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海上自衛隊というお仕事

二ヶ月遅刻で投稿です。

3,11、東日本大震災がおこり、多くの方が犠牲となられ、今なおその爪痕は癒えません。その時、救援にあたった自衛隊の姿は多くの人の目に焼き付いたと思います。同期の多くも入隊試験の面接で入隊動機に東日本大震災での自衛隊の活躍に感銘を受けた、といったものが多くいます。

ではいったい自衛隊とはどんな組織なのか。秘密の多い職場で、自己完結型であるゆえ殆どのひとは存在は知っても筋トレ以外何をやっているかわからないかと思います。そんな疑問を、海上自衛隊の一部に関して今年入隊したばかりの二等海士したっぱがご解決。ちなみにこれ、四月に書くはずだったんですけど忙しくて先送りになっていました。

まずは自己紹介。

佐賀県出身のうぃじゅqせftさんは、受験を捨てて自衛隊に入りました。入隊の動機を聞かれたら、「船が好きだから」といつも答えています。しかし実際のところ、週に一度は必ずカレーが食べられるから海自を選びました。

さて、自衛隊にはいくつか入り口があります。幹部コース(高給、転勤族)には防衛大(難しい)に入隊してから行くコースと、一般大から幹部候補生学校にいくコースがあります。防大は初めは陸海空共通で、二年生になるとそれぞれにわけられます。噂では文系は陸になりやすいとか。

防大を出たら幹部候補生学校にいきます。ここで一般大卒や、自衛隊の部内試験で選ばれたものと一緒に陸海空別の教育を受けます。学校も陸海空別になります。ちなみに海自は広島の江田島、マチの明かりより自衛隊関連施設の明かりのほうが明るいとの噂です。一般大から幹部候補生学校に行くのはかなりの倍率です。

一方、下っ端コース(薄給、転勤族)は主に二つ。一般曹候補生と自衛官候補生です。これらはあくまで現在の制度ですので、数年後には別のシステムかもしれません。一般曹のほうは定年まで、自衛官候補生のほうは数年ごとの任期制です。自衛官候補生のほうが試験は簡単で、倍率は高め。退職金が100万くらいもらえるらしいのです。でも月給他は一般曹がいいので、本気で自衛隊を続けたいとかいう奇特なひとは一般曹をおすすめします。ちなみに任期制の自衛官候補生でも定年まで続けることはできます。試験とかがあるらしいですが。

※私は一般曹なので他のシステムについてはよくわからないことが多いのです。こんなで良く自衛隊を紹介するものを書こうと思ったものだ。

さて、下っ端コースから自衛隊に入ると教育機関が半年ほどあります。ここからは海自について書きます。陸空は知らないのです。こんなで以下略。

教育隊は佐世保、呉、舞鶴、横須賀に四箇所。女子は横須賀のみです。一般曹も自侯生も同じく3月末から8月末まで教育を受けます。

入隊と同時に二等海士に任ぜられ、教育隊では赤いV字の階級章です。教育隊を就業後、9月に一等海士に任ぜられ、また半年で海士長になります。1年9ヶ月〜7年9ヶ月で3曹になれます。これらは教育隊での成績が大きく響くのです。自分の成績は幹部にならないと閲覧できないため、とにかく頑張らないといけません。

