏分子を処理した方法である。
それは強制的に飛行魔法や転移魔法で対象者を飛ばす行為だ。
窒息死させても構わないが、目障りな体の処分を考慮すれば海の魔物のエサにした方が良いからだ。
対象者との接触無しで離れた場所から魔法陣を発動。
何食わぬ顔で歩き去れば自然だろう。
実際に初期段階以降は魔法陣で海上に転移させている。
陸から百kmも離れていれば間違いなくエサになるだろう。
ディバルの通過した街は少なからず安全性が上がっているはずだ。
小さい町では五人から十人。
そこそこの街ではニ、三十人程だ。
大きな街や都市では三桁に上るが、これはディバルの配下が気を利かせて処理したものだ。
そんな訳で、この世界を満喫すべく楽しんでいる転生者、いや魂の転移者だ。
現在ディバルが進めているプランは、魔王と勇者の入れ替えによる種族変更した者たちの成長観察する事。
新しい街作りからの国への独立予定(未定)。
職業別闘技大会。
人間と魔物の自然交配。
必要悪の作成(死凶たち十六人)と成長。
更に大陸南西に小さな国が六つも乱立して覇権を争っている地域が有るが、眷属たちには現状維持で接触無用と通達してある場所だ。
この地域はいずれ直接、あるいは子供たち(死凶たち)を引き連れて遊びに行こうと考えているので隔離してあるのだ。
もっとも、この大陸で遊べるのは次の氷河期が来るまでだ。
まだまだ長い様で短い時間だ。
大体、龍国ではその氷河期が来る前に大規模な地震災害の予測も出ている。
予測された地震や津波は、それなりに犠牲が出るとディバルの記憶にも有るが、実際はその記憶よりも遥かに大きな災害で、大陸の地図が変わる程である。
もっとも、氷河期に比べれば大した事は無い。
それに氷河期は何度か経験がある龍人たちだ。
前回の様に選別した種族を、保存もしくは生存させる為の場所に導いて管理すれば良いので有る。
この事を龍国で聞いた時は内心驚いたが平静を装った自分を褒めてやりたかったディバルだ。
たまにコッソリと外出して草原や森の中で一休みして空を見上げる。
地元ではエルフの塔と言われている別荘の最上階にある居間でくつろぎながら眷属と和んでいる。
テトラが持つ屋敷の庭で子供たちが訓練している様子を二階の窓越しに薬草茶を飲みながら眺めている。
クルシブルの専用部屋で歓声を聞きながら民衆や試合を観察している。
ただ観察しているだけでも楽しく思えるディバルだ。
そんなディバルは現在寝る事も無く、食事や排泄も不用の体の有り難みを身に染みて感じている。
何故なら、この世界には娯楽が少ない。
テレビ、ネット、ゲームに慣れていたので暇なのだ。
しかし、世界は広い。
朝になる地域と夜になる地域が同時進行しているから神の御技を持って、くつろぎながら観察する事が出来る。
人や魔物が思っていた通りに動けば面白いし、違う考えや行動を持って異なる結果を出す経緯も面白い。
そしてテレビや物語と違うのは、直接関与出来る点だ。
老若男女、人魔問わずオキニが居たら応援したいし、直接でも間接的でも手を出せる事が面白いのだ。
例えばボロボロで死にそうな者を、英雄や国王に育てるのも有りなのだ。
流石にまだそこまでネタ切れにはなっていないが、出来るか出来ないか、と言うと出来るのが今のディバルでありこの世界だ。
この世界は長い長い旅になるが、徹夜とは無縁の廃人を通り越した先に未来を知っている男が、今日も沢山の画面を見ながら世界の何処かでニヤけている。
次回、特別製の体を定期検診する時にタイマー付きの睡眠魔法を作らせようとメモる召喚された創造神だ。
創造神なら自分で作れって?
愚かなり。
眷属や配下が思案して結果を出す過程にこそ、可能性の閃きが存在する事を知らない愚鈍な者よ。