第34話 俺の…所為じゃない、よね……?
宿に帰ってきた俺はアリスとの会話もそこそこにベッドへとダイブ。
「……柔らかい。はぁー、キャラ作るのって疲れるな……」
言いたいことあんま言えないし。
一々区切って喋んないといけないし……。
ネットなら全然平気なのに……。
まぁ、俺が選んだキャラ設定だから何も言えないんだけど。
「よし、風呂にでも入って気分転換するか!」
浴槽にお湯をはり、入る。
「あぁー、マジ極楽だわ……」
うん、これが噂の仕事終わりの一風呂か。
この気持ち良さは毎日味わいたい。
……今考えるとヤバかったな【ニヴルヘイム】。
確かにエリンが言ってた通り、人知を超えてた。
……まぁ、俺がやったんだけど。
つまり俺は人知を超えた存在というわけだ。
氾濫と言っても何だかんだで何とかなりそうだな。
俺が全体を支援してれば良い感じだし。
あとは部屋に居たあいつらが何とかしてくれるっしょ。
でもあれだな。
異世界に来て2日目にこんな事が起こるなんて、なんか主人公みたいじゃないか。
……まさか俺が原因とか無いよな?
いやいや、さすがにないっしょ。
でもまてよ。
確かラムは俺のせいで森がダンジョン化したとか言ってたよな?
んで俺が目覚めて、すぐに氾濫した……。
あれ?
これ俺の所為じゃね?
「……ふうー、疲れて変な思考しちゃってるな。うん、俺は関係ない」
あー良い湯加減だなー。
気持ちいいなー。
疲れが取れるなー。
なんだか眠くなってきちゃった。
……。
…………。
………………。
…………………………………。
「……寝よう」
浴槽から上がって、体を綺麗に拭いてから服を着る。
照明を落としベッドに横になり、布団を被る。
……。
…………。
………………。
…………………………………。
……やっぱり俺の所為かな?
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城壁から見る夜景は最高だ。
無限に広がると思える夜空。
夜空に煌々と光り輝く星々。
遥か先まで続く地平線。
一人になりたい時や落ち込んだ時に丁度良い。
……今回は違うけど。
私は今城壁の上で見張りをしているのだ。
見張りといっても私は戦闘員だから、言われた所に魔法を撃つだけなんだけど。
警戒は他の人がやっている。
普通はテントや城壁の中の部屋で待つんだけど、私はここで待つことにしている。
この夜景は綺麗だから。
それに故郷を思い出す。
私の故郷は小さな村だった。
静かで長閑な村だ。
逆に言えば何もなかった。
私はそれが嫌で村を出た。
他にも理由はあったが、あんな村で人生を過ごすのはあまりにもつまらないと思ったからだ。
まぁ、今では静かな場所が恋しくなってしまったけど。
「……私はこれから何して生きよう」
お金は腐るほどあるし、強さも限界を感じてる。
男は興味あるけど、色々怖い。
それに私の胸にはユキが居着いてしまった。
この気持ちを何とかしないと恋愛だの言ってられない。
前の私は強さこそ全てだと思っていた。
事実、私は力でここまで上り詰めた。
でもここ最近、ユキと出会う前から私は無気力感に苛まれている。
強さの限界を知り、人間関係に亀裂が入り、自分の存在意義が分からなくなってしまった。
強さが全てではないと知った。
その瞬間自分の人生がなんだったのか分からなくなってしまった。
私は何の為に生きているんだろう。
夜空を眺めながらそんな思考をしていると、足音が聞こえて来た。
「……何か用?」
「はい、右翼側から魔物が進行して来ています。エリン様の魔法で先制し、その後は魔法戦へと移行するそうです」
「……そう、案内して。それと私が全て倒すから、他の人はいらないわ。精々後片付けでもしてちょうだい」
「……伝えておきます」
この伝令は若いのだろう。
普通なら私のような戦力を無駄使いしないように温存するものだ。
無駄撃ちを避け、最初に相手に大打撃を与え、あとは適当な奴らが片付ける。
これが一番効率的だ。
私の意見に逆らわず従うなんて以ての外だ。
そして司令に従事しない私も厳罰だろう。
まぁ、私は自由にやらせてもらうけど。
右翼側に着き、詠唱を始める。
「赤き太陽、煉獄の灯火、安楽の聖火。
焼き焦がし、塵と化し、天への道しるべとなる炎。
紅の戦火とし、焔と化せ。
【パラダイスフレイム】」
瞬間天をも揺るがす爆発が起こる。
それはまさに天へと昇る赤き炎だった。
(……こんなもんじゃない。ユキの魔法はもっと神秘的で幻想的だった。 ……もっと知りたいな)
目の前に爛々と染まる景色を眺めながらそんな事を思うのだった。