海士長から3曹になる時、初任海曹過程を受けます。ここでもう一度教育隊送りです。その後2曹、1曹、曹長と昇進です。

制服は海士はセーラー、海曹は格好いいの(名前がわからない)。しかし普段は青い作業服を着用します。迷彩服も着ます。

では普段何をやっているか、についてご説明。

私の日課は以下の通り。

0600起床、体操、訓練、食事

0800課業整列、反省会

午前の教務

1200食事、訓練

午後の教務

別課

1800食事、風呂

1930甲板掃除

2000自習

2100休憩、自主トレ

2200就寝

ちなみに休日は

0700起床、食事

1145食事

1500風呂

1700食事

1930甲板掃除

2100自主トレ

2200就寝

となっております。

教務は『勤務一般』『陸上警備』『短艇』『手旗』『結索』『戦史隊史』『体育』他いくつか。

勤務一般では自衛隊の組織系統や根拠法令、職域や礼式などを習います。

陸上警備は敬礼や行進動作の訓練、64式小銃の取り扱いです。実際に射撃訓練もあります。

短艇はカッターをひたすら漕ぎます。尻の皮が向けるというアレ。直射日光に照らされながら波のうねりを直に感じるため酔うひとも。

体育では運動能力測定、水泳能力測定を行います。赤帽、赤靴というやつで、これを貰うと土日も自主トレを課せられます。はい、私もその一人です。

朝昼の教務の他にも訓練はあります。朝起きての腕立て伏せや、食後の腕立て伏せ、別課のランニング後の腕立て伏せです。初めの頃は300回/日くらいあったかもしれません。初めの頃30回もできなかった私は、今では50回はできるようになりました。やはりノンストップかつ深めの腕立てはきついです。腹筋もあります。短艇以前にアスファルト上での腹筋でケツ皮が向けた者も多くいます。

別課は走ったり、泳いだり、懸垂だったり、腕立て伏せだったりします。正直辛いですが、諦めてついていけばちゃんと体は育ってくれます。

食事について。時間はありません。いそいで食べましょう。食堂も学生候補生全員分の椅子はありません。速く食べて椅子を譲りましょう。味は、まぁ給食です。量はあります。茶碗が丼サイズ、しゃもじもでかいので知らず知らずのうちに多く食べてしまいます。でもそれだけの運動はしますので太ることはありません。私は窶れました。

風呂について。風呂ってなんだっけ…というのも、温泉が好きな私にとって風呂は苦痛でしかないからです。なにしろ狭い。浴場が3つに対し学生候補生は400以上います。狭い、臭い、暑苦しい。汗臭い男が汗を流しても、脱衣所では汗臭い男が汗を流そうと服を脱いでいるのであまり良くないです。蛇口も少ないのでひとつの蛇口を数人でシェアしたり、湯船から直接湯を汲んで体を流します。シャワーも隊舎にはありますが、よっぽどのことがない限りつかえません。激しい運動の後、風呂までまだ時間があるときや土日くらいです。

次は土日の外出について。0800の国旗掲揚のあと、制服点検が行われます。冬場はセーラー、夏場はセーラーの略衣を着用で皺や汚れをチェックされます。綺麗な制服でないと外出はできません。

戻ってくる時間は分隊ごとに違います。私の分隊はお行儀が良かったので比較的早くから1900や1930までの外出が許可されていました。なお、この時間はあくまで指導時刻ですのでコンマ一秒でも遅れるとひどい目にあいます。具体的には翌週から外出禁止や帰投時間が1500になったりします。

学生は外に出た時、教育隊での生活において足りないもの、例えばハンガーや靴下なんかを買ってきたり、焼き肉やカラオケに行きます。ネットカフェもあります。なにしろ教育隊でできることといえば訓練か睡眠だけです。売店も土日は閉まり、自販機の中身もそこまでないとくれば外出するしかありません。さらに指導事項が多い分隊は自販機でのアイス、ジュース、喫煙などを禁止されることもあり、皆急いで文明的な空間へ逃げていきます。しかし困ったことに、教育隊は街から離れているためタクシーかバスを使うしかなく、市営バスも本数はとても少ないです。ゆえに土日は基地前に多くのタクシーが待ち構えています。片道およそ1500円、学生で割り勘して乗るのがいつもの光景です。ちなみに私が病院へ行った時、時間帯がずれていたため同乗者を捕まえられず、往復で3700円のタクシー代が飛んでいきました。

というわけで病気や怪我について。自衛隊は訓練や体育で激しい運動をたくさんやります。なので膝や足首を痛める学生も多くいます。各言う私も足首を痛め、走るときに支障が出ています。自衛隊病院というものがあり、ここなら無料で処置を受けられるのですが、整形外科は民間の病院に行かなければなりませんでした。保健所のお陰で3割負担で住むのが幸いです。教育隊にも衛生隊と言って病院はありますが、主に予防接種や身体検査などで使い、ちゃんとした処置は自衛隊病院で行います。外出しないものはゴロゴロしています。自主トレが終わったらアイスやジュースを手にテレビを見たり、作業服を洗濯したりします。ちなみに居住区での飲食はご法度、娯楽室でのみ許可されております。

