14話 世話係の過去と新たな仲間
「世話係さんが先代国王の弟さん・・・?」
サキエさんはあまりの驚きに開いた口が塞がらなくなっていた。
「どっどういうこと?何でそんな人が世話係なんか・・・?」
「それはワタクシからお話をいたします。」
世話係さんこと”クラディウス・フォン・ルガール”様は先々代国王が娼婦との間に作った子供なのだ。
彼は貧民街で生まれた。13歳の時に母親を病気で亡くし、生きていくために剣闘士になった。剣闘とは奴隷同士を戦わせる賭け事で、その剣闘士になるということは死を意味する。しかし、歴史の中には勝ち続けた剣闘士が富を得て、奴隷から大富豪になったという事例もある。彼もまた、剣闘士から地位を得た1人の男なのだ。
13歳から剣闘士として戦い続け、そして勝ち続けた彼の噂は先々代の王の耳まで届き、その姿を見た先々代の王は剣の腕に魅了され王宮の兵士としてグラディウスさんを雇ったらしい。
クラディウスさんは自分が王の息子であることは誰にも言わず、ただひたすら警護に勤めていたらしい。しかし、先々代の王が倒れ、王宮内で後継者争いが始まる。そんな時にどこからグラディウスさんの素性を聞きつけたのか、ある1人の大臣がグラディウスさんを王族として勝手に後継者争いに巻き込む。
自分は王になる気は無いと言ったが、王宮の警護を長年務めてきたグラディウスさんは兵士たちからの信頼は厚い。それは反旗を翻せば兵士たちはグラディウスさんに着くということを意味しており、他の候補者からすれば、十分な脅威であった。
グラディウスさんは望まずに王族の候補者争いに巻き込まれていったらしい。
候補者同士の暗殺は度々起こり、グラディウスさんも何度も殺されかけたという。
時は流れ、候補者争いが収束し、先代の王が決まった。その際にグラディウスさんは命を保証される条件としてあの離宮に幽閉されたという。しかし、今の国王は子供のころより離宮へとよく隠れて遊びに来てはグラディウスさんに剣術を習っていたらしい。
また時は流れ、先代の国王が倒れる。そして候補者争いの際、グラディウスさんは解放され、現国王の剣となり王を守りぬいたという。
以上がグラディウスさんの歴史である。
「・・ぐすっ苦労してきたんですね。」
サキエさんは泣いている・・・。
「いえ、過ぎた話です。まぁ、そういうこともあって、今の王はワタシには良くしてくれるのです。」
「とゆーことは、グラディウスさんが佐藤くんのために王様にムリを言って、冒険者になる許可をもらったということですか?」
「いえ、さすがにそれは出来ません。ギフテッドはそれほど貴重なものなのです。サトウ様が冒険者になるために王宮を出るにはワタクシの口利きだけでは足りませんので、提案を2つしました。」
オレは服をめくり、身体に刻んだ焼き印をサキエさんに見せた。
「1つはこの魔焼印という契りの魔法。これは王族に伝わる魔法で家来が裏切ることの出来ないようにするものです。1人の王につき10人まで契約が可能で、主人の忠誠に背くようなことをすれば心臓を握りつぶされるような痛みが発生する恐ろしい魔法です。」
「佐藤くん・・・そんなことをしてまで。」
「いいんですよ。これは自分への罰だと思ってます。それにこの焼き印は王との関係の証で、色々な場面で融通を利かすにも良いらしいので、これは気にしないでください。」
サキエさんは少し納得がいかないようだが、黙って飲み込んでくれたようだ。
「あと、もう1つは何なんですか?まさか、これ以上の罰則が・・・」
「ふふふ、安心してください。束縛は魔焼印で十分です。もう1つはワタクシが冒険のお供をして、佐藤様の監視をすること。」
「えっ!グラディウスさんが!?」
「えぇ、この老兵、及ばずながら力をお貸しします。」
「うそ!すごい心強いじゃない!」
そう、オレたちの旅にグラディウスさんが同行してくれるというのだ、王宮の警護を続けてきた男だ、こんなに頼もしいことはない。
「さぁ、サキエ殿、サトウ様、ライセンスを手に入れて早速冒険に出ましょう。」
「ふふ、そうね。あの冒険者からいただいた武器を売れば資金も足りるわ。」
「ははは、2人ともこれからが楽しみですね。」
これが、オレたち3人の冒険の幕開けである。