7話 都と酒場とサキエ
オレたちは兵隊長カフカスさんと共にルガール王国の都へと迎った。その町から都へは徒歩で3日程かかったが、なんとか着いた。
「やっと着いたわー、ここがルガール王国の都。まるでヨーロッパの城郭都市ね。」
「すごいですね、この門なんかすごい大きさですよ。」
オレたちは都の門を見て感動をしてしまった。定番ではあるが、異世界の、街の作りがヨーロッパに似ているのだ。
「2人とも、感動してるところ悪いのだが、今日の予定を伝える。2人とも都に宿を予約してあるから、まずはそっちに行こう。しっかり休んでくれ。それとサトウは明日王宮に行ってもらう。」
「王宮!?すごいじゃない。カフカスさん、ワタシは王宮に入れるのかしら?」
「サキエどの、申し訳ないのだが王宮に呼ばれているのはサトウのみなのだ。悪いが、少しだけ金を渡しておくので、宿で待っていてくれないか?」
「分かりました。それにしても、佐藤くんもえらくなったわね、そのギフトスキルってやつのおかげで・・・。」
サキエさんのオレを見る目は覚めている。
「すっすみません。ボクもこんなの初めてで決して浮かれてはいないので、はい。」
「なんで謝るのよ、まるでワタシが怒ってるみたいじゃない・・・。」
「サトウ、サキエどの、話をしているところ悪いが、街に入るぞ。」
カフカスさんに言われ、オレたちは隊列を組み街に入った。
すると、市民がこちらを見て歓声を上げた。
「お帰りなさーい!」
「兵隊長かっこいいわー!」
市民は兵隊の帰還に熱狂しているようだ、この世界では兵士の人気というのはすごいのだろうか。
「カフカスさん、兵士というのはすごい人気ですね。」
「ははは、サトウよく見てみろ。みんなキミを見ているぞ、ギフテッドのことはすぐに噂になったんだろう。」
「えっえーボクですか!?」
オレは周りを恐る恐る見渡してみると、確かに視線はオレに当てられているようだ。急に緊張が走り身体が強張る。ギフテッドというのはこんなにも凄いものなのか‥。
「試しにあの女性たちに手を振ってみるといい。」
オレはカフカスさんの言う通りに手を振ったら、女性たちは喜んでこっちに手を振り返した。
(嘘だ、オレの人生でこんなことがあるわけがない。)
「ふーん、佐藤くんまるで英雄ね・・・。」
サキエさんの棘のある言葉が胸に刺さる。
そして、しばらく歩くと宿が近くなったので、カフカスさんが案内してくれた。
「す・・すごい。」
オレたちは、宿を見て驚いた。なんと、5階建てのレンガ造り、大理石の柱まであるのだ。
「この国は大ローム帝国に支配されていた時代があってね、その時の建築がそのまま残っているんだ。これはそれを宿に改装したもので、それなりに身分の高いものが止まる宿だから期待していてくれ。それと、後で近くの酒場に行くといい、この辺は各国の色々な食材があるから、きっと満足できるよ。」
「酒場ですか!カフカスさん是非行きたいです。場所を教えていただいてよろしいですか?」
サキエさんはキレイな宿とおいしい酒場があると聞いて上機嫌だ。
「佐藤くん、部屋で少し休んだら酒場へ向かいましょう。」
「はっはい。」
そして、オレたちは部屋(同じ)で休み、酒場へと向かった。
「佐藤くん、どんなご飯があるのかな?」
「なんでしょうね・・。やっぱり、肉とかワインじゃないですかね?」
「おいしそーう。さぁ、入りましょ!」
オレたちが酒場の入り口をくぐると、店内がざわつきだした。
「ギフテッドだ!」
「おー噂のギフテッドか!?能力を見せてくれ!」
「初めて見たわ!」
店内は騒然となった。そして、客はオレの周りに集まってきて、能力を見せてくれとせがんできた。ガタイのいい大男も、いつもなら見下してくるイケメンも、いつもなら視界にも入れてくれない美女も。
オレは大勢にせがまれて断ることも出来なかったので、少しだけ披露することにした。
「わっ分かりました、少しだけなら・・・。」
『おおーー!いいぞ兄ちゃん!』
『きゃーステキ!』
オレはこの前の感覚を思い出し、ギフトスキルを発動。試しに近くの花瓶を触り、鳥の形に成形をした。
『おーすげぇ!』
『すごい!かわいぃー!』
みんな、オレの能力を見て感動している。人からこんなに拍手喝采を受けたことなど人生でなかったからオレは天狗になってしまった。次々に色々なものを色々な形に成形し、観客を沸かせていた。そして、オレはどんどんヒートアップし、饒舌になる。
「皆さん、大ローム帝国の将軍はこの能力を使い、一瞬で要塞を築いたという!この場で見せられないのが非常に残念ですが、いずれ国の有事にはワタシの能力で皆さんを、いてっ!」
足を思い切り踏まれた。サキエさんだ。
「古川さん、なっ何を?」
店内は静まり返る・・・。
「いい加減にしなさい、そんなに見せびらかして・・・。」
「はは、少しくらいいいじゃないですか。こうやって自信を付ければ、営業マンとして何か変われるかもしれないですし・・・。」
「自身?笑わせないで!佐藤くんワタシ他の店でご飯を食べるから、後は勝手にどうぞ・・。」
サキエさんはそう言って、店を出ていった。オレはサキエさんがなぜ怒っているのか訳も分からず放心状態になってしまった。
『ははは、ギフテッドも女には勝てねーか!』
『いよっ!こんなとこで痴話げんかとはさすがギフテッド!』
『えー何よあの女~』
酒場のお客たちは、そんなオレの心境を他所にまた盛り上がり始めた。
(ま、いいか。きっと、もてはやされているオレに嫉妬してるんだな。)
サキエさんのことはいったん忘れて、とりあえず気を取り直してその場に混じっていった。この日は女の子に囲まれて、酒を飲み、肉を食い幸せな気分だった。2時間くらい飲んだだろうか、オレは店を出てフラフラになりながら宿へ戻った。
「ふー今日は楽しかったなー。」
部屋に戻るとサキエさんは既に寝ていた。
すごくかわいい寝顔を見た瞬間、ふと酒場でのことを思い出した。
「あの時・・・何で怒ったんだろ?」
オレはサキエさんの寝顔を見てからはそればかりが頭をよぎるようになっていた・・。
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