第2話 ファンタジー・オブ・ライフというゲーム
このゲームはおかしい…。
そんなゲームで俺は一番になる!
〈Fantasy・of・life〉
そのゲームは、ゲーム業界を一世を風靡した伝説の————————では無く、そこそこ人気があったオンラインゲームである。
確か、最終的には累計50万本だったけかな? まぁ、実際に遊んでるやつなんて10万人もいないだろうが。
まぁそんな、そこそこ良ゲーの〈Fantasy・of・life〉。
このゲームはとにかく幅広いのが売りだ。
職業、スキル、魔法、魔物、武器、フィールド。とまぁ、全ての項目に置いてかなりの数があった。
例えば、武器などに関しても数万では数え切れないほどあると言われるほどだ。職業に関しても、すでに1000個以上は見つけられているのに、まだまだ知らない職業があると言われるぐらい多種多様だ、
これだけを見れば完璧で、何故50万程しか売れなかったのか不思議でならないだろうが、それには理由がある。
まず1つ目は、データ量が多いため、かなりの容量を食い、ローディングが長時間になる。それに俗に言う〈マップ移動〉がかなりの頻度で必要なのだ。
そのため一番広いマップでも2、3分間真っ直ぐ進み続ければ端から端まで行ける程度の広さしかない。とはいっても、その小マップ自体が途方も無い数が用意されていて、全貌が把握出来ないほどあるのだが。
2つ目は、種類が多いため面倒臭がる者が出てくるのだ。
多ければ多いほど知識量も増して行く。それを覚えるのが面倒で、コアなゲーマーしかやらない。
あとは専用用語とかもあったな。
3つ目は、システムの隙が多いのだ。
例えば、戦士が持つ遠距離攻撃。一応戦士は近接戦闘型で遠距離攻撃が出来る攻撃はあるにはあるが大したダメージも無いし、発動距離も短い。ただし利点があるとすればクールタイムの短さだろう。
で、その戦士が例えばこんなアイテムを持つとしよう。
【遠距離攻撃力UP(大)】【攻撃距離UP(大)】【魔力回復速度UP(大)】【クールタイム短縮(大)】
普通ならこんなアイテムは条件が記載されているものだが、このアイテムらは近接型でも装備できるものであった。
これで攻撃力事態が魔法職の下級魔法並みの威力になる。さらに距離もそれなりにとれ、魔力の回復速度も速い。で、ここで戦士が持つ遠距離攻撃の唯一の利点が生きるわけだ。そうクールタイムの短さだ。
つまりある程度距離をとって遠距離攻撃を打ち続ければ良い。ダメージ処理が追いつかないほどに連打すれば相手の動きは難くなる。さらに近付かれれば本来の戦い方で戦えば良いだけだ。
他にも戦い方の裏技みたいなものが無数にあり、本来の遊びか方と違う形になってしまったのだ。
最大の理由の4つ目だが、それは組み合わせ次第でなんでもできてしまうのだ。このゲームの売りと言っても良いものだが、逆にそれが最大の欠点にもなってしまった。
先ほども言った通り、スキルや魔法、武器等が無数にあるため、その組み合わせが無限だ。だが無数にありすぎて、製作者側もそれを把握出来ていないのか、組み合わせ次第で変なバグなどが発生して馬鹿みたいな効果が発揮されることがある。普通は不可能なことがこのゲームでは出来てしまうのだ。
例えば、〖攻撃時、相手へ毒ダメージ(小)〗〖追加攻撃の効果倍増〗ただこれだけでも相当な効果が期待できる。
しかしながらこのゲームは、さらにこんなことまで出来るのだ。
【毒効果UP(小)】これを追加するだけで馬鹿みたいにダメージ量が跳ね上がる。
毒のダメージが100としいよう。
【毒効果UP(小)】は10%だと考えるとしよう。
(100×10%)×2=220これが普通だ。
しかしこのゲームだと、こんな計算がされてしまう。
(100×2×10%)×2=440
何故こんな式で計算されるのかは分からないが、こうなってしまうのだ。さらに別の装備を着ければもっと効果が馬鹿みたいに上がる。他にもまだまだ意味が分からない計算がされる組み合わせがある。
それでもまぁ、こいう組み合わせを考えるのはゲーマーとしては結構好きなため、それなりの人気を集めてはいる。
そして俺こと”桐ヶ谷秋人”はそんなゲームにのめり込んだ————わけでは無く、普通にそこそこ遊んでいた。と言っても、最強と呼ばれる程の強者なのだが、これには訳がある。
そう、俺は当初このゲームをやる気は無かった。何故なら当時ガチで嵌ったゲームがあったからだ。
それこそ世界で1500万本も売れたほどの超名作のゲームを。
しかしながらゲーマーとしては少しくらいは遊んでみたいと言う気持ちが少なからずあったため、発売から約半年程遅れてこのゲームにログインした。遅すぎじゃんって思うかもしれないけど、この時期に〈Fantasy・of・life〉が流行りだしたため、俺もそれに便乗したに過ぎない。
が、事件はそこで起きた。
なんとログインして、アイテムランを見てみると、こんなアイテムが入っていたのだ。
〈選ばれし指輪〉
レベルUP時の恩恵が2倍になる。
これを見た瞬間思ったね。
「あ、これクソゲーだ」
そりゃこんなアイテムを見ればクソゲーだろ?
