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最強の魔物使い〜すみません、私の魔物知りませんか!〜  作者: 漆原 黒野
第1章 戦乱の森
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第29話 私は妹より弱い姉

 

 イスカ・クイーンベルトは戦場を駆け回っていた。

 正確には歩き回っていた。


「……火よ、風と共に、憤慨しろ、”ダブルマジック”【風林火山】」


 目の前に火の渦が生まれ、中心から吹き上がるように風が火に酸素を送る。

 まさに火山が噴火をしているような風景だった。


 私の側にいる仲間がその光景を見ながら魔法を唱える。


「大地よ、その偉大なる恵みで、燃え盛る火を覆い尽くせ【ウォールリーバー】」


 私の足元の地面が盛り上がり、津波のように火山を飲み込んだ。

 火は消え、少し大きいな丘が出来上がり、そこには魔物の姿はない。


 イスカのランクはS。

 だがその実力は他のSランクに一歩劣っている。

 それなのに何故Sランクなのかと言うと、その汎用性の高さに由来する。


 どんな場所でも、どんな相手でも同じ力を発揮する。

 どんな時も相手の弱点を狙い攻撃を打ち出すことが出来る。

 イスカには相性というものがないのだ。

 そのため一定の活躍をしている。

 そこを評価されSランクに昇格できたのだ。

 あとは親の力もある。


 基本的に冒険者ランクというのは危険度のランク、例えば危険度Aランクとしよう。

 冒険者ランクはその危険度Aランクを倒せる実力がある者を冒険者Aランクと言う。

 支援を専門にする者は、一人のAランク冒険者が危険度AAランクの魔物を倒す事が可能にできればSランクと認められる。

 余談だが、基本的に同ランクの者が複数、6~8人いれば一つ上のランクを倒す事ができると言われている。


 イスカはAAランクの魔物を一人で倒す事が出来ない。

 だが先程も述べた通り、イスカはその汎用性の高さを評価されSランクの称号を得ているのだ。


(……”イクス”なら、この状況どうするんだろ?)


 イスカは自分の妹の事を思い、思想する。

 イクス・クイーンベルト、SSランクの冒険者である。


 妹に負ける姉。

 だからといって姉妹仲は悪くない。

 しかしSランクになるのに一杯なイスカが、素質だけでSSランクになったイクスに着いていけるわけもなく、そのうち別々でパーティーを組むようになり、今の状態になったのである。


(はぁー、またイクスの事考えてる。いい加減吹っ切れないと……)


「どうしたイスカ? 調子でも悪いのか?」

「どうせまたイクスの事でも考えていたんでしょう。未練タラタラに」

「……本当に仲が良いですわね」

「べ、別にそんなんじゃないから!」

「普段は喋らないくせにイクスの事になるとこれだ。説得力なんかねぇよ」

「う、別に未練とかないし! 私なんかいないほうが、いないほうが、ぐすっ、いないほうが、イクスの、ためだもん、うぅぅ」


 目から涙が溢れた。

 それを見てパティーメンバー全員、顔を青くする。


「……だ、だって私、弱いもん、ぐすん」

「わ、悪かったよ。だから泣くなって!」

「あ、イスカ泣かせた!」

「……これは殺されますわね」

「ご愁傷様……」

「貴方のことは忘れませんわ」


 イスカもイクスも自分以上にお互いを大事にしている。

 つまりイスカを泣かせたとあればイクスが黙っていないのだ。


「ちょ、マジでやめろよ! 冗談じゃ済まないから!」

「べ、別に泣いてないし!」

「……泣いてんじゃん」


 ワイワイ騒いでいる間もちゃんと魔物は倒していた。

 ……主に会話に混ざれない者が。


「……あのそろそろ真面目にやってほしいんですけど……」

「じゃないと俺たち死にます……」


 このパーティーの苦労人、前衛二人。

 イスカのパーティーは魔法使い四人、前衛二人で成り立っている。

 基本的に高火力で殲滅という形を取っているため、前衛二人が時間稼ぎをするのだ。不憫。


「……ごめん今やる。常闇(とこやみ)の雫よ、輝きの星と共に、永久(とわ)を喰い破れ”ダブルマジック”【ブッラクホーリンレイ】」


 光と闇が混同した、矢が魔物達に突き刺さり、その身を浸食するかのように崩れ果たし、光が空へと舞い上がる。


「……相変わらずすげぇな」

「えぇ、魔力が少なくても、その技量は一級品ですわ」


 そう、イスカの力不足の原因は主に魔力量の少なさからくるものであった。

 魔力さえあれば、その実力は正真正銘Sランクに相応しいものである。

 もしかしたらSSランクに手が届くかもしれない程に。


「……確かに技術も必要だけど、アレを見ちまうとな……」


 アレというのは開幕一発目に放たれた超強大魔法のことだろう。

 辺り一面を氷の世界へと(いざな)った神業。


「……アレを魔法と言っていいのか迷うところですわ……」

「……魔法も凄かったけど、私は術者本人が気になるな。まるで女神様みたいだった」

「確かにあれは綺麗だったな」

「やめときなさい。貴方なんか相手にされないから」

「う、うるせぇ!」


 そんな話をしていると、イスカが呼ぶ声がした。


「ほら、”レイド”達も魔物倒して」

「お喋りもこんくらいにして真面目にやりますか」

「えぇ、ここからが本番だからね」

「誰が一番魔物を倒せるか競争しませんこと?」

「お、良いね! ビリのやつの奢りで!」

「負けないから!」

「ふふ、場所は〈黄金の輝き亭〉でお願いしますわ」

「……貴方たちね……」


 そうしてイスカ達は次の獲物へと向かうのであった。


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