イベントについてです。大きなものは運動会競技や短艇競技、持久走競技、球技競技、水泳競技があります。持久走は3000を走り、分隊ごとの平均で競います。平均10分が優勝の目安。運動会は高校のそれとあまり変わりません。日頃の訓練の賜物で集合や解散が機敏なくらいでしょうか。変わり種としては『鉄人リレー』というものがありました。腕立て伏せ、スクワット、バランス、400走、30kg土嚢で一番を競うものです。最大の難所はバランス。片足だけ地面につけ、腰を落としてもう片足はまっすぐ浮かせて伸ばします。こればかりは筋肉では如何ともし難く、私含めて多くの学生、候補生が脱落します。休憩を挟むことなく400まで終われば、先着6名が土嚢の前に立ちます。ものによっては持ちやすいものや持ちにくいもの、若干軽いものもあるそうです。球技についてはバレーとハンドボールです。この二つは海自でもチームワークを育てるために行われているスポーツで、全国大会もあります。

日々の生活について。一般曹と自侯生はそれぞれ分隊にわけられます。100規模だったり70名規模だったりですが、修業までの仲間になります。競技や生活は分隊単位で行われます。その分隊を十数名ずつに分けたのが班。班には班長(教官)がつき、学生や候補生を叱咤激励しながら育て上げます。班員はそのなかから伍長をまず決めます。班のリーダーです。18歳から26,27歳まで年齢が開けている集団なので、必然的に年長者が選ばれる傾向にありますが、積極性があるなら18歳でも伍長になれます。ただし年長者に命令を出す立場になるので、かなり辛いかと思われます。仕事は班を統括すること。学生の意見を教官に伝えたり、班員の相談(恋愛なんかも)に乗ったりします。つぎに甲板が選ばれます。甲板係の仕事は整理整頓、分別収集の指揮です。毎日の甲板掃除(掃除のことをそう言います)で自身は箒を握ることなく学生たちに指示を出します。ベッドメイクやゴミ出し、屋上の物干し台の管理、トイレットペーパーの補充など、仕事は多岐に及びます。この二役がうまく機能しなければ班は瓦解します。それほど重要な役回りなのです。もう一つ、当直学生がいます。これは日替わりで回ってくるもので、新聞を事務室に持っていくことから始まり、夜の就寝よろしの報告まで働きます。この間、作業服のアイロンがけや短靴の磨きなどはほぼできません。班員に手伝ってもらわないとやっていけない仕事です。当直は教官の指示を学生に伝えることや、移動時は基本行進で行くのですが、その指揮です。この行進指揮もタイミングを間違えたり、号令を間違えると学生の中から指摘があればいい方で、教官の罵声もしょっちゅうです。ノイローゼになりそうでした。

そんな厳しい生活だから、仲間は大事です。部屋は6人部屋。プライベート空間はロッカー一つ。おはようからお休みまで、常に顔を合わせる仲間ですのでとにかくコミュニケーションを取ります。それは教官についてであったり、食事についてであったり、趣味についてであったり。よほどマニアックな趣味でない限り、同好の士は必ずいます。オフの時は教官とも雑談ができます。たとえ人見知りでも、コミュニケーションを取ろうとする意志があればなんとかなるものです。

ちなみに彼女がいる学生は3割ほど。彼らは夜の携帯を返還される限られた時間に競って恋人に電話をかけます。惚気話で耳が甘ったるくなるほどに惚気けます。携帯は情報保全の観点から日中は預けておくのです。既婚者もいますが多くは現在独り身です。女性が少ない職場なので、上層部も合コンをセッティングしたりします。下手に外人女性と交際して秘密を漏らしたらコトですから。

以下、当然のこととして扱われるもの。

身だしなみ

礼儀

官品愛護

努力

作業服は椅子に座れば皺がつきます。制服は何もしないでもいつのまにか皺がついています。短靴はすぐ輝きをなくします。若い男なのでヒゲはすぐ生えます。生きているので歯も汚れます。つねにこれらに気をつけなければなりません。居住区にはアイロンとアイロン台があり、倉庫では靴磨きのウエスが用意されています。自衛官は『品位を保つ義務』というものがあり、常にいい男でなければなりません。

礼儀について、言うまでもありません。事務室に入るときは元気よく、通りで上官(ちなみに学生以外は全部上官)にあえば元気よく、一般のひととすれ違う時も元気よく、敬礼ないし挨拶をします。社会人の常識ですね。

