第32話 作戦会議3
俺は静かにご飯を食べながら会議に耳を傾けていた。
基本的に会話には混ざらず、話しかけられれば答える体制でいた。
「だからこっちから攻めた方が良いって!」
「ですから戦力的に難しいですよ」
「でもブレインさんやエリン。それに支援にはユキさんがいます。もしかしたら守るより攻めた方が楽かもしれません」
何気に俺が戦力として数えられてる件について。
まぁ【ニヴルヘイム】を使った時点で覚悟はしていたが。
「場所が森だ。森ならクソ赤は使えねぇ。視界も悪い、障害物も多い、攻めんのはキツイだろうが。頭も使えねぇのか」
「あ? 森ごと吹っ飛ばせば良いだけじゃん?」
「はん、これだから下郎は。森を壊せば魔物が溢れ出すぞ? そんな事も考えられねぇ頭だぁ、良い脳みそしてんな」
「っ! この!」
「やめろ! 確かにゴルバの言う通り攻めるのはリスクが大きすぎる。どっちにしろ市民を非難させていない今、”一”で防衛するしかないのだ」
「はん、見たか」
「うっさい!」
こいつら仲悪すぎない?
てかエリンとか言うやつが衝突しすぎなんだよな。
んー、話から察するにエリンは平民上がり、ゴルバは貴族上がりなんだろうな。
そら仲悪いわな。
「ねぇ、ユキさんはどう思うのかしら?」
「……」
何故俺に振る?
そんで何でお前らこっち見んだよ。
俺はご飯を食べる手を止め、口を開く。
「……攻めるのは、難しい。……でも作戦としてはあり。左右から攻めて……魔物を中央、あるいは拡散させて戦う。でも、あまり現実的じゃない。私なら……ある程度、魔物が攻めて来たら……森にいる魔物を狩る」
「森の、魔物を? 背後を付くのではなくて?」
「……ん。背後を取るのも、一つ。……でも森にまだ、魔物がいた場合……愚策。背後に回った者が、囲まれる。なら森からの、増援を無くす、あるいは遅らせる事で、戦場を楽にする。……森に行くものは、少数精鋭……残るものは、物量で押し切る」
これでも俺は戦略ゲーは結構得意なのだ。
俺は馬鹿な主人公じゃない。
そして臆病でもなければ善人でもない。
自分のためなら他人を死地に送り出したり、殺す覚悟だってある。
……覚悟しておかなければいけないことだから。
「だが森に魔物がいなければ無駄足になるのではないか?」
「……なる。でも目の前の敵を、倒せば終わる、というのは……心理的に、余裕ができるし……敵に集中出来る。やる価値は、ある」
「……なるほど。確かに一考する価値はあるな」
「えぇ、増援が来ないというのは、それだけで心理的余裕が出ます。ユキさんの言う通り、目の前の敵に集中出来る」
自分で言うのもなんだが、結構良い作戦だと思う。
まぁ、一つ欠点があるとすれば相手の戦力が分からないことだろう。
もし想定より強い魔物がいれば、防衛も攻めも両方崩れる。
「でもさあ、戦力的に無理じゃない? 仮に森に行くとして誰が行くの? 私は戦力外らしいからね」
「ミカ、バルス、イスカが適任だろう」
「んー、ミカがいなくなるのはキツくない? それならギブルを入れるか、いっそ2人は?」
「流石にそれは無理ですよ。Aランクから何人か出して欲しいです。それに場所が森ならファイストは欲しです」
エリンとバルスが話していると、手を挙げ発言を求めるミカ。律儀だ。
「私がいなくてもユキさんがいますから、着いて行っても平気だと思います」
「確かにそうだが……」
「別に気を使わなくても良いですよ。私よりユキさんの方が腕は上なのは確かですから」
「……当たり前。私より優れた、使い手はいない。でも貴方も十分、優れているから……気を落とす事は、ない」
俺は自由に生きると決めた。
自分の思った事は言うし、やりたいと思ったらやる。
謙遜や遠慮などしたところで意味は無い。
ここは平和な日本ではないのだから。
「まぁ、確かに貴方より優秀な魔法使いなんていないのかもね。でも余裕ぶっこいていたら足元すくわれるわよ」
「……知ってる」
でも俺より強くても意味がない。
だって俺の本業は〈召喚師〉なのだから。
〈召喚師〉が戦闘に関わる事は普通ない。
俺ですら攻撃魔法を覚えたのはさっきなのだから。
そんな俺に勝ったところで、大した価値などない。
「作戦はそれで行こう。メンバーはミカ、バルス、イスカ。あとはAランクから何人か出す。残りは防衛に専念だ」
「うん、それで良いんじゃね」
お、まさかの俺の作戦が採用された。
……失敗しても責任はとんないからな。




