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29話 おっさんたちのどや顔

丘につくと、ちょうど日は沈み切り、暗闇が私たちの姿を覆い隠す。


ミアちゃんの言う通り、丘の上からは水晶の中を見ることができ、中には大きな焚火……そして大きな檻を摘んだ巨大な獣車のようなものが見え、その焚火を中心に男たちが何か作業をしているのが見え、その後ろには炭鉱の入口だろうか? 大きな洞窟のようなものが大きく口を開けている。


「おそらく、あの檻でエルフ族のみんなを運び出したんだね……きっと炭鉱の中にエルフ族のみんなは閉じ込められているんだろう」


「当然……あそこをうろついているやつらの仲間も……ですね」


「だな……見張りにしては随分と数が少ないような気もするが……ってか、エルフの嬢ちゃんよ、お前さんよくここから家族がいるってわかったな」


中を見渡せるといっても随分と距離があり、口の動きどころか、人の顔さえもよく識別できない。


アッガスさんは感心するようにミアちゃんにそういうと。


「え、み、みえないの?」


ミアちゃんは困ったような表情を見せる。


「……エルフ族は弓の扱いに長けた種族……ほかの種族よりもとびぬけて目がいいんだよ」


局長はそういうと、ミアちゃんもアッガスさんも。


「「そうなんだ……」」


なんて感想を漏らして顔を見合わせる。


「まぁそれはいいとして。 どうだいナイト君、ここから彼らがストレンジアかどうかはわかるかい?」


「……ふむ、見る限り見張りのレベルは低い……ストレンジアである可能性は低いだろう」


「それはいい情報だ。ここにきて初めていい情報が出た気がするよ」


「それは何よりだ」


局長は嬉しそうに声を上げ、ナイトさんもその言葉に嬉しそうにそういうが、アッガスさんだけは一つ難しい表情をして。


「仮にだが、ナイト」


そうナイトさんに問いかける。


「ん?なんだアッガス」


「もしだぜ?このアジトにいる奴らすべてがストレンジアだとしても……お前は勝てるって断言すんのか?」


それは、何でもないただの興味本位だったのかもしれない。

しかし……。


「無論だ。目的が殲滅ならば、正面突破が効率的だな」


「……へっ……簡単に言ってくれるな」


その言葉に、アッガスさんは冷や汗を垂らしながらそう呟くが、それにナイトさんは言葉を続ける。


「しかし、とらわれている人間の無事を確保しつつとなると話は変わってくるだろう。 正面から攻撃を仕掛ければ、敵は中の者に危害を加えるかもしれないからな……正面突破はお勧めしない……当然今回の場合もだ」


「そうだね、逃げるときに人質は邪魔になる。 逃走場所や経路をしゃべられるかもしれないからね……殺してから逃走する可能性は十分にあるよ」


「そんな……」


ミアちゃんは想像してしまったのか、顔を青くする。


「何か考えはあるのかよ?」


「……何もないな……」


困ったことに洞窟の入口は正面にしか確認できず……さすがのナイトさんも口元を抑えて何かを思案するような表情をするのみ。


そんな中。


「……なるほどねぇ、そうなると裏から回って侵入するしかなさそうだね。 この丘を外れたところに、今は使われていない坑道があるんだけど、奥で裏手とつながっているようだ。

……星振りが起こる前から廃止されているみたいだから、ストレンジア達も使用している可能性は低いだろうね」


「「「……」」」


饒舌に道を示す局長の言葉に、わたしを含めその場にいた全員が目を丸くする。


……そんな中。


「なんだい? こういう時のためのクッコロー旅行記だろう?」


なんて、いやらしい局長の声が、薄紫に光り輝く水晶の中に響いたのであった。

                  ◇


局長に案内をされるとおりに、私たちは外れた道を進んでいくと、クッコロー旅行記に記されている通りに閉ざされた坑道が水晶に埋もれるように存在しており、中に入るとさびた鉄やほこりが入り混じったような匂いが私たちを包み、本当に長い間使われていないことがうかがえる。


「……枯れた鉱脈か」


「取りつくしたともいうな」


ナイトさんの言葉に応えるようにアッガスさんはそう呟き、松明ではなく蛍光クリスタルを取り出しあたりを照らす。


「……えほっ……えほっ……すごい匂いよ……まるで、モワモワ草の花粉みたい」


「利用価値がなく使う必要のない無駄な道……ストレンジアにとっても盲点だろうな」


「だな、だがいくら手薄っつっても、アジトの回りにゃ必ず兵士がいる」


「坑道の中は入り組んでいてまるで迷宮さ……クッコロー旅行記があるから、迷うことはないだろうけど……エルフのみんながどこに捕まっているかまでは書いてないからね」


「……ふむ……そこのところは問題ないぜ? 局長さんよ」



「なに、中の構造についてはそこに住んでるやつに聞けってな……冒険者の鉄則だ」


「拷問か? ひどい音がするぞ?」


「あ、大丈夫ですよナイトさん……音を食べる妖精なら私召喚できるので」


「おいこら、前向きに拷問を検討してもらっているところ悪いが、拷問じゃねえよ。怖えよ」


「なんだ、拷問じゃないんですか……」


「なんで残念そうなんだよ!? 怖えよ!?騎士ってみんなこんな奴なのか!?」


「心外だな! 僕たち騎士団を彼女のようなサイコパスと一緒にしないでほしいな!」


「誰がサイコパスですか誰が!」


「まぁ、マスターがサイコパスかどうかは置いておいてだな……冒険者はどうやって敵に口を割らせる? 酒でもおごるのか?」


ナイトさんの質問に、アッガスさんはにやりと笑うと。


「まぁ、冒険者特権ってやつさ」


そう答えたのであった。


                     ◇




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