第4話 スライムってどうやって喋るの?
来たれ、我が名に応じて!
……厨二です。
で、召喚しようと思うんだけど、どっちを召喚すれば良いんだ?
〈ゴット・スライム〉はスライムだから話せるのか? いやまぁ、それを言えばほとんどの魔物が駄目になるんだが……。
まぁ、〈ゴット・スライム〉は【完全擬態】があるから何とかなるかな?
〈ヨルムンガンド〉はでかいよな? でかいのが売りなんだから、でかくて当たり前だよな?
うーん周りを見回してみても森しか無いとは言え、〈ヨルムンガンド〉を召喚するのはやばいよな?
うん、ここは無難に〈ゴット・スライム〉を召喚するとしよう。
「えーっと召喚するにはどうするんだ? 普通にステータス画面から選択すれば良いのか? それともあれか、ありがちな詠唱とかする必要があるのか? 分からんが適当にやってみるか」
そう言ってステータス画面から〈ゴッド・スライム〉を選択した。次の瞬間目の前に光輝く魔法陣的な何かが出現した。
しばらくその様子を眺めていると、いつの間にかその中心に半透明に輝く、愛らしいスライムが鎮座していた。
「わー可愛い。生で見ると凄いな。というかこれ見えているのか? そもそも喋れるのか?」
『大丈夫だよ! 聞こえてるし見えてるよ!』
「うわっ! 急に頭に声が。まぁ、聞こえているならいいか。それで今の状況分かる?」
『うん、分かるよ。主はね『見えざる者』に時の狭間に封じ籠められちゃったんだよ。でも僕は一応〈最高神〉の一柱に数えられているから『見えざる者』の攻撃は防げたけど、主の中にいたから僕自身ではどうしようも無かったんだ。主が目覚めて良かったよ!』
「……あ、うん」
え、どいうこと? なんの話をしているの? ちょっと意味が分からない。
そもそも『見えざる者』って誰? 言葉的には最後に戦ったあいつが『見えざる者』なのかな?
……あんなのが?
ぶちゃっけ”ラム”一人で倒せる奴だぞ? あぁーでもラムはあの時出してなかったのか。
で、俺はその『見えざる者』に封じられたと。うん、全然話が見えてこない。
なんで俺が封印されるんだ? 強いから? いやまぁ、それならしょうがないけどさ。
うん、分からないんならラムに聞いてみればいいか。
「えーっとラム?」
『うん、何?』
良かった名前で通じるのか。
「俺、いや、私はさ目覚めて間もないから何が何だかよく分からないんだ。だから最初っから話してもらえないかな?」
『え? もしかして主は記憶が無いの!? そんなの嫌だよ……』
「い、いや、そうい訳じゃなくて! なんとなくは分かるんだけど詳しく何が起きたのかを覚えていないんだよ。その『見えざる者』の事が。もちろんラムや他のやつら、”ヨルン”だったり”リン”だったりは分かるんだけど、どうしても『見えざる者』の事が思い出せないんだ。だからそこの部分をラムに説明してもらいたいんだ」
『なんだ、良かった。僕達の事を忘れたわけじゃないんだ』
「当り前じゃない。私がお前達の事を忘れるわけないじゃん。ただ封印されたせいなのか、その『見えざる者』の事を思い出せないんだ。だから教えてくれないラム」
『うん、分かった』
よ、良し。
結構いい感じに話をまとめられたんじゃないか? うん、即興にしては良い感じのシナリオだ。
封印されていたから記憶が曖昧。記憶喪失はベタだけど、この際しょうがない。
これならもっと良い感じのシナリオを考えておけば良かった。
人間、非常事態になると、思考が浅慮的になるな。
それからラムの話を聞き、大体の話の全貌が見えてきた。
それに加え俺のゲーム時代の知識を合わせてある程度推測してみた結果、こんなところだろう。
『見えざる者』が世界を支配していた。
それをどうにか『見えざる者』の手から世界を自由にしようと、長い年月戦い続けてきたが、『見えざる者』は強大で倒すことが出来なかった。
人類はこのままいけば滅亡するかと思われた時、ある少女が現れた。その少女と言うのが俺らしい。
そんな俺が世界を『見えざる者』の手から奪い返そうと立ち上がり、そんな俺に手を貸してくる魔物や悪魔、神が現れたと。
そしてついに『見えざる者』を打ち倒すことが出来たが、俺自身が『見えざる者』に時の狭間に封じ籠められてしまったと。
そして今長い年月を経て、目覚めることが出来たと。
なんのこっちゃ……。
何故俺が英雄的な感じになってるんだ?
そもそも魔物達が手を貸してくれたんじゃなくて、俺が強制的に支配して使役していたんだが。
俺はどちらかというと『見えざる者』に近い気がするんだけど……。
それに俺は『見えざる者』の手から世界を救おうだなんて思ってもいなかったんだ。
そう、あれは適当に新しいマップでもないかと歩いていた時だった。
本当にたまたま知らないダンジョンがあって、それを攻略しようと思って進んで行った結果、その『見えざる者』という者が現れたわけだ。で、とりあえず裏ボスぽっかたので倒した。
それがなんか凄い存在だったみたいだが、知らんがな。
俺は俺なりにゲームを楽しんでいただけなのに……。
……これからどうしよう?
元の世界に戻るか? それは嫌だな。
別に未練とか特に無いし。しいて上げるのであれば続きが気になる漫画とかだろう。でも異世界の方がずっと面白そうだしな。
俺はこの世界で自由に過ごす。うん、それがいい。
そのためにはこの世界の事を知らないといけない。
多分だけどゲーム時代とあまり変わらない気がする。それでもラムの言う通り長い年月が経っているのだとしたら、ゲーム時代と少し違う所があるのかもしれない。
ゲーム時代には出来なかった事がこちらでは出来るかもしれないし、逆にゲーム時代に出来た事がこちらでは出来ないかもしれない。その辺は早めに確認しとかないといけないな。
それに加え俺が使役している魔物達がどうなっているのかも気になる。
今でも俺の支配下にあるのか、それとも自我を持って自分勝手に行動しているのか、その辺を確かめないといけない。
幸いこちらにはラムがいる。最悪敵対したとしてもこちらが勝てるはずだ。
ラムは俺の言う事なら聞いてくれそうだし、ラム自身の戦闘能力が半端ない。多分ラムなら俺の他の魔物全部と戦っても、負けるとは思えない。
よし、まずはお約束通り、どこかの街に行くか。適当に歩いてれば着くだろう。
街道とかに出てくれると楽で助かるんだがな……。
「よしラム、とりあえず何処か人のいるところに行きたいんだけど場所分かる?」
駄目元で聞いてみる。
『うん、分かるよ! あっちに人の気配がするよ!』
「じゃああっちに行ってみるか」
ラムはある方向に向けてピョンピョン飛び跳ねて案内してくる。
か、可愛い。
俺は犬とかは飼った事がないから分からないが、これがペットの癒しというやつか。
悪くないな。
このままラムに案内してもらって、人と出合いそうになったら仕舞うか。
これでもラムは魔物だからな。
そうして俺は人が居るところに向けて歩き出すのだった。