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27話 手がかりと絶望

 オレたちは奴隷商人を通して、奴隷を買っている館主と会うことで転生者の奴隷と会うことになった。

  

 今、館主と召使と一緒に食堂へと向かっている。どうやら、その転生者の奴隷はいつも食堂の掃除をしているらしい。

 

 「あの、館主様。その奴隷はどこから来たか聞いたことありますか?」

 

 オレはその奴隷が日本の出身なのか気になって聞いてみた。


 『んー、何だったかな?売りに来た奴隷商人が何か言っていたな・・・ペイギン?』 

 

 「古川さん、ペイギンってなんだと思います」

 

 「北京じゃない?中国人じゃないかしら?」

 

 『御三方、もうすぐ食堂だ』

 

 オレたちは食堂に着いた。

 

 『ほら、あれが転生者の奴隷だ。リー!お前に客人だ、こっちに来なさい』

 

 名前はリーというらしい。

 

 見た目はアジア人そのもので、名前からも中国人かと思う。

 

 「こんにちは、リーさん?ですよね?初めましてワタシは古川サキエと申します」

 「ボクは佐藤タカシ」

 「ワタクシはクラディウスと申します」

 

 『初めまして、ワタシはリーと言います。ご主人様のお客人がワタシにどんな御用でしょうか?』

 

 リーのオレたちを見る目は冷めている。奴隷生活が長かったせいだろうか?人間に対する不信感が強いように感じ取れる。 


 「そんなに構えないでちょうだい。ワタシたちは日本から来た転生者なの。アナタも転生者だと聞いて会いに来たの」

 

 サキエさんはお得意の営業スマイルで相手の緊張を崩しにかかった。

 

 「サトウ様よ、サキエ殿の雰囲気がいつもと違って、優しく感じますぞ」

 「よそ行きのサキエさんです。気にしないでください」

 

 『えっ!?アナタたちも転生者なのですか?日本人?』

 

 「ええ、そうよ。リーさんは中国人かしら?」

 

 リーさんはオレたちが転生者と知ると態度が変わった。

 

 『はい、ワタシは北京の出身です。』

 

 「そう、やっぱり北京の方なのね。」

 

 『はい、2年前まで北京にいたのですが、路地裏を歩いていたら、なぜかこの世界に来てしまいました』

 

 「路地裏を歩いていたら・・・それは災難だったわね。」

 

 リーはサキエさんの同情の言葉を聞いて涙がこぼれてきた。


 『ワタシはこの世界に来て、頼る当てもなかった。そして、空腹に耐えかねて、市場のパンを盗んだら捕まり奴隷になった・・・』

 

 「大変だったわね、ワタシたちも最初は似たような境遇だったから分かるわ」

 

 『それからというもの碌な給金ももらえず、口を開けば鞭で打たれるような生活ばかり。うぅ・・』

 

 「リーさんは北京に帰りたいかしら?」

 

 『それはもちろん!親兄妹に会いたいです』

 

 「そうよね。ワタシたちも現世に帰るために旅をしているの。そのために今は情報が欲しいわ、リーさんは転生者についての情報を知らないかしら?」

  

 『転生者・・?そういえば、ここよりも遥か東の国から来た転生者奴隷が言っていました。ある国に転生者の寄り合いがあって、そこに逃げ込めば、奴隷から解放され、転生者でも不自由なく過ごせると』

 

 「転生者の寄り合い、それ!なんていう国にあるのかしら!?」

  

 サキエさんの目は一気に輝きを増した。

 

 『えーっと、たしか”インダス”だったかな』

 

 「インダス・・・」

 

 インダス。東の国。おそらくインドだろう。

 

 「クラディウスさん!インダスを目指しましょう!」

 

 「サキエどの、それは難しいです」

 

 クラディウスさんは今まで見たこともない険しい表情だった。

 

 「何でですか?」

 

 クラディウスさんが言うには以下の理由があるらしい


 1.インダスは連合圏ではないため冒険者制度も適用されないため路銀も稼げず、距離もかなりあるのでかなりの蓄えが必要

 2.行ったとして、インダスは連合圏内の国ではないうえ、連合圏との関係も良好ではないため、簡単には入国できない

 

 「連合圏外か~厄介ね」

 

 「こればかりは諦めましょう。他にも道はありますぞ。」

 

 「いえ、策は考えればあるはずよ。宝物を献上するとか?敵意がないことを示すにはもってこいでしょ?」

 

 「王の気持ちを揺さぶるほどの宝など易々と手に入りますまい」

 

 「たしかに」

 

 サキエさんは少し膨れている。

 

 「じゃぁ、これは?インダスで一番強い人と決闘するの。勝ったら入国を条件にして」

 

 「決闘ですか・・しかし、勝てねば意味がない」


 「大丈夫、今すぐに行こうってわけじゃないのよ。半年でもみっちり鍛えてインダスの兵隊長だろうが、近衛兵だろうが負かしてみせるわ」

 

 「サキエどの、残念ながら勝つことは無理です」

 

 「何でですか?ワタシじゃ修行してもダメってことですか?諦めたら、そこで試合終了ですよクラディウスさん」

 

 サキエさんが少し怒り気味にそういうとクラディウスさんは冷静に答える。

 

 「サキエどの、”ワタシじゃ”ではないのです。インダスの最強には誰も勝てません」

 

 「誰も勝てないって、それは言いすぎじゃないですか?兵隊長や近衛兵だって、100戦やって全勝なんてことありえないでしょうし・・」

 

 「ふむ、よく聞いてください、あそこの最強は”王”自身です」

 

 「王様が最強!?」

  

 「はい、なぜならインダスの王はギフテッドなのです」

 

 「ギフテッド・・・佐藤くんと同じ・・・」

 

 何ということだ。インダスの最強は王自身で、ギフテッドだというのだ。

 

 「でも、ギフテッドも倒す手段はあるんじゃ?」

 

 「ありません」

 

 クラディウスさんはサキエさんの話を遮るように否定した。

 

 それに対し、サキエさんはなぜ絶対と言い切れるのか?と質問をした。そして、ある事実を聞いてオレとサキエさんは愕然としたのだ。

 

 「お二人とも、その王のギフテッドはなんと」

 

 そう”オールウェザー”だった

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