第12話 風呂って良いね!
女の風呂……。
アリスの案内で宿に着いた。正確にはアリスの家に着いた。まぁ、どっちでもいいか。
「ただいま! お客さん連れてきたよ!」
「アリス遅えぞ! 早く材料を持ってこい! それと部屋のシーツ変え、客の名簿をやれ!」
「ちょ、お父さん。さすがにきつくない!」
「今サイとケイと母さんが出ていて大変なんだ! 我儘言わずにさっさとやれ!」
「うー、分かったよ今やりますよ! ごめんね。今少し忙しいくてね。とりあえずユキの部屋の鍵持って来るよ」
そう言うと受付の所から鍵を取り出し、こちらに差し出してきた。
「部屋は203だよ。案内できなくてごめんね」
「……別にいい、忙しいみたいだし。……これ1300コル」
「うん、丁度だね。ゆっくりしていってね」
「……ん」
アリスは早口で喋ると、走り去っていく。
本当に忙しそうだな……。引きこもりの俺じゃあ出来そうにない仕事量だ。……とりあえず部屋に行くか。
階段を登り、言われた通り203室の扉を開き中へと入って行く。中には簡素なベットに机、椅子などの基本的な物が置かれていた。冷蔵庫やキッチンなどはないみたいだ。
意外にも部屋は綺麗で清潔感が保たれていた。
おぉーこれは嬉しい。埃だらけの部屋で寝泊まりするのは嫌だからな。これは結構当たりを引いたか?
さてと、これからどうするかな?
あ、そうだ、風呂に入るか!
そうだよ、この宿は風呂が付いてるんだよ。入らない手は無いよな。
よし、そうと決まれば早速。
脱衣所に入り服を脱いでいく。
うわーローブがビチョビチョだ……。
今度会ったらぶっ飛ばしてやるからな。首を洗って待ってろ髭野郎!
まぁ、今は忘れといてやるか。
そうして服を脱いでいくとふと思う。
そういえば俺、女になってたんだ……。
女の身体、ゴクリ……。
まぁ、俺自身の身体なんだけどね……。
でも人生で生で見た事がない物。
別に俺の身体なんだし良いよな? 見たり、触ったりしても良いんだよな? 自分の身体なんだから問題なんか無いよな?
よ、よし、いくぞ!
覚悟を決め、服を脱ぐ。
……。
うん、眼福だけど自分の身体だから興奮できない……。
というか俺、女の自慰のやり方知らない……。
乳首とクリ◯リスとかが立つんだよな?
動画では見たことあるけど、生では無いからさ……。
俺の息子は使う事なく、お亡くなりになってしまった。南無。
はぁー、風呂に入るか……。
風呂場に入ると、何も入ってない浴槽。
あ、お湯入れないといけないじゃん。
当たり前の事を忘れてたわ……。
15分後。
よし、お湯も溜まったし入るか。あ、お湯の入れ方は壁に書いてあった。
まずは軽く体を流して、浴槽に入る。
「あー、極楽々々……」
マジで気持ち良い。
特に髪の毛がスッキリする。ローブを被っていたから蒸れるし、酒を被せられてべっとりとしていたからな。
それらが洗い流されてスッキリだぜ。
あー、やっぱり風呂は良いな。
俺は自分で思っていた以上に日本人気質だったみたいだ。風呂がこんなに愛おしく感じるなんて……。
それと気になるのが俺の精神だ。
性別が逆転したため、どんな影響があるのかが分からない。最悪身体に引っ張られて、精神が変わっているかもしれない。
俺、嫌だぞ。
男に惚れ、男に抱かれるのなんて……。
マジでそれだけは勘弁。吐き気がする。
まぁ、大丈夫だろう。
俺は俺だ。他の誰でも無い。俺の事は俺が決める。
万が一、俺が男に惚れたのなら、その男に抱かれるのもやぶさかではないかな。それが俺の意思ならば。
まぁ、俺が本気で誰かに惚れるなんて思わないけど。
うん、難しい事はここまでにして、今は風呂を楽しもう。
あれから風呂に45分ほど入った。
特に髪の毛は念入りに洗った。
さてと服はどうしよう?
さっきまで着ていたやつは酒で汚れたしな……。
適当でいいかな?
でもな俺の顔を見られたらやばそうだから、なるべくフードが付いた物が良いな。
一応言っておくと、服は数百枚ら持っている。なぜならユキを着せ替え人形としていたからだ。
前にも言ったが、俺の身体は、俺の好みが入っている。もちろん全体のバランスなんかも考えて、理想の形にしている。
だが、ここで聞いてほしい。
普段使わない装備やアイテムをアイテムボックスに入れているだろうか?
いや、入れない。使わないアイテム類は全部ホームにあるアイテムボックスへと移し替えるだろう。
てか移し替えないと自分のアイテムボックスが満杯になって、他のアイテムが入らなくなるからな。
やっぱり普段使いのローブは持っといたほうが良さそうだ。
解体が終わったら早速作ってもらおう。
そんなこんなでアイテムボックスを見てみると2つ程ローブがあった。
一つ目は、小綺麗な淡色の青系樹、下の方に行けば段々濃くなっていくローブ。綺麗だ。
性能はLV280程。
ガチ強化されたやつ。
二つ目は、黒っぽい赤のシンプルな色調。ちょっと地味。
性能は最高レベルだけど、一番にはなれないような微妙な性能。
一応強化はされている。
うーんどっちを着ようか?
小綺麗な方がユキには似合うんだけど、目立ちそうなんだよな。
黒っぽい赤は少し地味だしな……。
あー女が服選びに時間を掛ける意味が分かった気がする。
これは悩むわ。
元男でもこれほど悩むんだから、生まれながらの女はそりゃあ悩むだろうよ。まぁ、今回は目立ちたくないから黒っぽい赤にしとくか。
そうしてローブを羽織ると体に魔力が流れる感覚を覚える。
一日で魔力というものに慣れてしまうな。
魔力が身体全体を巡っているのが違和感なく感じ取れるし、自在に操ることもできる。
今ではあるのが当たり前みたいに感じる。
まぁ、分からないよりもいいか。
とりあえず疲れたから一眠りするか。