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最強の魔物使い〜すみません、私の魔物知りませんか!〜  作者: 漆原 黒野
プロローグ 〜異世界に来て〜
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第9話 酒をかけられたぐらいで怒りません

 

 とりあえず用紙に必要事項を書かないといけないから、どこか書ける場所に行かないと。

 幸いギルド内に酒場があるため、机や椅子なんかはたくさんある。俺はカウンター席の一つに座り用紙を記入していく。


 名前は、ユキ。

 性別は、女。

 年齢は、7歳。

 種族は、人間。

 武器は、杖、ステッキ。

 魔法は、召喚・支援・回復。

 出身地は、空白

 性格は、無口・常識を知らない・現実主義。

 仲間は、今のところ必要ない。

 依頼は、討伐。

 他は、基本的に戦闘能力が低い。


 うん、大体こんな感じだろう。

 と、俺が用紙を持って立ち上がろうとした時、頭上から水が降ってきた。


「あ、ごめんな! 酒がこぼれちまった! 悪い悪い。大丈夫か? お詫びとしてこのこぼれた酒をくれてやるよ!」


 と、笑いならがら言ってくる髭を生やした男。

 謝りはしても反省している様子がちっとも見受けられない。多分わざとなんだろう。

 そんな俺と男を見て、またしても周りの連中が笑い出す。


「わはははははは! ”ゴトー”お前それはやりすぎだって!」

「そうだそうだ。おかげで大事そうなボロいローブが濡れちまっているじゃねぇか!」

「そうだお詫びとして今晩可愛がってやれよ。わははは!」

「それは良いな!」

「あはははは、おもしれー!」

「どうだお嬢ちゃん。今晩は俺が可愛がってやるぞ?」


 酒を被せてきた髭野郎は笑いながらそんなことを言ってきた。

 好き勝手言いやがって。

 ぶつかるくらいなら笑って済ませられるが、さすがの俺も酒を浴びせられて黙ってられるほど寛容じゃないぞ。

 ぶっ飛ばしてやる……!


 そう思い立ち上がり、殴り飛ばしてやろうと思い髭野郎に近付いてふと思う。

 ここで手を出して良いのか?

 絡んできたのは向こうだが、手を出せばこちらが悪者になるのでは?

 確か日本ではそうだったよな? 先に手を出したほうが悪いんだよな?

 それに冒険者は無闇矢鱈に力を振るっちゃいけないって受付の人が言ってたし……。

 ここは我慢するほうが利口か?

 それにワン〇ースでも言ってたしな。

 酒を被せられたくらいで怒るような事じゃないって。

 うん、そうだよな。別に怒るようなことじゃないよな。


 でもこのイライラは忘れないからな!

 俺は結構根に持つタイプで、やられたらやり返す派だ。お前の顔は覚えたからな髭野郎!

 え、怒るようなことじゃないって?

 それはそれ、これはこれだ!


 俺は髭野郎を無視して、紙を持ち受付の所まで歩いていく。

 もちろん先程とは違う受付嬢の所だ。


「……紙が、濡れたけど、大丈夫……?」

「……はい、大丈夫です」


 申し訳なさそうに目を伏せる受付嬢。


「……その、なんと言っていいのか分かりませんが、このたびは当ギルド員が失礼しました」


 そう言って軽く頭を下げる受付嬢。

 へぇー良かった。受付の人達まで糞野郎だったらマジで切れてたかもしれない。


「……別に、気にしてない。酒をかけられたくらいで、怒るようなことじゃ、ない……」

「——!」


 目を見張る受付嬢。

 まぁ、パクリなんですが。

 しばらくの間目を見張っていたが、すぐに仕事顔に戻る。

 切り替え早いな。


「では記入用紙を預からせていただきます。少々お待ちください」


 そう言って内容を読んでいき、不備がないかを確認していく。確認が終わったのか紙を持って下がって行ってしまう。

 それから2、3分ほど経った頃に受付嬢が戻ってきた。


「お待たせしました。ではこちらに了解のサインと登録料1000コルをお願いします」

「……お金、持ってない。……でも、何か売ろうかなって、思ってる」

「そうですか。では登録を終わらせた後に買取の方をさせてもらいます。そうすれば鑑定料を取られなくて済みますから」

「……ん、分かった」


 そう言われたので俺はとりあえず先ほどとは違う用紙に自分の名前を書く。

 もちろん名前はユキで。


「ありがとうございます。もうしばらくお待ちください」


 そう言ってまたもや受付嬢は後ろに下がってしまう。

 その時濡れた所為で体温が奪われているのかぶるりと震える。

 というかさっきから視線が凄いな。そんなにからかい時を待っているのかな?

 それとも先ほどの事を気にしているのかな?

 まぁ、どっちでもいいか。


 それから15分程経ったころ、ようやく受付嬢が戻ってきた。

 受付嬢はなんか水晶? みたいなものを持ってきていた。


「お待たせしました。ではこの水晶に触れてください」

「……ん」


 言われた通りに水晶に触れてみる。

 そうすると水晶が光輝やいた。


「はい、登録が完了しました。こちらがユキ様のギルドカードとなっておりますので、紛失しないよう大事に所持してください。もし紛失してしまった場合、再発行に1万コルかかりますので」

「……分かりました。気をつけます……」

「これでユキ様は冒険者の一員になりました。おめでとうございます」


 ふぅー、これで晴れて俺も冒険者の一員になったわけだ。


ちなみに俺なら激怒します。

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