表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の魔物使い〜すみません、私の魔物知りませんか!〜  作者: 漆原 黒野
第1章 戦乱の森
26/39

第25話 刮目せよ!

 

 俺は静かに佇んでいた。

 そう、静かに誰の目にも止まらないように。


 目の前には草原があり、その奥には木々が生い茂った森がある。俺が来た方向だ。

 今回の戦場はこの草原。

 俺は目を閉じて静かに佇んでいた。


(どうやって登場しよう! やっぱり開幕一発目にドンッとやるか!? それともピンチになったら現れて英雄になるか!? クゥー、ワクワクが止まらないぜ!)


 と、見た目に反して中身は大はしゃぎだった。

 できれば飛び跳ねて大声を上げたいくらいだ。


 俺は迎撃部隊の一員に加えられた。

 先程ミリーさんが現れ、迎撃分隊に加わってくれと言ってきたのだ。

「……何故」と聞いてみれば「非常事態に加え、コングベアーを倒すだけの実力があるため、戦力の一員となってほしい」と言ってきたのだ。


 大義名分得たり!

 そんなわけで只今のはしゃぎっぷりと言うわけなのですよ。


 しばらくはしゃいでいた俺だが、魔物の影が見え始めたころ冷静に考えてみる。


(俺はまだ命を奪うということを知らない。命を奪った後の精神状態がどうなるか予想もつかないな……。それに今回はラム達の力を使わないと決めている。俺一人、周りにも人は居るが絶対に安心できるというわけじゃない。そして、ここは”ゲームじゃない”。死んでしまえば終わりだ……)


 ブルッと体が震えた。

 これは純粋に死に対する恐怖からくるもだ。


(やばい、怖くなってきた……。冷静に考えるとヤバいな。登場の仕方とか考えてる場合じゃない。俺がいかにして生き残るか、それだけを考えよう……)


 そうして時間が経ち、とうとう魔物の群れが森を抜け、草原へと足を踏み出すのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ついに魔物が森から姿を現し始めた。

 ゴブリン、オーク、オーガ、トレント、トロール、バジリスク、ダイアウルフ、スイッチガスト、キラーアントなどが大群で押し寄せて来た。

 空中にはワイバーン、ブレイクバードさらにはそれらを支配しているかのように上級のドラゴンが空から俯瞰している。


「来た!」

「全軍、戦闘準備! 魔法使いは魔法の詠唱に入れ!」


 この軍の指揮を執るのはギルドマスターの”エルイド”。

 そして私も詠唱を始めようとした時、アレが前に踏み出した。


(……え? な、何してるの!?)


 アレが歩き出したことで私は詠唱どころではなく、茫然とその後ろ姿を眺めるしかなかった。


 アレが最前列を抜け出し、たった一人魔物の群れへと向かって行く。

 周りの者もその挙動を見ていたが、正気に戻った者がアレを止めようと足を一歩出した直後、膨大な魔力が辺りを包み込んだ。


「——!?」

「な、なんだ!?」

「なに、この魔力……」


 ソレは悠然と前へと歩んで行く。

 だが、ソレが一歩一歩足を前に突き出すたび、魔力が膨れ上がり、常軌を逸した奔流が荒れ狂う。


(な、なんだ! なんなんだよこれ! ありえないでしょ! こんな魔力が一つの魔法に集約されるなんて!)


 エリンは目の前で起こるあまりにも非現実的な光景に呆然と立ち尽くすしかなかった。

 だが驚くにはまだ早かった。


『……凍れ凍れ、凍れ。

 ()て尽くし下々を永遠(とわ)の永眠へと(いざな)え。

 新たな時代への永劫の凍結とせよ』


 歌が響く。

 美しく、魅惑的な声。

 誰もが耳を傾け、聞き入ってしまう。

 だが一部の者は理解する。

 ソレが一つの言葉を口にするごとに魔力が跳ね上がっていくのを。


「……もう、やめて」


 エリンの願いは虚しく空気に溶け、詠唱は続く。

 そう、高々一人の人間が”神”の行為を止められるわけがないのだ。


『人を動物を悪魔を精霊をあまつさえ神さえも震わせよう。

 善悪関係無く、等しく永劫の眠りへと(いざな)う。

 数多(あまた)の生きとし生きる全てを凍らせ、安楽の地とせよ。

 美しく、幻想的な世界への道しるべとなれ。

 世界を覆い尽くす氷山よ、我が呼びかけに応じ、顕現せよ。

 我は神羅万象を操る者』


 そしてついにソレは、その名を口にした。


「……【ニヴルヘイム】」


 瞬間、世界が凍り付いた。

 そう見間違うほどにソレの起こしたことが信じられなかった。

 目の前には全てを凍り付かせ、幻想的な氷山がそびえ立っていた。

 そこに存在していた魔物も、森も、空気も、何もかもが凍りついた、まさしく”氷の世界”が広がっていた。


 その圧倒的なまでの力を目にした者達はただその場に立っていることしかできなかった。

 そして私も……。


(……あぁ、これが人神と呼ばれる者か。いや、もしかしたら本物の神なのかもしれない……。私が一生を懸けても辿り着けない頂。アハ♡ なんだこれは? この気持ちはなんだ?)


 私は胸の奥から来る、ドキドキを抑えられない。

 絶対に辿り着けない頂。

 そう思えば思うほど、胸に広がる気持ちが止めどなく溢れてくる。

 ドクンッドクンッと身体が熱い。


(……そうか、これが頂か……。あぁ、見て見たい、そこからの景色を! そこはどんな風景なのだろう? どんな気持ちなのだろう? 私もその頂の魔法を作り出してみたい!)


 エリンは決意する。

 そこに辿り着いて見せると。

 そして願わくば、ソレの傍に居たいと。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



(うわー………………。凄いことになっちゃった…………。だ、大丈夫かな、これ。土地とか凍らせちゃったし、元に戻るのか、これ……?)


 俺は目の前に広がる景色を見つめる。

 あたり一面氷山に包まれていた。

 言ってしまえば壁が出来上がっているのだ。

 現実で魔法を使うとこんなにヤバいのか……。


 俺が使ったのは〈氷魔導〉の広範囲凍結魔法【ニヴルヘイム】。

 一応、氷の魔法系では最高峰の魔法だ。


(まぁ、やってしまったことはいいか! うん、前向きに行こう。これで魔物の数が減ったんだ。良いことだ、うん!)


 と、無理矢理だが自分を納得させる俺氏。

 でも、なんとなくだけど大丈夫な気がする。

 俺の魔法だからなのか、解こうと思えば解ける気がする。


(さてと、こっからが本番だぞ、俺!)


 気合を入れなおし、俺は意気良い良くローブを脱ぎ捨てるのだった。


見たか!

これが最強の片鱗!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