それも初期だぞ? 1LVも上がって無い時だぞ? それなのにレベルUP時って……。
せめて後半、250LV以上じゃないと装備出来ないとかなら分からなくも無いよ?
でもログインしたばかりのバリバリの初期LV1の時にアイテムランに入ってて、装備基準が何も無いんだぞ?
もうこれどんなクソゲーだよって思ったね。
で、その後少し調べた結果、このアイテムは俺以外の人は持っていないみたいだった。ていうかなんで俺が選ばれたのかも分からない。
そんなクソゲーをやる気は出なかったけど、でも少しだけ「俺はどこまで行けるんだろう?」って思っちゃうのは仕方ない事だよね?
でもこんなクソゲーでヌルゲーを遊ぶ気も無いのも事実だ。そのためどうしようかと迷ったとき、ふとある事が頭に浮かんだ。
それは〈選ばれし指輪〉が俺以外にも持っている人がいないかと調べた時にたまたま見たやり方。
それは〈魔物使い〉での放置ゲー。
〈魔物使い〉魔物を使役し戦う者のことだ。魔物にある程度の命令を入力し放置する。
例えば、戦闘用の魔物に「近付く者を殺せ」と入力する。そして【転移魔法】を使える魔物を用意しとけば完璧だ。「プレイヤーのHPがレッドラインに入ったら転送する」とうい入力をすれば良い。
そうすれば近付いて来た敵は自動的に殺し、経験値やアイテムが入ってくる。そしてプレイヤーキャラが死にそうになれば転送してくれて、アイテムも経験値も無くならない。こいう流れが出来るのだ。
まぁ、問題点を一つ挙げるなら、使役している魔物が死んでしまった場合、すぐに【蘇生魔法】かアイテムを使わないと蘇らせることは出来ない。そのため〈魔物使い〉での放置ゲーは使役している魔物が死ぬことが前提となる。
だからこれをやる時には捨て魔物を用意しとく必要がある。
しかしながらこれにも裏技的な物がある。
それは〈召喚師〉。
召喚師は契約した魔物を自由自在に出したり仕舞ったり出来る職業だ。さらには契約したものが死んだとしても時間が経てばまた呼びだせるという便利な機能もついている。
そのため〈魔物使い〉と〈召喚師〉をセットで取る者が多い。
ちなみに〈Fantasy・of・life〉では職業LVと言うものがある。
職業LVの最大値は50、100、150この3つに分類される。簡単に言ってしまえば初級職、中級職、上級職だ。あ、だけど初級職で打ち止めのやつもあるから。それに初級職だからと言っても弱いわけでは無い。事実初級職6つ取りトッププレイヤーまで登りつめた例もある。俺もどちらかと言えばこれに該当する。要は使い方だ。
〈魔物使い〉は初級職で〈召喚師〉は中級職だ。
このゲームは300LVが上限なため、上級職は2つまでしか取れない計算になるわけだ。
そして俺も記事を読んで、最初は〈魔物使い〉を習得したわけだ。
フィールドに出て最初に物は試しと思い、そこらへんにいたスライムをテイムした。そのスライムを使って他のスライムを倒したわけだが、ここにきてまたしても問題発生。
〈選ばれし指輪〉の効果は使役している魔物にも効果が及ぶのでした。
もう本当、何このクソゲー。
確かに使役している魔物は俺の所有物となるため理論的には間違っていない。しかしながら指輪を装備していないにも関わらず、恩恵に預るとかそれゲームとしてどうよ?
さらにレベルUPして気付いたが、この指輪は想像以上にぶっ壊れていた。
レベルUPの恩恵が2倍になる。
それは本当の意味で、全ての事柄が2倍になるということだった。
例えば、職業LV。これも2倍になるのだ。
つまり俺は最大300LVのゲームで、600LV分の職業を習得出来るのだ。あ、でもLVの表示上は300だから。
それだけでは無い。スキルポイントも、ステータスポイントも全てが2倍になるのだ。
それに気付いた時、またも思ったね。
「クソゲーだ」って。
もう、どうにでもなれ! と、半場やけくそ気味に自身のキャラと魔物達を育て上げた。
そして桐ケ谷秋人こと”ユキ”はこのゲームの頂点へと上り詰めたのでした。めでたしめでたし。
ちなみに名前の由来は白銀の髪をイメージして雪でユキだ。ついでに妹が”冬美”だということもあったが。
あ、なんで女キャラで作ったかには、ちゃんとした訳がある。
このゲームの売りは幅広い選択肢。それはつまり容姿も好きなようにカスタマイズ出来ると言う事。
そしてやはりと言うべきか当然と言うべきか、男より女の方が選択肢が無数にあった。それに加え服や装飾品なども女性の方が圧倒的に多い。
そんな理由から俺は女のキャラで作ったのだ。
自分で言うのもなんだが、完璧な仕上がりだと思う。正直キャラ作って満足して「もういいや」と思っただけはある。
ちなみに俺自身の好みがかなり含まれているとだけ言っておこう。