私たちに私物はあまりありません。肌着や時計、財布、ケータイ、薬、メガネくらいでしょうか。制服や短靴は支給されたものです。すべて国民の血税で賄われたものです。ベットやシーツも税金です。隊舎も税金です。食事も税金です。物は大切に、通路に靴墨をつけないように、食事は残さないように、です。

努力。自助努力を怠ってはいけません。学校と違い、言われたことをやっていればいいわけではなく、言われたことに対し120パーの結果を求められます。

進路について。入隊後に内田クレペリンテストや性格診断が行われます。これにより心理適正が示され、その後身体検査を経て、総監部の人事担当が割り振りを行い、6月半ばに進路が決まります。おもに艦艇勤務、航空部隊勤務、潜水艦勤務があります。特殊なのは音楽隊や特殊警備隊、警務隊です。音楽隊は音大卒ばかりが集められ、少しでも腕を落とすと追放というシビアな世界。国家行事なんかで演奏します。特殊警備隊は海自の特殊部隊です。丸太をコマンドーの冒頭シーンのように担いで走り回っているとか。警務隊は憲兵です。隊内で不祥事があると出てきます。

艦艇は射撃や射撃管制、通信、航海、ガスタービン、衛生など。護衛艦やミサイル艇に乗り組みます。乗り組み手当と航海手当で金がたまります。

航空部隊は基本的に整備です。パイロットは航空学生という別の学校に行きます。P3Cのような固定翼はともかく、SH60のような回転翼なら護衛艦勤務もあります。南極観測船しらせでペンギンとグリーンガムのツーショットも撮れるかもしれません。整備以外には飛行士というのもあります。パイロットの後ろで計器を操作する係です。また、航空管制、地上救難、気象海洋といった職種もあります。航空管制は国家資格を取ります。空自で勉強します。地上救難は自衛隊の消防。消防車のゴツいやつを持っていて、筋肉もゴツいです。気象海洋は自衛隊の天気予報士。天気だけでなく海洋観測艦にのってチョメチョメな仕事に従事したりするとか。

潜水艦は水上艦とだいたい同じですが、乗り組み手当がかなり高めです。パイロットより多いんじゃないかしら。ベテラン海曹なら幹部より給料が上になることも。食事も気を使われ、自衛艦をあつめて海自において最も重要なカレーの味の競い合いをさせたところ潜水艦が優勝したとか。上層部の方針でも潜水艦は増強されるため、今一番ホットな職種かもしれません。仕事は不明。海の底で何をしているかは一切明かされません。どれくらい深く、長く潜れるかも秘密です。執筆において潜水艦ほど書きにくい船は無いですね。なお潜水艦はクルーが少なく、定数も少なく、また適正に依るところが大きく、熱望しても乗れない場合があります。高圧に耐える試験もあり、それにより中耳炎になることも。クルーを選ぶだけでも大変なのです。

以上で教育隊で私が見聞きし、公開できそうな内容を終わります。下手なことを書くと警務隊のお兄さんたちが来てしまいますので伏せた話も多くあります。詳しく知りたければ入隊をお考えください。

もしなにか質問がお有りでしたらお寄せください。答えられる内容であればお答えさせていただきます。

これにより海上自衛隊に対する疑問を解消でき、あわよくば入隊希望者が増えればいいともいます。実は入隊希望者を一人連れてきて、そのひとが入隊すれば勲章みたいな、賞詞というものをもらえます。海上自衛官の左胸についてる四角いものです。あれがあると給料にプラスに影響するのです。入隊希望者はご遠慮なくご連絡ください。

なお、質問へのご回答は訓練スケジュールによっては遅くなりますのであしからず。


現職海上自衛官の皆様へ、二等海士がでしゃばって申し訳ございません。

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― 新着の感想 ―
[一言] とても話が面白かったです。参考になりました。 僕は陸自目指していますが、自衛官になる前に何が必要でしたか?できれば教えてください。
[一言] 一緒にアニメとか話せるオタク仲間とかは結構いるのでしょうか そういうところ知ってみたいです
[一言] 潜水艦乗りですか、たまに訓練で相手してもらいますけど毎回酷い目に合わされますww 潜水艦は乗員が少なく、誰かが倒れても他の誰かが同じように出来るように教育されると聞いてます。水上艦艇よりも厳…
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