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最強の魔物使い〜すみません、私の魔物知りませんか!〜  作者: 漆原 黒野
プロローグ 〜異世界に来て〜
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第11話 なんか避けられてるような……

 

 冒険者ギルドを出て、とりあえず宿に向かうことにした。出るときに酒場にいた人達を見てみたが、俺のことなんか忘れているように馬鹿笑いをして酒を飲んでいた。

 多分その時の気分で適当に絡んできただけなんだろう。それでも忘れないからなヒゲ野郎。


 あ、宿の場所ミリーさんに聞いておけばよかった。うーんまぁ、歩き回って見つけるのもいいか。

 と、思って街中を歩いていると、こちらを奇異の目で見てきたり、俺を避けるようにして歩く者達ばかりだった。


 どうしたんだ? 俺なんかした?

 うーん分からん……。

 まぁ、気にしてもしょうがないか。


 しばらく適当に歩いてみて少し分かった事がある。

 それはこの街にいる人のほとんどが武器を携帯していることだ。

 この世界は思ったより物騒なのかもしれない。

 まぁ、俺には関係ないことだが。

 なんたってこっちにはラムが付いているし、他にも強力なやつらを従えている。召喚できるかは別だけど……。


 さてと宿はどこだろう?

 うーんもう諦めて人に聞いてみるか? でもなぁ、なんか避けられているみたいだし答えてくれるかな?


 そんなことを考えて歩いていると、一人の少女と目が合った。少女は買い物をしていたらしく、両手にパンパンに膨らんだ袋を持っていた。


 いや、目があったのは気のせいかもしれない。だってこっちはフードを被っているから目と目が合うなんて物理的に不可能だ。

 だが少女は俺の方に小走りで近付いてきた。


「ねぇあなた、ずぶ濡れだけど大丈夫?」


 あ、そっか! 俺酒をぶっかけられてずぶ濡れだったんだ!

 そりゃあ俺を避けて歩くよな。

 服が濡れるのは嫌だもんな。納得。


「……別に、平気。でも、お風呂、入りたい……」


 うん、風呂に入りたいのは本当だ。

 やっぱり日本人たる者、一日に一回風呂に入らないとな。それに早くこのずぶ濡れの恰好をどうにかしたい……。


「それなら丁度良かった! 私の家は宿を経営してるんだ! なんとそこには風呂付きの部屋! どう是非(うち)に泊まって行かない! サービスするよ!」


 おぉ、それはありがたい。

 風呂付きの宿。

 正直異世界に風呂の文化があるのか不安だったけど、あるみたいで良かった。本当に良かった。

 ちなみに俺は結構風呂好きである。徹夜の時の眠気覚ましにもなるし。

 でもこいう宿って高いんだよな……。


「……値段は? 私、あまり、お金持ってない……」

「うーん、サービスするって言ったからにはそれなりに考えさせてもらうけど……。そうね1500コルでどう?」

「……」


 価値が分からん……。

 これは安いのか? 高いのか?

 吹っ掛けなのか? 親切なのか?

 ……分からん。

 俺の無言をどうとったのか、少女は難しい表情をして悩みこみ、しばらくして決心がついたのか顔を上げた。


「おまけのおまけで1300コル! これ以上は負けられない!」


 うん、なんか勝手に負けてくれた。

 この様子だと結構安くしてくれたのだろう。

 多分俺がずぶ濡れなのと、女なのを考慮してだと思う。もし俺が男だったら、そんなに負けてはくれなかっただろう。

 女って便利。


「……うん、それで良い」

「良かった! じゃあ私に着いて来て、案内するから」

「……ん」


 そう言って手に持つ袋を「よいっしょ」とバランスを整え歩き出す。

 それを見て安くしてくれたお礼に少女が持つ荷物を俺が持ってやることにした。

 しかし全部は持たない。全部を持つと逆に怪しまれるし、半分持つことで一緒の場所を目指しているよ、という意思を表すためだ。

 別にそこまで考えなくてもいい気がするけど、配慮しすぎるに越した事は無い。


「……持つ」

「あ、ありがとう。優しいのね」

「……別に、安くしてもらった、お礼」

「……そっか、なら遠慮なく」

「……ん」


 少女から荷物を受け取る。


「ねぇ、名前はなんて言うの?」

「……ユキ」

「ユキちゃんか。私は”アリス”よろしくねユキちゃん」

「……ん。でもユキちゃんは、やめて。ユキで、良い。こちらこそよろしく、アリス」

「分かった、ユキ」


 何が嬉しいのか分からないが笑顔を浮かべるアリスだった。


アリスは良い子や。

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