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19話 メタルドラゴンはいのちだいじに

【鉄頭鉄尾!! 拳じゃねえけど鉄拳制裁タイムだ! 痛い痛いって泣き叫びながら絶命をしやがれ人間!】


局長の言葉と同時に、巨竜はその頭を私たちに振り下ろす……が。


「うるさい!」


【いだいぃ!!?】


その巨大な頭を、ナイトさんは拳で殴り飛ばす


全力で振り下ろされたはずの頭は、見事な右フックにより吹き飛ばされ宙を舞い、ぐるりと一回転をして地面に叩きつけられる。


「なっ!? こ、拳って……君の体本当にどうなってるんだい」


「……毎日好き嫌いなく何でも食べることが重要だマスター。 あぁ、本当に……」


「さりげなくさっきのことを根に持ってるぞサクヤ君!?」


「それはどうでもいいです。巨竜はどうなりました? 結構な勢いで吹き飛びましたけど」


思えば、ストレンジアでさえも一撃で消滅させるような一撃だ。


先代勇者が封印したドラゴンだとて無事では済まないはずだ。


「……どうでも、良くはない話なのだが……まぁいい。 アーリーの言う通り、本当に丈夫なやつだ。顔面をぶち砕くつもりで振りぬいたのだが、ダメージはほとんどない。一瞬気絶するほど痛いくらいだ」


「それはそれで恐ろしいような気も……」


ナイトさんの発言に、私は不憫な巨竜の方に向きなおると。


目が覚めたのか、白くなっていた竜の瞳に光が戻り。


【いっでえぇえ!? ちょっ、何!? 何今の!? え? ちょっ、めっちゃいた!?】


「ほらな?」


確かに、ナイトさんの言う通りすごい痛がっているが命に別状はなさそうだ。


「本当ですね……」


「これならいくら殴っても大丈夫そうだが、どうするマスター?」


【よくもやりやがったなてめえら!? 魔法か?それともブレイブか!?畜生、絶対十倍にして返してやっからなこの野郎!】


ドラゴンさんは依然元気そうに吠えており、まだまだ敵意は消えていないようでぶんぶんと頭を振り回して再度攻撃を仕掛けようとしている。


どうやらナイトさんの言った通りどれだけ殴っても大丈夫そうだ。


「そうだね、穏便に済ますのを拒否したのはあっちですし、死なない程度に殺してあげてください。ナイトさん」


【へ?】


「了解だマスター」


「あー……じゃあ僕はコーヒーのお代わりを入れてくるよ、しばらく断末魔しか聞こえないだろうからね」


【え? 断末魔?】


その発言にようやく自分の置かれた立場に気が付いたのか、ドラゴンさんはきょとんとした顔でナイトさんを見やるがもう遅く。


「鉄拳制裁タイムだ!」


【ほぶんぅっ!?】


何か言葉を発するよりも先に、ドラゴンさんの体が再度宙を舞うのであった。


                    ■

十数分後。


【あの……本当すんまっせんでした。調子乗ってました……お願いですから、その……もうぶたないで】


全身という全身を殴り続けられ宙を舞うこと十数分。 最高硬度を誇る鱗と体のおかげで外傷はないドラゴンさんであったが、ぼこぼこにされ続けた痛みで戦意喪失したのか、器用に前足を折り畳み頭を垂れて土下座のようなポーズをとる。


芸達者なことだ。


「分かれば良い、とりあえず満月草をもらってもいいか?」


【どーぞどーぞ!!もう何なら背中の全部持って行って構いませんので!】


「いや、3つでいい。そんなに量は必要ないからな」


「そういうところは謙虚ですよね、ナイトさん」


「強欲はナイトにふさわしくはない」


【流石ですナイト様】


「半面巨竜くん君にはプライドはないのかい?」


三杯目のコーヒーを飲みながら、局長はドラゴンさんに問いかけると。


【命大事に、鉄則です】


「先代勇者の時も、そうやって見逃してもらったんだね……」


局長はあきれたようなセリフを漏らすと、コーヒーをすする。


「この森は相当量の草花があるが、ふむ、この辺りはお前を含め大半が外の世界のものだな」


満月草を背中に飛び乗り引き抜きながら、ナイトさんはそうドラゴンさんに問うと。


【ええ、その通りでございます。千年より前から私はこの森を作り、生活しておりました。もともとあった森は消えてしまいましたが】


「お前が管理しているのか?」


「いえ、私はこの場にとどまるように言われておりました」


「誰に?」


【先代勇者でございます】


「先代勇者が? どうして君にここにとどまるように言ったんだ?」


【恥ずかしながらその理由までは分かりませんが、退治されたのちこの森より外には出られないという誓いを立てさせられまして……気が付けば背中に草が生える始末】


やれやれとため息をつくドラゴンさんから降りると、ナイトさんはふむとうなずき。


「満月草の栽培に使われたか、こうやってこの草を取りに来ていたものがいたはずだが」


【ええ、エルフ族の言うことを聞くようにと言われてずっとここに】


「人間は嫌いだったんじゃなかったのかい?」


【エルフ族は別です。彼らはとてもおいしい石をくれるので】


餌付けされてる……。


「で、そのエルフ族は?」


【最近全然来なくて……いや、モノを食べなくても死にはしないんですけどね。でもおなかがすいてしまって、気が立っていたんです】


「それはいつごろから?」


「だいたい一か月前くらいですかね」


案外最近連絡が途絶えたらしい。


「……様子は、見にいっていないんですか?」


【近寄れないんですよ、あのあたりは嫌なにおいがして……ほかの魔物も動物も同じです】


「強力な魔よけの結界か何かなぁ? エルフ族は魔法にたけているっていうし」


【むっ!外の世界の魔法ならいざ知らず、私の鱗はたいていの魔法は弾きます……エルフ族の魔法ごときにやられたりはしませんよ!】


むっとした表情で鼻を鳴らすドラゴンさん。 どうやら自分の鱗には絶対の自信があるらしい。しかし、ナイトさんはそんなことには興味がないようで。


「なるほどな……近くまでは案内できるか?」


そう呟く。


【近くまでなら問題ないですよ。道が入り組んでますので私の背中に乗ってください】


「では頼む」


「ちょっとちょっと!? ナイトくん? 目的は達成したんだから、早く戻ったほうが……」


「エルフの森が気になった。 少なくともこの森は先代勇者、ストレンジアが残したものだ。何かあるかもしれない」


「……!?」


その言葉に、私も局長もうなずくことしかできなかった。



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