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異世界転移  作者: メルル
2/2

遭難だってなんとかなるはず


 「目が覚めるとそこは見知らぬ森の中でした。」


 ってそんな余裕ぶったこと言ってる場合ではなく、真剣にまずい。

 でかっ、まわりの木でかすぎっ。

 舗装された道なんかまったく見当たらんし、獣道みたいなのもない。

 もしかして俺、遭難してる!?

 いやいやいや、現代の日本人にこれは無理無理、普通に死ぬ。


 俺は9教科すべてで赤点とるぐらい勉強はできないし、運動も別にできない。

 体育の成績はクラスでいたい真ん中くらいで、サッカーの授業とかではたまにパスをだされる程度。

 サバイバルの知識が有るわけでもなく、たいした運動能力もなく、こんなときに役に立つような勉強もしていない人間が森の中に突然放り出されたらどうなるかなんて決まってる。


 「こんなところで諦められるか!」

 「とりあえず水筒にお茶は入ってるから飲み物には1日ぐらいは困らない。となると次は食べ物か」


 夏になる木の実なんかがもしかしたらあるかも知れないし、とりあえず散策でもするか。











 「木の実はついてるけど俺の身長の3倍ぐらいのところじゃさすがに手が届かんぞ。」

 「というかそもそもなんで俺はこんな森の中にいるんだ?わけがわからん」


 突然の遭難への驚きが少しの時間を経て落ち着いてきたのか、ようやくそんな簡単な疑問が思い浮かぶ。

 普通、真っ先にそれを考えるべきだろうに、やっぱり焦るとろくなことがない。


 たしか今日は朝からめんどうな補習があって、行く途中なぜかやたらと赤信号にひっかかって、それから・・・

 俺、もしかして引かれた!?

 ここって死後の世界なの!?


 俺が実は死んでいるかも知れないという事態に、頭が真っ白になって何も考えられなくなっていく。

 その時頭上から立っていられないほどの強風が俺に吹き付ける。


 「おうわぁっ、なんだこの風は」

 「って、なんじゃありゃぁ!?」


 空を見上げるとはるか上を、かなりの距離があいているにもかかわらずばかデカい巨大な鳥が、この空は自分のものだといわんばかりに悠々と飛んでる。


 「あんなデカイ鳥が地球にいてたまるかぁ!」


 とりあえずここは絶対に地球じゃない。

 あんなデカイ鳥なんて、テレビでも見たことがない。

 となると、


 「引かれた後に目が覚めると、明らかに地球じゃない世界にいる」

 「これはもしかして、もしかするんじゃないか」


 自分でも心臓が早鐘を打つのがわかる。

 現実に起きて欲しいと思いながらも、どこか心の中では有るはずがないと知っていた。

 だけど、それは本当に起こったんだ。


 「異世界転移してやったぞー!!」











 「ふぅ、とりあえず落ち着くか」


 しばらく異世界転移が俺の身に起こったことにたいする、喜びを思いのままに叫んでやった。

 そして人間は欲深いもので、異世界転移したとなると、次はあれが欲しくなってくる。


 「チートだ」

 「なんか初異世界転移記念みたいなのないのか」

 「というか俺、神様とかであってないし、チート無しか!?」


 そんなわけがないだろう。

 チート無しで異世界は普通に無理。

 ただ、さっき歩いた感じ肉体的に何か変わった感じはしないんだよな。

 となると、魔法とかか


 「そもそも魔法ってどうやって使うんだよ。やっぱり呪文でも唱えればいいのか?」


 とりあえず、ありそうな呪文を言いまくってみるか。


 『ファイアボール!!』『ファイアアロー!!』『ライト!!』『キュア!!』『エクスプロージョン!!』


「はぁはぁ。」

 「まったく発動しない。ただ、叫ぶだけじゃ無理か」


 とりあえずチートがあるかどうかはともかく、今使えないんじゃ意味がないじゃねぇか。

 今、遭難してるって状況をどうにかする手段がなかったら、このまま飢え死にして異世界生活終了してしまう。

 そんな終わり方はごめんだ。


 なんてのんきに叫んだり悩んだりしてると何かを引きずるような音が前方からした。

 近づいてきているのか、だんだん音が大きくなっていく。


 さっきあんなにデカイ鳥を見たんだから、他にもヤバイ動物がいる可能性も考えるべきだった。

 そりゃあ、あれだけ大きな音を出してたら何かがいるのにきづくよな。

 ヤバい、予想以上に音が大きくなってきた。

 とんでもないやつが出てくるかもしれん。


 「と、とりあえず逃げる準備はしとくか」


 鞄を担ぎ直しておく。

 そして、音がなる方をじっと見つめる。

 大木の裏から出てきたのは・・・


 「へ、蛇・・・」

 「しかも、やっぱりデカイ」


 あんなにでかいと、俺なんて簡単に絞め殺されちまうぞ。

 なんでこの森は何もかもがでかいんだよ。


 「とりあえず逃げるぞぉぉー!!」











 「はぁはぁ、な、なんとか逃げ切れたか」


 俺の異世界生活はどうなってるんだよ。

 最初から遭難してる上に、蛇に襲われて命懸けで逃げるとか。

 異世界にきたなら、もっとなにかあるだろ。

 例えば、盗賊とかに襲われてるお姫様とか。


 「お姫様とか贅沢言わないからせめて人間に会いたいなぁ」

 「このままじゃ、餓死しちまうよ・・・」


 気がつけば日もだいぶ傾いてきて、腹もだいぶ減ってきた。

 この森広すぎるだろ、さっきからまったく景色が変わってないぞ。

 せっかく異世界に来たのにもう俺は無理かもしれん。


 なんて、俺が弱気になりながらも、わずかな希望にすがって歩いていると、


 遠くから何かが聞こえてくる。

 音のする方に走り出す。

 もしかしたら、さっきの蛇みたいな化け物みたいな動物がいるのかもしれないが、もう可能性にかけるしかなかった。











 だんだん音が大きくなってきた。

 金属と金属がぶつかりあったときのような音だな。


 「この音なら人間にちがいない」

 「やったぞ。餓死せずにすむ」


 そして、音がなっている現場に近づいたんだがどうにも様子がおかしい。


 「なんだ?人間どうしで戦ってるのか?」


 とりあえず、身を隠しながら近づけばいいだろ。

 どうやら音はちょっとした崖の下から聞こえるらしい。

 覗いてみるか。



 「悪党め!覚悟しろ!」

 「死ぬのはお前の方なんだよ、オラァ!」

 「ぐわァー」



 崖の下はちょっと遠くてなんて言ってるか聞き取れんな。

 立派な鎧を着た騎士っぽいやつらが争っている。

 どうやら馬車を守っている側と、馬車に襲いかかっている側がいるらしい。

 どうやら俺につきが回ってきたようだな。

 これは完全なるテンプレだ。

 あの馬車のなかにはお姫様でもいるにちがいない。

 ここで馬車側に助っ人として入り、お姫様の恩人にでもなってやるかな。


 そして、俺はかっこよく崖から飛び降りたのだった。

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